国土交通省物流・自動車局の髙田 龍 物流政策課長は、11月20日に開かれた「物流コンソーシアム baton」の合同記者発表会で来賓講演を行い、batonが来年2月から実施する特積み企業横断型「ドライバー交換方式中継輸送」について、持続可能な物流体系の構築につながる有効な取り組みであるとの認識を示すとともに、現在策定に向けた作業が進んでいる次期総合物流施策大綱でも、中継輸送実施の前提となる標準化やDXが進むよう、国がさらなる普及・拡大を後押しする内容を盛り込む方向で検討していると明らかにした。
髙田課長は、次期大綱策定に向けた考え方について、「物流の担い手不足への対応として、物流革新の新機軸を検討の視点の一つとしているが、batonが取り組む中継輸送や、その前提となる物流の標準化、DXといったことについても、さらに普及・拡大の後押しを行っていくと大綱の中で位置付ける」と説明した。
また、国交省では2024年度補正予算事業を活用して、国内物流分野でのDXやイノベーション促進を目的に、革新的な取り組みの事例創出や社会実装を後押しする「物流イノベーション実装支援事業」を行っており、batonの中継輸送を採択したことを報告。「制度、技術、運用を同時並行で整理しながら社会実装に向けた検証を進めていただいている」とし、ハードルが高いとされるドライバー交換方式による中継輸送について、「トラックの運行に関する法令順守を前提に、安全性や効率性を損なわない形での課題の整理を進めていると聞いている。そのような挑戦から持続可能な新たな輸送の形が生まれることを期待している」と述べた。
発表会では、batonのアドバイザーを務める東京大学大学院工学系研究科の西成 活裕 教授が物流業界の現状と課題について講演した。
西成教授は、物流の2024年問題の原因の一つとなった時間外労働時間上限960時間の規制適用は「物流危機の始まりに過ぎない。多くの産業に適用されている一般則である上限720時間の適用など、さらに厳しくなることを視野に入れて物流業界を考えていく必要がある。今はまだ途中段階」と説明した上で、中継輸送が進んでいない現状について、各社の手順や輸送機材などが独自に発展してきたことが共同配送などを阻んでいるとし、標準化の遅れが一因であると指摘した。
また、補助金を活用した取り組みについては、「補助金が出ている間だけ”とりあえずやってみた”事例が多く、本格的に”仕組み化”したプロジェクトが少ない。内在していたリスクは”補助金に溶けて”わからないまま」とし、「儲かる仕組み」をどのように作るかを考える必要があるとの考えを示した。
そのうえで、batonでは「東京海上をはじめとする中立的な立場のプレイヤーを交えて課題を把握し、どう解決するかについて徹底的に議論しており、アドバイザーとして見ていて、本気なのが分かった。成果物はどの会社でも広げていくことができ、役に立つものができていく」と述べ、強い期待感を示した。
物流コンソーシアム baton/来年2月からドライバー交替方式で企業横断型中継輸送を実施

