中国政府は11月19日、日本産の水産品に対し事実上の全面輸入停止措置に踏み切った。これを受けて帝国データバンクは、中国の対実輸入規制による日本企業の影響調査を発表した。
中国による日本産の水産物の全面輸入停止措置は、2023年8月の東京電力福島第一原発の処理水放出をめぐる一件から今回で2回目。これに関連し、本調査では、前回の輸入停止措置である2023年との比較データが中心となっている。
2025年10月時点における対中輸出企業は9250社で、2023年調査時点で判明した9270社から新たに870社参入、890社が撤退し、差し引き計20社・0.2%の純減となった。
このうち水産関連企業は172社で、全体に占める割合は1.9%。2023年時点の164社から8社の増加となっていた。
中国の対日輸入規制で影響が出る可能性のある「食品」は、2023年の55.9%から53.9%に減少したほか、食品のうち「水産関連」でも48.4%から47.8%へと減少した。
近年の日本食ブームを背景に中国向けの需要が高かったものの、中国政府による禁輸措置など不安定な環境が続いたことで、生産・作業工程や販売先を中国から米国や東南アジアなど第三国に求める動きや、日本国内へ回帰するといった動きが進んだことも寄与した可能性がある。
ここ2年間で企業における取り組みも大きく変化している。足元では、日中両政府間で輸出再開に向けた手続きや技術的要件について合意に至り、2025年11月上旬には北海道産の冷凍ホタテなどが中国向けに出荷再開となった。中国国内で人気の高いナマコなどのほか、日本食ブームを背景に日本産食品の需要は旺盛で、「最大の得意(販売)先」としての中国市場の存在感は依然として大きいとされる。
他方で、輸出企業側でも政治面を中心に経営環境が大きく一変する中国特有の「チャイナリスク」の認識が改めて広まっており、中国以外の取引市場を開拓するなど「中国依存」を減らすリスク分散の取り組みも進んできている。
そのため、今回の再禁輸措置についても比較的冷静な対応を行う企業が多いとみられ、2023年当時のような「ショック」までは至らない可能性もある。ただ、今後の成り行き次第では対中輸入の規制範囲が広がるといった事態も想定され、短期的には対中輸出の割合が高い企業を中心に一定の影響が出ることは不可避とみられる。
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