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連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

2024年10月10日/コラム

PR記事

20230911sugata - 連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

Z世代の活かし方・育て方(12)

前回(事例1・2)に続き、今回も物流現場での改善提案活動事例を4つ紹介します。

日常の仕事にはムダな作業や、「やりづらい・気を遣う・きつい危険作業」が多数存在し、私はこれをイニシャルで「YKK作業」と呼んでいます(詳細は後述)。

YKK作業を撲滅する活動を皆で話し合って一緒に改善していくことで、職場の一体感やチームワークが醸成され、作業ミスが減ったり、生産性が大きく改善できたりします。

私の経験では、皆が協力・連帯して取り組めば、品質面の誤出荷クレーム率(件数またはPPM率、万軒率)は、半年~1年後にはチャンピオン実績で過去比1/11に激減。効果の少ない場合でも1/2~1/4程度まで大幅減少しました。

誤出荷クレームが減少すれば、荷主は後顧の憂いなく販促策に注力でき、それを大いに感謝され新規業務を何度も追加受託できた経験があります。作業生産性でも+20~30%程度の改善効果が3か月後には実現できました。

パートや派遣含め、1人が月1件(年間10件程度)を目標に考え・協力・工夫し続ける職場風土を構築できれば、組織全体には大きな改善ムーブメントになります。職場の中で好事例をドンドン紹介できる機会が増え、従業員のコミュニケーションの場が増加してきます。

私は、職場の業績は改善コミュニケーションの「量」に比例すると考えています。1回の時間は短くとも回数が重要で、お互いの考え方・アイデアが理解でき、自分も考え協力しようという気持ちが醸成されてくると、組織全体には素晴らしい活力(創発アイデア)が出てきます。

皆さんの職場でも、改善提案制度を導入済の企業は結構あると思われますが、実態は不活発、おざなり状態が多いのではないでしょうか? ぜひとも積極的な「声かけ・働きかけ」と「笑顔・励まし・顕彰」で提案活動を再活発化してください。大きな改善成果を実現できますよ。

改善提案書の事例3:カプセル商品の収納方法の改善

この事例は、数百種類ある芸能系有名人キーホルダーの保管と、ピッキングに最適な方法を模索した改善です。4人が話し合って考え出したアイデアを、皆で仲良く実施しました。

<事例3>20241008sugata1 - 連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

今まではポリ袋に入れて保管していましたが、ピッキングする時、ごちゃごちゃしたポリ袋の中から探し出すので、やりづらい(時間がかかる、間違う等)作業でした。

改善策としてクリアファイルを流用し、保管しやすく視認性も高めたところ、素早くピッキングできるようになりました。

クリアファイルですから、ロケNo札を入れるポケットを貼り付け、ハンディ端末を使ってスキャンでき、ピックミス防止にもなりGoodな改善提案になりました。

職場リーダーのKSさんも、簡潔ですが、労いの気持ちを込めたコメントを記述していますので、良い職場の人間関係のようですね。

■改善提案書の事例4:ワインの品番間違え、シールの貼り間違え防止

次は、輸入したワインやリキュール類の商品を検品し、合格品に日本語ラベル等を貼り付けて国内ユーザーに出荷する、流通加工サービスと呼ばれる物流センター内作業の改善事例です。

<事例4>20241008sugata2 - 連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

ワインの品番ラベル貼り間違い、シール貼り間違いが多かったので、簡易コンベア作業の先頭作業者(リーダークラス)が、「これからのロットはこの商品が流れます。気を付けて作業してくださいね」と、よく目立つ旗状の案内看板を掲示して作業する方法に改善しました。

案内看板が上流(前)工程で掲示されるので、下流(後)工程の作業者は、看板通りラベルやシールを貼り付けているか一目瞭然、貼り付けミスが大きく減少。このような簡易型コンベアが6ラインもあり、壮観な現場風景でした。

荷主は、過去、別の3PL事業者に業務委託していたのですが、誤出荷クレームが多かったことに業を煮やし、こちらに委託先を切り替えた経緯がありました。誤出荷が減ったことで荷主は販促策に注力でき、出荷量もうなぎ登りとなった成功事例です。

現場リーダーのKZ氏は「ありがとうございます!」と発してからコメントを記述していますので、チームワークの良い職場環境が維持できているのだろうと推察できますね。

改善提案書の事例5:段ボール製缶機の作業開始準備設定値の標準化

これは、派遣社員として勤務開始した従業員AMさんが、勤務開始1か月後に提案してくれた大変Goodな改善提案です。

<事例5>20241008sugata3 - 連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

EC通販物流サービス代行に使われる出荷商品用の段ボール箱を組み立て、底にPPテープを自動で貼る梱包箱組立機械の最適調整値を、箱サイズ、材質フルート(6種類)、段ボール構造(3~4種類)などに応じて、ベストな機械調整ダイヤルの位置を割り出し、標準値設定。従業員AMさんは機械に識別表示までしてくれました。

設定が複雑で社員でも難しく、放置されていた部分です。この提案でマシンの稼働までの切替準備時間が大幅に短縮でき、生産性が向上しました。

ところで私は、改善提案制度を導入している物流企業でも、社員のみに限定して運用している会社が多いことは不思議でなりません。

現場作業はパートさんが多数を占める企業が多いですし、昨今の人手不足ではパート採用が難しいため、タイミー等すきま時間アルバイトの派遣社員を大量に導入している3PLも結構あります。

このような人たちのモチベーションアップを図り、 現場力の向上(QCDSS業績指標アップ)に協力してもらう必要があります。私は雇用形態で差別化しないで、原則全員参加の改善提案活動方針で推進してきて良かったと自負しています。

改善提案書の事例6:問題点に気付く着眼点(例えば YKK作業)

どこの会社でも、改善提案制度を導入した当初は、特に若手から「改善提案テーマをどうやって見つけたら良いですか?」と聞かれることが多かったです。

<事例6>20241008sugata4 - 連載 現場が変わる人財育成 第12回 菅田 勝

そんなとき私は「毎日の仕事で困っていることはありませんか? 例えば、この作業はやりにくいとか、時間が掛かる、気をつかう、ややこしい、危険ケガの懸念があるとか感じる作業はありませんか?」と逆に質問するようにしています。

あるいは、物流企業側が作業した結果として、発荷主・着荷主に迷惑がかかる場合。例えば、誤出荷クレームや、納品遅れ・口割れ商品の発生、商品汚破損の発生、トラック交通事故による納品遅れ、請求書ミスなどは、優先度の高い改善すべきテーマになると説明しています。

私は以前、OA機器メーカーの生産技術者だった頃に「改善の切り口、着眼点は 『YKK作業』を探すように」と指導を受けた経験があり、これを物流企業の皆さんにもアドバイスしています。

次回は、輸配送部門での改善提案制度(ドライバーズメモ制度)について、事例紹介したいと考えています。ご期待ください。

■連載 現場が変わる人財育成

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