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連載 現場が変わる人財育成 第11回 菅田 勝

2024年09月06日/コラム

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Z世代の活かし方・育て方(11)

今回は、改善提案書の実際の記述例をもとに、職場の活性化やチームワーク醸成(メンバー間、上長との関係)する具体的方策をご紹介します。1人1件/月を目標に、シンプル、簡単記入のフォーマットで、ハードルを下げて推進してきました。

■ 改善提案書の事例1:ギフトBOXのラッピング生産性の向上

この事例は、生活用品を取り扱うチーム(全12人)のうち7人が、ラッピング作業の見栄えを達成しつつ、いかに手早く作業を遂行するか?と話し合い、知恵を出し合って効果的な解決法を編み出し、作業を標準化・マニュアル化した事例です。

<事例1>
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問題提起(気づき)を作業者4人で話し合って、その困り具合の解決策(アイデア)をEさんが考案、その作業を再現、効果を確認して写真を撮り、マニュアル化してくれたのがF、Mさん2人になります。7人が関与して実現した改善策で、効果も大ですから、優秀賞準備、皆さんの名前を月例会で紹介、顕彰しました。

画像の下部にある赤文字は、チームリーダーHYさんの細やかな感謝コメントです。私の現役時代からのやり方で、目立つように赤ボールペンを使い「ありがとうございます。やり難い作業を上手く改善してくれました。効果大です」とお礼を述べて、花丸も添えられています。

提案してくれてありがとうという感謝の気持ちが伝わってきますね。彼女は、C-1~C-3まで、約40人の現場リーダーであり、チームワーク醸成に卓越した力を発揮、改善提案は常に全社でトップクラス(パートやアルバイト、固定派遣さん含めて月1件以上/人)。改善提案活動のおかげで5S活動も活発、誤出荷クレームも僅少(アイテム行数当たり約10~20PPM前後→経験的に、この水準なら荷主も超安心)でした。

荷主からの信頼も厚く、彼女は荷主の来社時には作業関係者を集め、あいさつしていただくようにも配慮工夫していました。荷主から感謝の言葉が発せられるので、作業者たちはうれしく、さらに頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

日頃から、メンバー・スキルアップにも熱心で、力量あるメンバー(パート・アルバイト・派遣の区分なく平等)に講師役になってもらって、ロール・プレイング研修(日々、短時間の職場研修)にも熱心でした。ですから、荷主の物量波動があっても、皆で協力して乗り切ってくれました。これらの改善提案書が、現場に向かう通路にずらっと掲示され、月例会で名前を呼ばれるわけですから、皆さん晴れやか、やりがい感が醸成されます。

■ 改善提案書の事例2:フォークリフトの定量観測

次の事例は、様々な専門商品を扱う卸企業の小物用品を取り扱う物流拠点(半年前受託開始)でのフォークマンチーム(全11人)のうち3人による、物量が増加しつつあり、今まで肌感覚で日々の業務配分を決めていたが、これではいけないので、きちんとデータを取って、作業標準工数や要員の適正配置を実施していきたい、そのために必要な基礎データ( 作業時間(工数))計測集計したい、との積極的な提案です。

<事例2>
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フォーク作業者KSさんがリーダーSTさんに問題提起、その内容を聞いた副センター長KSさんがやり方を伝授、Excelを使えるKZさんが協力して集計表を作成し開始するという提案書です。

フォーク作業者がこのような問題意識を持ち、提案してくれるとは素晴らしい職場です。皆さんの会社では、フォーク作業者がこのような提案をしてくれますか? すごいと思われませんか?

この事例も、チーム内関係者が協力して、改善に当たった事例です。前向きな良い提案として、副センター長KSさんが赤文字で褒めています。この提案書も、事務所横の通路掲示板に張り出され、月例会で紹介表彰されました。

■ 職場で 良い人間(信頼)関係を築くためのポイント

上記の事例からお分かりいただけるように、改善提案活動は「素晴らしい双方向コミュニケーション活動」ではないでしょうか?!

前回(第10回)述べた「行動科学3つ 」が見事に融合実施されています。
1:改善提案を通じて、コミュニケーションを図る
(職場での困りごとを皆で話し合い、共有化できる)
2:相手の立場で考える
(問題気づき者の立場で、改善策を考察できる)
3:相手への思いやりを示す
(称賛や感謝の言葉を、コメント記述したり、皆の前で紹介できる)

改善提案に関係する作業者の皆さんは、自分の話を聞いてもらえたり、頑張って改善した結果を褒めてもらったり、全員の前で名前を呼ばれ顕彰されるので、誇らしく、やる気にあふれ、次から次へと自ら改善に邁進してくれるのです。そうすると、上長が命令しなくとも、「メンバーを通して事をなす」ためのボトムアップ型の仕組みが出来てきます。

メンバーを「管理する」のではなく、「影響を与える、やる気を醸成する」ことで、全員の考働を望ましい方向に導いていくことが出来ている証左になり、組織活性化につながりますので、ぜひとも改善提案制度の積極的な活用をおすすめします。

■ 先人の知恵から学ぶ 「 パクってパクって 大成功!」

私の現役時やコンサル支援した企業経験から、毎月1件/人程度の改善提案は、そんなに難しくなく、実現できます。

改善の活発な会社(物流センター)内には、たくさんの先人の改善事例があるはずです。他社の事例を見聞きすることもあるはずです。

高い業績の個人やチーム(ハイパフォーマー)のやり方、ノウハウを謙虚に学ぶ習慣を付けていくと、自部門の問題点を改善するアイデアが自然と浮かんできます。

私は従業員の皆さんに、「私たちは皆、家庭や学校を含めて、両親や先達から教えられて、今日があります。教えてもらったり、見聞きした内容を素直に受け入れ、咀嚼(そしゃく)して自分のモノにすることは恥ずかしいことではなく、素晴らしいことです。それらを自分の職場に導入して進化させる活動は尊いことで、胸を張って推進してください」と推奨してきました。

それが「パクってパクって 大成功! 」という言葉で、朝昼礼や月例会でも、全員に何度も紹介してきました。皆さんも、ぜひ実践していただければ幸いです。

次回は、また別視点の改善提案記述例をご紹介します。楽しみにしてください。

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