CBREは9月2日、スペシャルレポート「物流テナントの特徴と変化 – ポストコロナの物流需要をECと物流業が牽引」を発表した。
執筆は同社の高橋 加寿子リサーチ シニアディレクター。
それによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設(LMT)の契約テナントの業種は、2016年-2018年は相対的に小売業・卸売業の割合が高く、コンビニエンスストアの店舗数拡大と呼応していた。
ところが2019年以降は、ECの契約面積が増大、割合も高まる。2020年にはコロナ下の巣ごもり消費を取り込み、物流需要を牽引した。2021年上半期のECの契約面積は、前年同期とほぼ同等。足元でもECの物流需要は旺盛である。
ECによる契約面積の割合は、2016-2018年の平均12%から、2019年は23%に拡大。同年の契約面積は12万坪を上回る規模になった。2019年は首都圏の物流施設市場が過去最高の新規需(70万5000坪)を記録した年で、新規供給もそれまでの過去最高だったにも関わらず、空室率は2018年の4.8%から2019年は1.1%に急低下している。
この時期にEC事業者による物流施設の増強が本格化し、新規需要を牽引したことを物語っている。COVID-19の感染が拡大した2020年には、ECの契約面積は2019年とほぼ同等だったが、物流施設の契約面積全体に占める割合は31%に上昇した。コロナ下で他業種が拡大に慎重になった一方で、巣ごもり需要によるEC利用の促進を受けて、EC各社は拡大戦略を維持した結果だろう、としている。
そして2021年。上半期に竣工した物件のテナント業種をみてみると、ECの割合は2020年をやや下回っているが、その契約面積は昨年のペースを上回っている。すなわち、割合の低下は他の業種のニーズが高まったことによるもので、ECの物流需要そのものは依然として旺盛といえる。
<LMT契約テナント業種分類 都市圏別(2004-2020年竣工)>
また、経済活動の変遷に伴って物流施設の需要ドライバーも変化してきた。しかしその一方、一貫して契約テナントとして最大の割合を占めているのは物流業である。毎年5割前後の割合を維持しており、2020年は54%、2021年上半期では51%となった。
物流業の比率が安定して高い水準であることについては、2つの要因が考えられる。一つは、小売業や製造業の多くが、オンラインショッピングへの対応強化を迫られているということ。EC対応のための複雑な物流業務を物流会社が取り込んでいると考えられる。もう一つは、EC事業者が事業拡大する場でも、すべての商品流通を自社運営だけで対応しきれないため、物流企業に任せるケースが少なからずあるということ。実際に、契約者は物流企業であるものの、荷主はEC事業者であるケースも多く見受けられる、としている。
CBRE/首都圏の大型マルチ型物流施設の空室率は9.7%と横ばい