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多面的施策で課題克服
『ワンアサヒ』で全体最適

2022年11月02日/物流最前線

20221101 asahilogi00 - 物流最前線インタビュー/アサヒグループの物流改革

ワンアサヒで挑む物流改革

――  今後の取り組みとして、どのような内容を検討しているのでしょうか。

児玉  アサヒグループでは、今年の1月にアサヒグループジャパンという日本の統括会社を立ち上げました。これにより、今後はアサヒグループの国内各社が横断的に「ワンアサヒ」を目指してさまざまな統合効果やシナジーを出していこうという方針になりました。

その一環として、物流の面でも従来はアサヒビールやアサヒ飲料、アサヒグループ食品などの物流部がそれぞれ個別の物流最適を目指していたのですが、ワンアサヒの方針の元、各事業会社が持つ物流の企画や管理などの機能をアサヒロジに集約し、アサヒロジが全体最適な物流のスキームを構築しようという形へと変革を進めています。アサヒロジの中にグループ企画管理部という部署を新設して、アサヒビールなど各事業会社の物流部門の企画管理の担当者をアサヒロジに集約し、そこでグループ全体の物流と外販の物流を両立するシナジースキームの構築を目指していきます。

もう一つの取り組みとしては、グループ横断での標準化を図ろうと思っています。今までは各事業会社ごとで微妙に業務内容が異なり統一が図られていなかったのを、事業会社とアサヒロジの工程を統合してそれを標準化し、標準化した業務を単純化することによってシステム化を可能にして、最終的には人材の多能化に結びつけて大きく生産性を向上させる取り組みに挑戦していきたいと思っています。

――  これらの取り組みはいつスタートするのでしょうか。

児玉  今年の9月から順次着手しているところです。今から始めないと2024年問題に間に合いませんからね。先ほどもお話しましたが、運行効率を上げるために荷物をマッチングするような取り組みを行うにしても、これまでの事業会社の物流部主導での物流ではやはり限界があります。ビールと飲料を複合した形で、なおかつ外販も複合し、それで統合的に運用効率を上げていくという形の取り組みをしなければいけません。また、グループの工場から物流拠点への製品移動についても事前オーダーのシステムや、日々の輸送を平準化する仕組みを実際に物流をオペレーションするアサヒロジが企画提案して、グループ3PLの機能を果たしていく必要があると思っています。

――  この10月にはビールを含めさまざまな商品の値上げラッシュがあり、購入の駆け込み需要もあったかと思います。こうした特殊要因が出てくると、物量の平準化は難しいのではないのでしょうか。

児玉  需要の発生があらかじめ分かっていれば、完全に平らにすることはできなくても、得意先様に許容いただける範囲で届け日や届時間を調整するなど、いろいろ創意工夫をすることで平準化への道筋が見えてきます。物流会社とアサヒビールやアサヒ飲料など事業会社とが連携して、出荷が膨らむときについては緩和策を擦り合わせて、少しでも平準化できるようなビジネスモデルを作っていくことが大切ですね。

――  工夫の連続で成り立っているのですね。

児玉  工夫を積み重ねて新たなスキームをいかに構築し、なおかつ持続可能なモデルにしていくかというのが、これからの物流子会社に問われているミッションなのだと思っています。

――  こうした取り組みのアイデアはどのような時に考えているのですか。

児玉  いろいろと課題も多い会社なのですが、私は机の上で考えることが苦手なタイプでして、課題解決のことを考える際は机以外の3つの場所で考えるようにしています。一つは歩きながらですね、習慣にしているウォーキング中にです。二つ目は就寝時で、寝ているときに案が閃くことがあります。三つ目は銭湯が好きなので湯に浸かりながらですね。これらの時間をできるだけ増やそうとしています。休日はウォーキングをして、銭湯へ行って、それでビールを飲んでぐっすり眠ると(笑)。

――  最高のリフレッシュですね。

児玉  リフレッシュといえば、これもその一環なのですが、去年の社長就任時から「グッドジョブインタビュー」という取り組みを始めているんですよ。当社には現場で頑張ってくれている社員がたくさんいて、そうした社員にスポットライトを当てたいと思って始めたものです。

どんな事でもいいので、各拠点の管理職にグッドジョブと思ったことを挙げてもらって、その事例を私が直接オンライン会議の機能を使ってインタビューしています。取材内容は私と事務局で記事化し、全国の社員へ配信しています。ルールとしては良い事だけをインタビューすること、グッドジョブですから(笑)。これが結構楽しいんですよ。

やはり社員の皆さんいい話をしていると自然と笑顔になってきますね。また、そういう取り組みの中に当社がこれから目指す方向性や課題解決のヒントが多く隠されているんです。これをだいたい1か月に10~15事例ぐらいずつやっています。社長就任時から数えて、もう200事例程のインタビューを行いました。

――  それだけの良い事例が会社の中にあるというのは素晴らしいことですね。

児玉  そうですね。本当にささいなことでもいいからといって事例をあげてもらうのですが、実際にヒアリングしてみると本人たちはあまり意識していなくても、重要なこと、大切なことが含まれています。

――  現場にはそういった事例が潜んでいるものなのですね。

児玉  最初の頃は皆「当たり前のことだから…」といって全然事例が挙がってこなかったのですが、当たり前でもいいから事例を挙げてと言ったらたくさんの事例が挙がってくるようになりました。

――  具体的にはどういう事例があったのですか。

児玉  たくさんありすぎて困りますが、例えば、業務を効率化するプロトタイプのシステムを試作したりですとか、配車と運賃の担当者がペアになり従来にない取り組みに挑戦したり、各部の連携事例や風土変革の取り組み、安全の取り組みなど、さまざまですね。

――  そうした積み重ねが現場の改善につながるのですね。

児玉  そうですね。こうした取り組みを称賛することで「称賛風土」の醸成につながりますし、実際にこの取り組みを始めてからは管理職が部下をよく見るようになりましたね。ちなみに、今年からは義務制にしており、グッドジョブな事例を挙げない事業所は評価で減点するということになっています(笑)。その代わり、事例は何でもいいんだと言ってね。事例を挙げるためには、管理職が担当者に興味を持ち、よく観察して、会話をしなければいけませんので、職場内のコミュニケーションを活性化するうえでも良い取り組みなのかなと思っています。

20221101 asahilogi08 - 物流最前線インタビュー/アサヒグループの物流改革

■プロフィール
アサヒロジ
代表取締役社長
児玉 徹夫

1986年アサヒビール入社。
2010年物流システム部長、2017年執行役員を歴任。
2021年3月アサヒグループの物流会社であるアサヒロジの代表取締役社長に就任。
アサヒビール時代には、「競争から協調へ」の考えのもと、ビール会社間の共同物流をはじめとする数々の物流連携の取組みを実現。
アサヒロジでは物流事業者の視点で、物流ステークホルダーの企業各社との連携・協調による「サステナブルサプライチェーンの実現」を目標に取組みを進めている。

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