帝国データバンクは12月7日、「社保」、「税金」等の滞納で倒産する「公租公課滞納」倒産件数が急増し、過去最多になったと発表した。
社会保険料や税金など「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。多額に上る公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地など資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020年から23年の4年間で272件判明した。
このうち、23年1-11月における発生は111件となり、全体の約4割を占めた。22年通年の74件から1.5 倍に増加したほか、支払いが猶予されていたコロナ禍の20年(35件)からは3倍超に増えた。
滞納した公租公課の区分では、特に企業業績が赤字であっても毎月支払う義務が生じる、厚生年金保険などの社会保険料の滞納が原因となったケースが目立った。
この「公租公課滞納」倒産272件を業種別にみると、最も多いのは「サー
ビス業」の68件で、特にソフトウェア開発などの業種で多く発生した。トラック運送などの「運輸・通信業」や「建設業」(47件)、「製造業」(42件)なども 40件を上回る水準だった。
態様別では、ほとんどのケースで破産など「清算型」の倒産が多かった。累計272件のうち、清算型の倒産が 263 件・96.7%を占め、再生型の倒産では民事再生法など9件にとどまった。
なお、日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、22年度末時点で14万811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は 5.2%を占めた。
前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いている。
社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持・継続するために企業が公平に負う義務であり、差し押さえ等で事業継続に行き詰まる企業の増加を年金事務所等の責めに帰すことはできない。ただ、足元の円安や資源高による物価高などの影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くない。社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていくことが予想される。