CBREは1月17日、「Japan Brief:首都圏物流施設の賃料水準が上向く可能性」を発表した。
それによると、大型マルチテナント型物流施設の建設工事期間は、物件の規模にもよるが、概ね1.5年から2.5年である。実際、首都圏の大型マルチテナント物流施設の2023年と 2024年における新規供給はその通りに推移した。
2022年から2023年にかけて開発計画が積み上がった結果、2023年Q4時点で2025年の新規供給は59.5万坪まで増えた。しかし、2024年Q4時点における2025年の新規供給は46.7万坪だった。2025年の開発計画が1年間で約13万坪、22%が減ったことになる。
<各時点における首都圏大型マルチテナント物流施設の新規供給予定の変化>
新規供給が減った理由の一つは、建築費の高騰である。倉庫の工事原価指数をみると、2015年から2020年までの6年間の上昇はわずか4ポイントだったが、2021年から2024年の4年間では32ポイント上昇した。
その結果、開発用地の取得時に想定した建築費と、設計段階における概算の建築費が大きく乖離したことで、開発計画が見直されたと考えられる。また、工事期間の長期化も影響したようだ。2023年Q4時点で2025年に竣工が予定されていた新規供給物件24棟のうち6棟が2026年に竣工予定時期が後倒しになった。また1棟は用地のまま売却、2棟が冷凍冷蔵設備を含む開発に変更された。
首都圏の賃料見通しが弱含みであることも、デベロッパーの開発計画の足かせになっている。首都圏LMTの空室率は、2020年Q4の0.5%から、2024年Q3には10.1%まで上昇した。10%を超えるのは、2010年Q4(11.7%)以来だった。実質賃料は、2025年Q4は4450円/坪と、2022年Q3の最高値4550円/坪から2.2%の下落が予想される。
本来、建築費の上昇分は賃料に転嫁されるはずだが、空室を抱えた物件が多いエリアでは、オーナーがテナントを誘致するために賃料を調整せざるを得ない状況となっている。そのため、設計の見直しによる竣工時期の遅れや冷凍冷蔵倉庫への転換、転売を模索するといったケースが今後も出てこよう。
したがって、2026年以降に予定されている新規供給についても、2025年と同様に現時点よりも減る可能性がある。1年間で新規供給予定が 22%減少した2025年の例を当てはめると、2024年Q4時点で想定される2026年の新規供給54.9万坪は、1年後の2025年Q4時点で43.0万坪に減る。
<首都圏LMT空室率と実質賃料の予測(2024年Q4時点)>
現時点(2024年Q4)のCBREの予測では、首都圏の空室率は2025年後半から低下基調となり、賃料は2026年Q2に下げ止まってその後は横ばいで推移する見込みである。しかし、2026年の新規供給が現時点の計画から減少すれば、空室率の低下ペースが速まり、賃料水準は2026年後半に上向く可能性もある 、としている。