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国交省/南海トラフ巨大地震、物流面での対策

2013年08月23日/生産

国土交通省は8月22日、南海トラフ巨大地震対策計画中間とりまとめを発表した。

国土交通省の総力を挙げて対応すべき重要テーマと重点対策箇所を掲げ、民間事業者等を総動員した支援物資輸送を展開する。

<自治体と物流事業者等と連携した支援物資輸送体制を構築>
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発災翌日には最大で約430万人が避難所に避難するため深刻な事態が予想されるため、救援物資の不足等の懸念、自治体と物流事業者等と連携した支援物資輸送体制を構築し、被災地域外からのバックアップを行う。

全ての被災自治体へ12時間以内で救援物資の適切なコントロールを行う物流の専門家の派遣計画を今年度内に策定する。

<静岡市由比地区の地すべりブロックの状況>
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東名高速道路・国道1号・JR東海道本線の路線が集中する静岡市由比地は、大規模地すべりりの発生が懸念されており、日本の大動脈の長期間寸断を防ぐため、大規模土砂災害対策を今後5年間で重点的に進める。

<東海道本線の寸断対策>
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全国鉄道貨物輸送量の約37%占めるJR東海道本線は、津波浸水により数か所で被害を受け、長期間寸断の怖れがあるため、致命的な被害を受けない備え、被災後の影響の緩和を図る。

JR東海道本線被災時における貨物列車代替ルートとしてJR北陸線経由、JR中央本線経由の輸送を確保する。

<南海トラフの巨大地震発生時の津波流出物>
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(中部地方整備局予測)

東京湾、伊勢湾、大阪湾の港湾は、水深が浅く狭隘な地形であるため、津波が襲来した場合、湾内の一般海域に大量のコンテナや船舶が滞留する怖れがある。

現状では一般海域で迅速に障害物を除去する制度がないため、啓開作業に時間を要し、経済・産業に深刻な打撃を与える怖れがあるため、港湾施設等の耐震・耐津波性能の強化を図るとともに、予め啓開作業の体制を構築することで、迅速に緊急輸送やサプライチェーンを確保する。

なお、南海トラフ巨大地震の想定は、地震を震度6弱から震度7の強い揺れが関東から九州までの太平洋側の広範囲で発生。

震源から離れた地域も含め、長周期地震動が発生すると想定。それにより、駿河湾沿岸や紀伊半島沿岸等のようなトラフ軸近傍では、地震発生の数分後には5mを超える津波が襲来としている。

また、関東から九州の太平洋沿岸にかけて、広範囲にわたる沿岸域に巨大な津波が発生し、地域によっては、30mを超える巨大な津波が襲来するとしている。

物流・交通関係の被災では、道路で最大で約4万1000か所、鉄道施設は最大で約1万9000か所。

特に東海道・山陽新幹線、東海・近畿・四国・九州の太平洋側沿岸在来線は、被災と点検のため不通。

港湾は、約5000か所で被災し、特に名古屋港等では強い揺れや巨大な津波による港湾施設等の被災、引き続く津波や多数の海上漂流物、船舶と臨海施設等からの油・危険物等の流出により、船舶の入出港が困難となり、海上輸送機能が寸断。

空港は、中部国際空港、静岡空港等の空港で強い揺れや巨大な津波による浸水の発生により滑走路等の点検のため一時閉鎖となる。

津波被害が発生する高知空港、宮崎空港で、空港の半分以上が浸水し、滑走路が利用不可能となり閉鎖。

発災翌日には、約210万~430万人が避難所へ避難し、3日後以降は、在宅者が食料等の不足や断水等により避難所へ移動し始め、避難所の避難者数が増加し、支援物資の不足・滞留や生活環境が悪化する。

被害の長期化による我が国の経済・産業活動への甚大な影響が発生するとして、交通網等の東西分断を挙げている。

東名高速道路(約3万1000台/日)、国道1号(約6万4000台/日)、JR東海道本線(約150本/日)および、情報通信網が集中する静岡市由比地区において、揺れによる地すべりが発生した場合には、これら交通等の大動脈が分断。

全国の鉄道貨物輸送を担う重要な路線での津波浸水として、JR東海道本線の東田子の浦~富士間をはじめ、数か所で津波浸水による鉄道施設被害が発生。

全国の鉄道貨物輸送量の約37%を占めるJR東海道本線の東西分断が発生することにより、食料品等の生活必需品の流通に影響を及ぼし、社会経済に甚大な被害が発生するとしている。

港湾は、三大湾における大量のコンテナ・船舶の滞留による港湾機能の低下があるとしている。

東京湾、伊勢湾、大阪湾の三大湾地域の港湾は、全国の外貿コンテナ貨物量の8割、LNG輸入量の8割、原油輸入量の5割を取り扱う等、我が国の経済・産業活動やエネルギー供給の拠点。同地域は、水深が浅く狭隘な地形であるため、津波が襲来した場合、湾内の一部海域に大量のコンテナや船舶が滞留し、経済・産業活動に深刻な打撃を与えるおそれがあると分析している。

これらの被害想定に対して、初期体制として、応急活動に必要な食料やガソリン等の燃料について、確保や輸送・配分に関する計画をあらかじめ策定し、これに基づいた輸送・配分を行うとしている。

平時から準備しておくべき事項として、自動車運送事業者の保有する燃料タンク(インタンク)に関する情報共有、燃料優先確保のための資源エネルギー庁との事前調整を行う。

また、エネルギー源の多様化等を図るべく、CNG車、電気バス等の普及を図る。

避難者に必要な物資の広域輸送として、自動車運送事業者や鉄道事業者、海運事業者、航空事業者等の協力を得つつ、被災地や避難所への広域的な支援物資の輸送体制を構築するとしている。

そのために、平時から準備してい置くべき事項として、トラック輸送については、物資輸送の担い手となる関係事業者等と協議会等を開催し、緊急時の連携等について認識を共有しておくとともに、地方公共団体と関係事業者等における発災時の物資輸送の実施に関する協定締結等を促進する。

海上輸送も地方公共団体と関係事業者等における発災時の物資輸送の実施に関する協定締結等を促進する。

物資輸送の上で、極めて重要な施設については、発災後も速やかに活用できるよう、耐震化等の対策を重点的に推進する。

発災時に円滑に海上輸送ルートの活用が可能となるよう、代替輸送ルートの設定や代替港湾の利用に係る関係者との体制構築、港湾間の災害協定等を推進する、などを挙げている。

そして、サプライチェーンを迅速に確保するため、関係機関が連携して、代替輸送ルートの設定も含む、災害時の事業継続計画を策定するとともに、必要な災害協定の締結等を推進するとしている。

■南海トラフ巨大地震対策計画中間とりまとめ
http://www.mlit.go.jp/common/001008088.pdf

■国土交通省の総力を挙げて対応すべき7つの重要テーマと10の重点対策箇所
http://www.mlit.go.jp/common/001008085.pdf

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