ヤマトホールディングス(ヤマトHD)傘下のSustainable Shared Transportと富士通は1月27日、荷主企業・物流事業者向けの共同輸配送システムの提供を開始すると発表した。
<都内の記者会見の様子:左からヤマトHD 長尾 裕 社長、SST 高野 茂幸(高ははしごだか、以下同) 社長、富士通 時田 隆仁 社長>
本サービスは2月1日より稼働開始となり、同日よりSSTはオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供を開始する。
なお、富士通は荷主企業として「SST便」を活用するとともに、SSTと共同でサプライチェーンに関わるデータ連携基盤を構築している。
2月1日にはSSTへ5000万円の出資(出資比率12.5%)を行うこととなっているほか、今後の成長に合わせて増額していく予定だ。
サプライチェーンは業種・業界ごとにシステムや規格、商慣習などが異なることから、一部の荷主企業や物流事業者のみでの課題解決には限界がある。
そこで企業間の垣根を越えた物流効率化に向け、持続可能なサプライチェーンの構築、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する会社として、ヤマトグループが設立したのがSSTだ。
今回発表されたシステムでは、荷主企業と物流事業者の情報マッチングによる最適な輸配送計画の作成が可能。
荷主企業はパートナーを探すことなく共同輸配送に取り組むことができるほか、同一区間でも複数の時間帯・複数の輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択できる。
一方で物流事業者は、復路の空車走行の減少(帰り荷の確保)などによる積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善を図ることが可能となる。
また、業種ごとにプラットフォームが異なる問題にも、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠することで対応。
業種・企業間で定義の異なるデータの連携が容易になり、荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定の迅速化や、物流効率化に向けた企業間の協力を促進できる。
このほかにも、ブロックチェーンによるデータ連携の安全性確保も、システムにおける重要なアピールポイントとなる。
今回のサービス提供開始について、ヤマトHDの長尾社長は「標準化をしていくことが、昨今の重要なキーワードであり、標準化のオープン化としての第一歩がSSTの取り組みだと思っている」とコメント。
SSTの高野社長は、システムについて「オープンプラットフォームとして、荷主・物流業者どちらにも共同輸配送を扱いやすいものを作ったつもり。事業をもって、社会課題の解決に全力を尽くしたい」と語った。
また将来展望について、富士通の時田社長は「システムは技術の集大成と述べた一方で、ある意味では始まり。AIをいかにこのプラットフォームに使っていくかが重要で、今後の量子コンピューティング技術による、配送ルートの効率アップをプラットフォームに生かしていきたい」と述べた。
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