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国交省/実効性求められる適正なトラック運送業の取引・労働環境

2023年03月13日/3PL・物流企業

国土交通省は3月13日、「第16回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」及び「第15回トラック運送業の生産性向上協議会」を同時開催した。

日通学園の野尻俊明 理事長を座長に、行政、学識経験者や各物流団体、民間企業の物流担当者など約30名が参加し、国土交通省、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が、それぞれの取り組みを報告。昨今の燃料価格高騰等を踏まえた価格転嫁をはじめとする適正取引の推進など、トラック運送業における取引環境の改善及び長時間労働の抑制に向けた最近の取組み等について報告、議論を行った。

開会に先立ち、国土交通省の堀内丈太郎 自動車局長が「荷主や各省庁も含めた持続可能な物流に向け、検討を重ねている。また、2024年問題については最近メディア等でも報道され注目が集まっている。本協議会を有意義な議論の場としたい」と挨拶した。

国交省では、まずトラック運送事業の働き方の現状として、「労働時間は全職業平均に比べ約2割長く、年間賃金は5~10%低い。人手不足感は約2倍、年齢構成は若年層の割合が低い」と報告。トラック運送業の健全な発達を図るため、貨物自動車運送事業法の一部改正(2018年)や、時間外労働規制の適用(2024年4月)を見据えた「荷主対策の深度化」や「標準的な運賃」について説明した。

<荷主への「働きかけ」等>
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「荷主対策の深度化」では、トラック事業者の法令遵守に係る荷主の配慮義務、国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定を新設。資料によると、荷主が起因となる違反原因行為の割合は約4割が「長時間の荷待ち」。国交省では情報を収集し、事実関係を確認の上、荷主関係省庁と連携し、3段階で対応を行っている。違反原因行為に対し「働きかけ」を実施した荷主数は76件、「要請」に至ったのは3件あった(2023年2月28日現在)とし、実際の事例についても紹介した。

<標準的な運賃>
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「標準的な運賃」については、運賃交渉力の弱い運送事業者の適正な運賃収受を支援することを目的に、2020年4月に「標準的な運賃」を告示。また、今年3月には荷主との運賃交渉をさらに促進し、燃料費の上昇を踏まえた適切な価格転嫁が可能となる環境整備を目的に、従来、解釈通達として位置づけられていた「燃料サーチャージの算出方法等」を告示し、「運送事業者が自己の経営状況を踏まえて運賃を分析し、荷主との運賃交渉に臨むことが肝要」だとした。

また、トラック運送業における価格転嫁に向けた国交省の主な対応として、荷主企業への訪問(計164回)やホワイト物流セミナー等の開催のほか、相談窓口を設置。国交省、地方運輸局、運輸支局に、全国で合計64の窓口を設置するとともに、国交省「目安箱」(web)にも意見を募集している。さらに荷主への法的措置として「働きかけ」(2023年3月1日現在、15件)、や「指導・助言」を行っていると説明した。

こうしたなか適正な運賃収受に向けた動きもあり、ヤマト運輸、佐川急便等大手元請運送事業者が、燃料費や人件費等の上昇、自社及び協力会社のドライバー労働環境改善の必要性等を背景とし、運賃改定した事例を紹介。「適正な取引環境の確保や働き方改革の実現が期待される」と述べた。

このほか、国交省は2018年から推進している「ホワイト物流」推進運動への取り組みや、ラストワンマイル配送を対象とした「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」の開催、2022年9月から進めている「持続可能な物流の実現に向けた検討会」について報告。同検討会は、所謂「2024年問題」やカーボンニュートラルへの対応、燃料・物価高の影響をふまえ、着荷主を含む荷主や一般消費者を含め、取り組むべき役割を再考し、物流を持続可能なものとするため、経産省・国交省・農水省の3省が事務局となり実施しているもの。今年2月8日に「中間とりまとめ案」を公表した。

中間とりまとめでは、労働時間規制等による物流への影響について「具体的な対応を行わなかった場合、2024年度には約14%(4億トン相当)の輸送能力が不足する可能性があり、その後もドライバー数減少が見込まれ、2030年度には約34%(9億トン相当)の輸送能力が不足する」と試算。これまで策定してきたガイドライン等について、類似の法令等を参考に「より実効性のある措置」が検討されている。最終とりまとめは夏頃を予定しており、「物流プロセスの課題」として、待機時間や荷役時間等、労働時間削減や多重下請け構造の是正等についても検討を重ねている。

協議会では、厚労省から「上限規制と改善基準告示の適用に関する周知」に関する取り組みについて説明があり、荷主等の関係者に対する周知や「荷主特別対策チーム」」の取り組み、長時間労働改善に向けたポータルサイト、トラック相談センターについても紹介した。また、同日、国交省と連名で、「自動車運転の業務への時間外労働の上限規制、改善基準告示の適用に向けた周知について(トラック運転者)」協力要請の文書を公表。荷主への理解・協力を呼び掛けた。参加者からは、「いかに安く運ぶかという時代は過ぎている。物流は必要なコストだという認識を持ち、トラック事業者を適正な価格で使ってほしい」「改正基準告示を徹底し定着させ、実効性を高めるため荷主対策や商慣行の見直しは不可欠」など活発な意見が挙がった。

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