オリックス不動産の物流施設は、最近では、2月1日着工の「守谷Ⅱロジスティクスセンター」、2021年12月15日着工の「市川塩浜Ⅱロジスティクスセンター」、11月1日着工の「鶴ヶ島Ⅱロジスティクスセンター」と着実に開発を進めている。まさに、同社らしい、「適正な市場に適正規模の施設開発」を実践している。
このような中、グループ一体取り組みとして、オリックス不動産物流事業部とオリックス 環境エネルギー本部が協力し、新たな物流施設開発コンセプト「環境配慮型物流施設開発」を立ち上げ、本格的に取り組みを開始した。CO2フリーの100%再生可能エネルギー由来電力の使用を可能とする物流施設開発を目指すというものだ。この新たな取り組みについてオリックス不動産物流事業部の清田 衛 物流事業部長と吉村 唯さん、平山 真理さんにその「やる気」を伺った。
取材:2月22日 於:オリックス不動産本社
100%CO2フリー物流施設は時代の要請
物流施設開発はここ数年のプレーヤーの増加により、供給が需要を上回る傾向と新型コロナウイルス感染による市場の軟調もあり、一時の竣工即満床ということも少なくなってきている。立地であったり、施設の内容であったり、さまざまな要素でテナント企業にとっての最適な物件が選ばれる時代になってきたとも言われている。ある意味では普通の状態に戻っただけだが、開発デベロッパーにとっては、競争の激化が始まったと言うことになるだろう。この競争に打ち勝つためには、何らかの差別化戦略が必要なことは言うまでもない。賃料なのか、施設の充実度なのか、立地なのか、そのバランスなのか、さまざまな要素が勝者を決定づける。
そのような中、これまで2002年以来、東名阪を中心に43物件の物流施設を投資開発してきたオリックス不動産が、グループのオリックス 環境エネルギー本部とタッグを組み、新しい物流施設開発のコンセプトを打ち出してきた。それが「環境配慮型物流施設開発」だ。
この解答を導きだしたのが、昨今のサスティナビリティ(持続可能性)を意識した企業活動の高まりだ。物流会社、荷主企業の意識が日々変化していることが重要なことになる。オリックス不動産の物流事業部の吉村 唯さんは「テナントさんからのCO2削減要求は日増しに高まっています。今のところは特定企業(外資系等)が多い印象ですが、テナントさんも株主やオーナーからの要望もあり、今後この動きがますます強まることはあっても弱まることはないでしょう」と話す。
環境への取り組みは重要とわかっていても、それ自体が利益を生まなかった時代から、時代は大きく変わりつつある。環境問題が企業としての付加価値を高める新たな価値となりつつあるからだ。環境を重視しない企業はやがて排除され、脱落していく時代へと移り変わりつつある。
2000社を対象とした2021年経産省実施の「再エネ転換に関するアンケート結果」では、再エネ転換について、すでに活用している、関心があるとした企業は全体の8割にも達している。また、その理由について、「CDPやRE100を自社で自主的に目指している」が36%、次いで「サプライチェーンの要請により切り替えざるを得ない」が18%となっている。吉村さんは、「このサプライチェーンの要請の部分は物流事業者の方にもダイレクトに響く部分だと思います」と話すように、サプライチェーンの一翼を担っている物流事業者には他人事ではない。半導体の供給不足に限らず、今やグローバルサプライチェーンの再構築の動きが急速に進んでいる中、今後は各企業が再エネ転換にどのように対応していくかが問われていると言う。
しかし、再エネへの切り替えについての電気料金の上昇許容幅は0円が36%、0.1円~0.3円/kwhが34%と全体の7割超がコストアップは受け入れられない姿勢を示している。物流施設の再エネ転換は、今後も需要の高まりが想像されるが、コストアップが懸念されていることも確かだ。「テナントさんの聞き取りでは、悩みとして、荷主からCO2削減を求められた。しかし、賃貸倉庫では電力契約は自社で決められない。さらに、CO2排出量を軽減させるための費用を割くことが難しい、といった意見が多く挙げられました」と吉村さん。荷主から再エネへ転換し、100%CO2フリーの物流施設を要請されても、賃貸倉庫の場合はおいそれとは実現しない。例えば、賃貸倉庫に太陽光パネルを設置するにはだれがその予算を出すかなどいくつもの乗り越えねばならない課題があるからだ。
そこで、物流施設のオーナー側でCO2フリー倉庫とすることで、入居テナントの選択肢を広げられるとともに、物件自体の資産価値も向上させることができるメリットが生まれる。これを今まさに実践しようとしているのが、このオリックス不動産とオリックスが一体となった「環境配慮型物流施設開発」ということになる。
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