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国交省/次期「総合物流施策大綱」策定へ第1回検討会、2030年へ視点示す

2025年05月08日/3PL・物流企業

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国土交通省は5月8日、次期「総合物流施策大綱」の策定に向けた第1回「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」を開催した。

2021年3月に閣議決定された現行の「総合物流施策大綱(21年度-25年度)」の計画期間が25年度で終了することを受け今後、次期大綱の検討に着手する。

<第1回検討会の様子>
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検討会には国土交通省、経済産業省、農林水産省など関係省庁をはじめ、業界団体や有識者、物流事業者、荷主企業などから約30名の構成員が参加。オブザーバーとして厚生労働省、環境省、消費者庁、公正取引委員会なども同席した。

座長は根本敏則氏(敬愛大学 特任教授)、座長代理に兵藤哲朗氏(東京海洋大学流通情報工学科 教授)を選出した。

<座長を務める根本教授(中央)>
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検討会では国土交通省が、物流を取り巻く動向と物流政策の現状・課題について、「物流革新に向けた政策パッケージ」策定により、物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容の3つを軸に、「中長期的に継続して取り組むための枠組みを法制化も含め確実に整備している」と説明した。

物流関係の令和7年度予算・令和6年度補正予算についても合計2618億円を確保し、2030年度に不足すると予想される34%の輸送力を補っていくためのポイントとして、物流DXや標準化、データ連携、物流施設の機能強化の推進などを挙げた。

物流の「2024年問題」にも言及。「政策パッケージ」に基づく官民での取組成果等により「2025年度に入ってからも物流の機能を維持できている」との見方を示した。その上で2026~2030年度の次期「総合物流施策大綱」策定に着手する。

今後の検討の方向性としては、「2030年度に想定される輸送力不足への対応」「国際競争力の強化」「災害時の有事の備え」の3つ視点を示した。

2030年度の輸送力不足への対応として、現行の政府計画の達成状況や施策効果等を踏まえ、「物流革新への新機軸」を検討する。

具体的には、持続可能な物流サービスの提供に向けたサプライチェーン全体の担い手確保や処遇改善のほか、自動運転や次世代エネルギー等のイノベーションに対応するための物流産業全体の構造転換など。

将来の人口推移を見据え、全国・地域レベルでの輸送体系の再構築についても議論する。足元の経済動向や物流需要の変化等を反映し、輸送力見通しの再検証も行う。

国際競争力の強化では、アジア諸国等の成長市場の物流需要を取り込むためのサプライチェーン基盤強化を図る。また、昨今の災害を踏まえ、緊急時の物資輸送ニーズ等に即応するための強靭な物流の構築・確保について検討する。

この後、構成員全員が意見や質問を述べた。このなかで、2024年問題についてのコメントも多くあった。

「1年過ぎたが影響は本当にあるのかという感触もあり危機感を抱いている」(日本物流団体連合会 河田守弘理事長)。「この1年間、運べたのではないかと推計している。アンケート調査の結果、リードタイムを伸ばしたことが効いている。危機ではあるがいい兆しだと思っている」(日本ロジスティクスシステム協会 北条 英 理事)。「2024年問題、クリアしたのでは。荷主、事業者が真剣に取り組んだ結果で、一番顕著に変わったのは食品や飲料など輸送頻度の多い業界。1日リードタイムを伸ばした企業が圧倒的に多かったのでないか」(立教大学経営学部 高岡美佳教授)。

検討会には、物流事業者と卸、小売など荷主企業も参加している。物流事業者では大手の日本通運やヤマト運輸のほか、松浦通運(佐賀県)や、大成倉庫など中小企業も構成員となった。2030年の輸送力不足に対しては、「各種取り組みを実行しているが、持続可能かどうかはクエスチョン。民間企業として始めてはみたが、というケースも多いのでは。取り組んだ内容を評価していただく仕組みも広く議論しては。物流と荷主の連携もさらに広がりをみせるのでは(ヤマト運輸 小菅泰治取締役会長)。一方で「2030年輸送力不足とあるが、我々はそこまで生き残れるのか。加えて燃料の問題もある。中小事業者にとってインフラがない限り、車両を変えるのは難しい。燃料が変わるなら充電設備が必要」(松浦通運 馬渡雅敏社長)という声も。

また「多重下請け構造ついて、いかに取引構造を透明化していくか、法整備が進んでいるこれからが重要。法改正がなされたが手厚いフォローアップが必要ではないか。災害時の備えでは、関係機関への連携が重要。地方におけるガソリンスタンドの維持も検討しては」(駒澤大学法科大学院 若林亜里砂教授)など一歩踏み込んだ議論への提案もなされた。

荷主側からは、「3年前から2024年問題に対応するため様々な取り組みを進め、今も続けている。同じ車両でもやり方を変えれば1.5倍くらい運ぶことができる。計画物流に切り替えていかないとモノは運べなくなる」(イオングローバルSCM部門 山本浩喜ロジスティクスセンター長)という意見があった。

今後、6月下旬には第2回有識者検討会を行い、11月まで8回実施する予定。その後、検討会の提言をもとに、政府として総合物流施策大綱を2025年度末までに閣議決定する予定だ。

■「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」構成員
大串 葉子/同志社大学大学院 教授
奥田 敏晴/城陽市長
奥山 理志/いすゞ自動車株式会社 経営業務部門SVP(Senior Vice-President)SVP渉外担当役員
小野塚 征志/ローランド・ベルガー パートナー
河田 守弘/日本物流団体連合会理事長
神林 幸宏/全国農業協同組合連合会 常務理事
木藤 祐一郎/日本航空 執行役員貨物郵便本部長
木下 敦子/読売新聞東京本社 論説委員
栗林 宏/栗林商船 代表取締役社長
慶島 譲治/全日本交通運輸産業労働組合協議会 事務局長
河野 康子/日本消費者協会 理事
小菅 泰治/ヤマト運輸 取締役会長
澤江 潔/経済団体連合会 ロジスティクス委員会企画部会長
首藤 若菜/立教大学経済学部 教授
白石 豊/三菱食品 執行役員ロジスティクス本部長
杉山 千尋/日本通運 代表取締役副社長
鈴木 又右衛門/太成倉庫 代表取締役社長
高岡 美佳/立教大学経営学部 教授
西成 活裕/東京大学大学院工学系研究科 教授
根本 敏則/敬愛大学 特任教授
服部 充宏/アスクル ロジスティクス本部ロジスティクスネットワーク統括部長
二村 真理子/東京女子大学現代教養学部 教授
兵藤 哲朗/東京海洋大学流通情報工学科 教授
北條 英/日本ロジスティクスシステム協会 理事・JILS 総合研究所所長
堀 陽介/R&C ながの青果 代表取締役社長
馬渡 雅敏/松浦通運 代表取締役社長
味水 佑毅/流通経済大学流通情報学部 教授
三宅 美樹/有限責任あずさ監査法人 テクニカル・ディレクター
森 信介/花王 執行役員SCM 部門ロジスティクスセンター長
山本 浩喜/イオングローバルSCM 代表取締役社長
若林 亜理砂/駒澤大学法科大学院 教授

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