日本通運は2月22日、2037年までの新たな長期ビジョンと、2019~2023年度の5か年中期経営計画「日通グループ経営計画2023『非連続な成長~Dynamic Growth~』」を発表した。
新長期ビジョンでは、創立100周年の2037年度に目指す姿を「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」と設定。主にM&Aによって非連続な成長を達成し、海外市場での業容拡大を図っていく方針で、2037年度に売上高3兆5000億円~4兆円(2018年度2兆1500億円)、営業利益率5%超(3.5%)、海外売上高比率50%(20%)を目指す。
新中計は長期ビジョンの第1歩という位置づけで、さまざまな変革に挑戦し、完遂するため期間を5年間とする。マイルストーンの2021年度に売上高2兆2500億円、営業利益830億円、当期純利益540億円を、最終の2023年度に売上高2兆4000億円、営業利益1000億円、当期純利益630億円を目指す。
新中計での主な成長戦略は、コア事業の成長戦略と、日本事業の強靭化戦略の2つを掲げる。コア事業の成長戦略については、顧客軸(産業軸)・事業軸・エリア軸の3軸によるアプローチで売上の増大を目指す。
顧客軸の取り組みとしては、重点産業として従来からの電機・電子産業と自動車産業に加え、新たにGDP(適正な流通基準)規制強化を機に事業の拡大を目指す医薬品産業と、アパレル産業、半導体産業を追加。2020年12月までに国内4か所で医薬品専用倉庫を建設するなど、各産業に対応したプラットフォームを構築し、業容拡大に対応していく。
事業軸では、グローバルでの売上拡大に向けて成長が欠かせないフォワーディング事業で徹底したボリューム戦略を実施。従来からの航空輸送に加え、海上輸送にも注力し、フォワーディング数量を2018年度の航空輸送91万トン、海上輸送67万TEUから、2021年度までに航空輸送120万トン、海上輸送100万TEU、2037年度までに航空輸送200万トン、海上輸送200万TEUへ拡大させる。
エリア軸でのアプローチとしては、国内で重点5産業(自動車、電機・電子、医薬品、アパレル、半導体)など強みを生かした持続的成長を目指すほか、欧州では非日系顧客基盤の拡大、米州では自動車など重点産業の取り組みを強化するなど、エリア特性に応じた戦略を展開し、事業成長を実現する。
一方、新中計のもう一つの成長戦略である日本事業の強靭化戦略としては、収益性の向上を前提とした事業の拡大とコストの大幅低減に取り組み、グループ経営の基礎を固める。削減したコストは成長に向けた投資の原資に回す。
新長期ビジョン・中計での成長に不可欠なM&Aについては、海外でのネットワークや経営基盤、非日系の顧客基盤、フォワーディング事業基盤の獲得を目指す方針。今後、M&A推進チームの強化や、同チームと事業部門の連携を強化するなど、推進体制を整備すると同時に、新本社ビルなど資産の流動化や売却によって買収資金を確保していく。
齋藤充社長は新中計について、「この5年間はさまざまな変革に挑戦し、完遂するための期間。基盤構築への投資で大きなコストが発生するため、利益の増加はそれほどでもないが、これはジャンプの前に屈む動作が必要なのと同様、将来の成長に向けて必要不可欠なこと。ここで整備した基盤をもとに、創立100周年の2037年にグローバルで存在感を持つメガフォワーダーへと成長を遂げる」とコメント。
また、長期ビジョンで成長の原動力となるM&Aについては、「買収の対象は、長期ビジョンでも掲げた海外展開の強化に資する企業を予定している。国内や海外といった地域は限定しない。現状で手薄な米国、インド、中東といった地域や、医薬品など今後注力していく産業を広範囲にカバーできる企業を検討している」と説明。
さらに、将来の持続的成長と企業価値向上のためのESG経営の一環として、「海外展開の強化にあわせて、グローバルガバナンスを進化させる必要があり、そのためにホールディング制への移行も視野に入れている。時期感としては、新中計の期間中に出来たらと考えている」と語った。