野村不動産は5月30日、物流事業戦略発表会で、物流施設「Landport」シリーズに2025年4月以降の3年間で約3400億円を投じ、15棟・総延床面積約130万m2を開発する計画を発表した。
野村不動産グループは経営計画の「3か年計画」(2026年3月期~2028年3月期)で、物流施設は成長事業だとして注力領域に位置付けている。
マルチテナント型に注力し、Landportでは初となる冷凍冷蔵倉庫も開発するほか、これまで棟数の少なかった東北や九州エリアで棟数を増やす方針だ。
常務執行役員の井戸規昭 都市開発第二事業本部長は「2006年の事業参入以降、2025年3月末時点で計45棟の物流施設を提供してきた。現状では首都圏が圧倒的に多いが、今後は東北や九州にも広く展開していく」と説明。
物流施設を取り巻く環境については、「トラックドライバー不足、建築費の高騰、物流2法改正、機械・省人化の拡大など対応すべき課題は多く、物流施設がどう解決に関われるかが戦略のポイントになる」と述べた。
また、今後の見通しを「特に首都圏では需要を上回る物流施設の供給があり空室率が高くなってきているが、EC市場の拡大でまだまだ需要はある。関西や九州エリアの需要は堅調。東北にもビジネスチャンスがある」とした。
計画によると、事業ボリュームとしては、投資額ベースで2022年度~2024年度(10棟・約1300億円)の2.6倍に上る約3400億円の投資を予定している。今後も年間1000億円のペースで事業量を確保し、2031年度までに投資総額約1兆3000億円となる計画だ。
2006年の事業参入以来、累計では2028年3月までに60棟、総延床面積は約365万m2になる見込み。
エリア別に見ると、首都圏にとどまらず、全国へ開発投資を強化・拡大する姿勢。特に東北ではこれまで開発実績がなかったが2棟を、九州では5棟を新たに開発する。
九州では主に自動車や半導体関連の工場による需要があり、東北では都市間輸送を効率化するための中継拠点としてニーズがあると見込む。
エリア的な戦略としては、消費地に近いことと、幹線道路の結節地にあることを重視している。
設備面では、トラックバースを両面バースとし、フロアごとのバース設置により荷待ち時間の短縮や効率的な荷さばきができるよう機能強化する。冷凍冷蔵については全館ではなく、低層階に3温度帯センターを設ける構想という。
大型マルチテナント物件に注力するが、1000坪台の小規模区画を展開することで、地方の中小物流事業者やスタートアップ企業などのニーズも取り込む狙いだ。
一方、ハード面で物流施設を開発するだけでなく、ソフト面でも自動化や省人化に向け、ロボットなどのソリューション提案を強化する。
野村不動産が核となり116社が参画する物流DX推進プラットフォーム「Techrum(テクラム)」を通じ、荷主企業、物流事業者の課題解決につなげる戦略。
効果検証拠点「習志野Techrum Hub」(千葉県習志野市)で機器デモンストレーションを行うなど、それぞれの物流施設に適した手法を見つけてもらえるよう取り組む。
■竣工予定の15棟(所在地、延床面積、竣工時期)
Landportつくばみらい:茨城県つくばみらい市、3万8587.27m2、2025年6月
Landport東海大府I:愛知県東海市・大府市、24万6539.45m2、2025年10月
Landport仙台岩沼:宮城県岩沼市、2万5810.27m2、2026年2月
Landport野田:千葉県野田市、10万9624.68m2、2026年3月
Landport柏II:千葉県柏市、11万771.62m2、2026年7月
Landport東海大府II:愛知県大府市、13万3102.57m2、2027年3月
Landport福岡古賀I:福岡県古賀市、8万5880.49m2、2027年4月
(仮称)福岡苅田物流計画:福岡県京都郡、3万534.69m2、2027年4月
(仮称)Landport京都伏見:京都府京都市、12万9895.00m2、2027年5月
(仮称)Landport北上:岩手県北上市、3万7724.53m2、 2027年8月
(仮称)Landport福岡久山II:福岡県糟屋郡、2万1044.30m2、2027年10月
(仮称)Landport福岡古賀II:福岡県古賀市、9万1915.89m2、2028年2月
(仮称)Landport北伊丹:兵庫県伊丹市、11万312.37m2、2028年2月
(仮称)新習志野駅前物流施設計画:千葉県習志野市、未定
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