サントリーホールディングス（HD）が、物流2024年問題を踏まえ、飲料の積載効率を上げてトラックの輸送時間を短く、物流施設でもドライバーを待たせまいとグループで取り組んでいる。
10月18日、サントリー食品インターナショナルがサントリーロジスティクス埼玉支店（浦和美園配送センター）を公開した。
＜トラックが荷物を積み込むためバースに到着＞
＜低床の仮置き場からフォークリフトで積み込む＞
「浦和美園センター」は、2021年11月に稼働開始。DPLの5階建て物流施設のうち3～5階を使用している。年間2500万ケースもの清涼飲料や酒類を扱うため、入居前から大和ハウス工業と協議し「飲料に最適な仕様」とした。
飲料は重量があり、水、茶、コーヒーなどバラエティに富む。飲料用トラックはウイング式が一般的なため、仮置き場からそのまま積み込めるよう、通常施設の高床式とは異なり、低床とした。
また、一般的にトラックは、入場、受付、荷積み・荷下ろし、退場の間に待機時間が入り拘束時間が長くなる。
これを「浦和美園センター」ではシステム化。受付すると伝票が自動発行され、ドライバーはショートメールで指定のバースへ呼び込まれる仕組みで、動線が改善した。
一般的な配送センターと比べると、トータルで1時間ほど早く退場できるようになり、「浦和美園センター」では平均滞留時間は30分強だという。
バース数を通常の3倍（39台）に増やし、施設を24時間運用としたことで、どのバースにどのトラックが入るか事前に計画できるようになり、前夜のうちに積み込む荷物をそろえておける点も特長。
仮置き場を通常の2倍広く取ったのも、トラックが到着するとすぐに積み込める状態にしておくためだ。
＜無人エリアで稼働する自動フォークリフト＞
自動化も取り入れている。「サントリー天然水」など主力商品を扱う3階には無人エリアがあり、自動フォークリフト（AGF）4台とコンベアを連携させた。
AGFはゆっくり運ぶため、翌日や翌々日出荷用に、トラックへ積み込む有人エリアへ移しておくための作業に活用している。
＜パレットサイズにぴったり合う荷物＞
積載効率を上げようと、商品のサイズから見直すことにも取り組んでいる。
今春からウーロン茶など3品目のペットボトルを、凹凸のあるデザイン重視の容器から積載効率の良い形にそろえ、１パレット当たり35ケースから45ケースにアップ。2024年6～8月のトラック台数は4万台から3万6000台に1割削減できた。
＜サントリーHDの塚田哲也 物流調達部長＞
サントリーHDの塚田哲也 サプライチェーン本部調達本部 物流調達部長は、「稼働開始後、昨年・今年と2024年問題を実感した。設計からたずさわり、トラックを待たせない工夫をしてきた。ドライバーの働き方に応じ荷主側も変化が不可欠。今後、物量の多い倉庫は『浦和美園センター』のようにしていけたら。この効果を自社工場や委託先も含め、広げていきたい」と話している。
飲料は製品数が年間約250品目に及び、多品種少量生産のため、トラックが荷積み・荷下ろしする工場数は50～60か所、配送センター・倉庫は約200か所、小売や卸など届け先は約6000件にもなる。「今後、エリアごとに製造・輸配送する構造に変革していきたい」ともしている。
＜DPL浦和美園の外観＞
■「浦和美園配送センター」概要
所在地：埼玉県さいたま市緑区美園1-14（DPL浦和美園3～5階）
交通：東北自動車道「浦和IC」より約3km
構造：地上5階建て免震
面積：約4万m2（3～5階は約1万3200m2／階）
仕様：床面低床、床荷重1.5t／m2、梁下5.5m
従業員数：サントリーロジスティクス（管理者2人、事務所13人、現場14人）
委託先（食品23人、酒類7人）合計59人
能力：保管2万1000パレット（115万ケース）、入庫・出庫各2500万ケース／年間
稼働時間：年間約305日×24時間
倉庫内設備：垂直搬送機4基、シーリングファン14基、コンベア2基、フォークリフト39台（うち自動フォークリフト4台）
バース数：39台（各階接車型 13台／階）全天候対応
専用待機場：18台（トレーラー12台、増t×6台）
