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多面的施策で課題克服
『ワンアサヒ』で全体最適

2022年11月02日/物流最前線

20221101 asahilogi06 - 物流最前線インタビュー/アサヒグループの物流改革

目指すのは「運行効率」の最大化

――  アサヒグループの物流を一手に担っている御社ですが、外販物流はどの程度行っているのでしょうか。

児玉  2022年度の計画では全体の売上高が約950億円で、そのうちグループ内が約630億円、外販が320億円と、おおむね2対1の割合ですね。外販比率が2~3割という物流子会社が多いと思いますので、当社もその範囲の中でやや高めというところかなと思っています。

――  外販ではどのような荷物を扱っているのでしょうか。

児玉  当社ではグループの輸送の売上は約400億円にのぼり、全国ネットワークで輸送対応を行っています。この輸送力を生かしてグループ以外の顧客の製品や、ビールの缶や段ボールなどの資材関連などを主に取り扱っています。

――  外販物流について今後の方針は。

児玉  ビールや飲料水というのは季節波動が大きい商材ですので、車両を有効活用するためには他の貨物も獲得して閑散期にも車両の運行効率を一定に保つ必要があります。そのためには、この程度は維持する必要がありますし、むしろもっと積極的に外販比率を高めていかなければならないと思っています。2024年問題緩和に向けた運行効率向上のためにはグループの物流と外販部門の輸送のシナジーを最大化していかないといけません。そのためには外販輸送を拡大し、グループ輸送と外販輸送のマッチングスキームを構築していかなければならないと思っています。

――  運行効率とは。

児玉  当社では運行効率を「実走率×実車率×積載率」で定義しています。2024年問題もあって、これからはドライバーの労働時間や拘束時間が制約されるようになります。3要素の掛け算であることが重要で、例えば車両1台の積載率を高めても、そのための積み込みに時間をかけてしまうと運行効率は必ずしもあがらないということになります。ですので、この3つの要素のKPIを高めるとともに、3要素のバランスをとり、運行効率を最大化していくことがこれからの課題だと思います。

――  課題の解決に向けて、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

児玉  運行効率を上げるための、ありとあらゆる取り組みを行っています。例えば、東京から大阪へグループの荷物を運んだ際、帰りの便で他社の荷物をマッチングして運んでいくですとか。あとは、お付き合いのある物流会社さんと連携して、低積載区間で相互に荷物を提供し合ったり、ルートチェンジ、繁忙日の協力、不足車両の応援など、車両や荷量を相互提供して運行効率を相互に高めるといったさまざまな取り組みに挑戦しています。

あとは、メーカーごとに出荷日が異なるため曜日によっても繁閑の波があるのですが、そこは同業他社とお互いのピーク時に車両を融通し合っています。今後も運行効率を向上させていくためには、物流会社間でパートナーシップ化を進め、Win-Winで相互に運行効率を高めるビジネスモデルを積極的に構築していく必要がありますね。

一つの取組事例として、卸さんに配送するときに伊藤忠食品さんや日本酒類販売さんと共同で行っている取り組みなのですが、当社が卸さんの配送センターに製品を納品した後、通常だと納品した車は工場に空の状態で戻ってきます。そこを、納品した後の車両を活用して、卸さんが行う小売店への配送業務を受託して配送する。その代わりに、伊藤忠食品さんや日本酒類販売さんは小売店へ配送した際、当社の物流拠点に立ち寄ってもらい、近場の納品先へ配送してもらう。

こうして、お互いの低積載や空車の区間で、相互に車両を有効活用することで運行効率を向上させています。これにはいくつものバリエーションやパターンがあって、そのなかでいかにそれをモデル化し、安定的かつ持続的に膨らませていくスキームにできるかというところが課題なのかなと思っています。

――  こうした取り組みはいつ頃から進めてきたのですか。

児玉  実は、担当ベースではかなり前からやってきたものなんです。貨物のマッチングであれば、東京から大阪へ配送した後の空の戻り便で、東京へ運ぶ荷物をもらえないかといった話は、担当ベースで昔からしてきたことなんですけれど、今後はそれを会社対会社や組織対組織で戦略的に拡大していこうと思っています。2024年には10%の荷物が運べなくなるという話を聞きますが、逆に言えば運行効率を10%向上できれば運べるようになるということです。

それに、運べなくなるとはいっても毎日運べないのではなく、ピーク時に運べないということですので、物量を平準化することでピークの波をなだらかにする。それと並行して運行効率を上げる取り組みも進めることで、問題の緩和につながるのではと考えています。この取り組みは個社だけではできません。関連する物流企業やメーカーなどを巻き込んで、相互の運行効率をWin-Winで上げるような取り組みを加速推進していきたいと思っています。

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