先進的大型物流施設開発では草分け的存在のラサール不動産投資顧問。2001年に日本法人を設立以来14年間で、370万m2、70棟の実績を誇る。物流施設本来の基本設計を最重視し、顧客の「こんなオペレーションをしたい」を忠実に反映すると共に一歩先を行く開発姿勢は一貫している。競争が激化している物流施設開発で最前線に立つ永井まり執行役員にアセットマネージメント戦略を聞くとともに、中嶋康雄CEOには全体的な戦略を聞いた。
不動産リスクの所在が流れを変えた
―― 会社設立の経緯から
永井 1783年にジョーンズ・ラング・ウートンの前身の会社、1968年にラサール・パートナーズが設立され、それぞれ不動産ビジネスを拡大してきましたが、1999年両社が合併しジョーンズ・ラング・ラサールとラサール・インベストメントが誕生しました。そういう意味では約200年の歴史を持つ会社です。不動産に対する幅広いサービスを行うのがジョーンズ・ラング・ラサール、投資と運用を行うのがラサール・インベストメントです。日本法人として、ラサールインベストメントマネージメント(現ラサール不動産投資顧問)が誕生したのは2001年です。
―― 最初の物流施設の案件は
永井 2003年の江東区の若洲の物件です。ナカノ商会さんにお借り頂いたBTS倉庫約2万5000m2のもので、現在でもご使用頂いています。大型物流施設開発が珍しかったその当時から積み上げますと、当社だけでもこの370万m2、70棟の物件を取得・開発・運用しています。まだ、成人式を迎えていない業界ですが、この数字を見るだけでも急激な成長を見せた業界だとお分かりいただけると思います。
―― 急激に成長した要因とは。
永井 一つは、先進的大型物流施設で初めて平面的にフラットに使える倉庫を提供したことではないでしょうか。それまでは多層階の倉庫が主流でしたから荷物の縦移動が当たり前でした。フラットで広いスペース、分離していない階、段差がない床を備える先進的大型物流施設の利用は荷物の保管効率、販売数量を増加させ、劇的な物流効率化をもたらしたのだと思います。企業は自らの物流改革により多くのリソースを割くようになり、競争力を高めるため効率化を図ろうとしています。
―― この展開は予想通りですか。
中嶋 必ずしも10年、20年先を読んでいたわけではありませんが、他の国、特にアメリカや欧州ではすでにこのような倉庫が多数存在し、いずれ日本でも同じことが起こる、そのようなトレンドがやってくるだろうとは思っていました。
―― 何が変わったのですか。
中嶋 これは、不動産のリスクの所在が変わったということです。それまで、倉庫は土地の持ち主から物流企業(倉庫事業者)が20年~30年借り上げる約束をしていました。これが不動産リスクです。このリスクを物流企業が取ることによって、建物が建つわけです。エンドユーザーである荷主企業は今も昔も1年契約とか2年契約、あるいはもっと短い契約をします。このリスクを吸収したのが物流企業(倉庫事業者)でした。
―― リスクの所在はどこへ。
中嶋 リスクの所在が今は投資家やデベロッパーに移っています。なぜ、それが可能になったかというと、マルチテナント型物流施設の登場です。これによって各フロアの前に着車することができ、建物を細分化することが可能になります。「短い期間で借り捨てる」ことが通用するようになります。建物の仕様も非常に汎用性に富むため、どんな業種でも倉庫を使えることになったわけで、これが急激に成長したもう一つの理由ですね。
永井 そういう意味でも、今は荷主である企業と直接契約する機会が非常に増えてきました。これまではなかなか見えなかった荷主企業の物流現場での悩みや課題を直接伺うことが多くなり、見えなかったことが分かるようになってきたため、改善すべきこと、改善できることを明快に認識できるようになりました。こういった知識や経験を倉庫づくりに機能的に反映していければ、この業界はさらに一歩先に進むと思いますね。
―― リスクは誰しも避けたいのでは。
中嶋 この業界でよく言われているのが、「物流不動産の賃貸契約は期間が長い」と。でもそんなことはありません。エンドユーザーと契約すればするほど期間は短くなる傾向です。そのリスクを取れる企業だけが、この業界で生き残っていけるものだと考えています。
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