荷物のサイズや重量を正確に測定して保管や出荷を行う――。この「当たり前」とも思えるプロセスの中に、主観や曖昧さが入り込む余地があれば、時に「会社の信用を損なう」「運賃や保管料を過少請求してしまう」といったリスクに直結する。 こうしたリスクをゼロに近づけるソリューションを提供しているのが、精密天秤(てんびん)で世界シェア第1位を誇るグローバルメーカー、メトラー・トレド(本社:スイス)だ。 世界中の物流拠点で導入されている同社の製品は、日本の現場にどのような変革をもたらすのか。産業機器事業部の村田真人事業部長に、その真価を聞いた。(取材日:2025年12月23日、於:都内メトラー・トレド日本本社)
レーザーで測定した対象物を
独自の特許技術で点群データ化
―― メトラー・トレドは、研究室で使われる超高精度なものから、巨大なパレットスケールまで、「測る」ことに関して世界トップクラスのブランド力を持たれている印象です。今の物流現場での主力は。
村田 自動パレット寸法測定システムです。特に日本国内の物流事業者には、在庫管理システム等とのデータ連携の容易さから「TLD870」というモデルに多くの引き合いをいただいています。
「TLD870」は貨物にレーザーを照射して、長さ、幅、高さを1パレットにつき1時間当たり最大240パレット測ることができます。最大で長さ2.5m×幅2.5m×高さ2.6mまで計測できるので、大きな荷物を扱う荷主、フォワーダー、倉庫事業者などがサイズを測る場面だけでなく、重量の把握やバーコードデータ化の際にも活用いただけます。重さについては、レーザー装置とは別にオプションで床面に設置したフロアスケールで測定し、サイズとともにデータ化します。
サンリツが2023年12月に千葉県成田市の保税蔵置場である「成田事業所」(第2倉庫)に「TLD870」とフロアスケール「PFA584」を導入した事例では、1パレット当たり90秒かかっていた検量・検尺作業時間が約4秒と大幅に短縮されるとともに、ヒューマンエラーがなくなったことで顧客からの信頼性が大幅に高まるなどの効果を挙げています。
<TLD870>
<サンリツでの導入事例動画>
―― 「TLD870」のデータから容積などを知ることはできるのでしょうか。また、どのような場所に設置が可能でしょうか?
村田 長さ、幅、高さのデータを基に、表面積や容積の把握も可能です。屋外や気温が50度を超える、もしくはマイナス10度を下回る環境では使用できませんが、人が働くことのできる環境の倉庫などでは必要なスペースを確保できれば、過酷な工業用途にも耐える設計となっています。
<測定イメージ>
―― 荷物は複雑な形状のものや、レーザーで測定しにくい素材で覆われているものも多いですが、どのような技術で正確に測定できるのですか。
村田 実はこの技術のルーツは、1985年に創業したノルウェーの「カーゴスキャン」という企業にあります。2000年に弊社が買収したのですが、創業当時手掛けていたのが、リサイクルのためにペットボトルを分別する際の技術開発でした。レーザー光線を使い、ペットボトルのおおよその形状を点群データとして捉え、ペットボトルを形状別に分別するためのもので、物流とは無関係な分野からこの技術はスタートしています。
皆さんご存じのように、ペットボトルの表面は「テカテカ、ツルツル」、形状もさまざまですから、レーザーで正確に捉えるには困難を伴います。反射光や散乱光などを見分けるソフトウエアのアルゴリズム開発に、多くの時間と労力を使ったというのが、このテクノロジーのコアになっているわけです。測定物以外に当たるレーザーや、レーザー以外の光源などのデータを分けて、点群データを作り上げる特許技術を持っています。
従来の測定装置では、四角い箱の「縦・横・高さ」を測るのが精一杯でしたが、点群データを使うと「いびつな形」も正確に測ることができることから「欠け」や「はみ出し」を逃さず、トラックの積載計画を立てる際などに大きな効果を発揮します。
アメリカの大手物流事業者では
利益改善効果に財務部門が注目
―― 1時間当たり最大240パレットの処理能力というのは、物流現場の生産性向上に直結しますね。
村田 荷物を捌く効率が上がるのはもちろんですが、それ以上の効果として、正確な測定により、利益の大幅な改善につながるという面を重視しているユーザーも少なくありません。
アメリカのある大手物流事業者では、「TLD870」と同じシステムをベースに、フォークリフトなどで移動したまま測定できる「TLD970」を限定的に設置していました。すると、導入拠点でボックス当たりの保管・運賃単価が上がってきたということで、「これほど効果の高い機器であれば、今すぐ全拠点に導入すべし」との判断で、最終的には財務部門の強いプッシュにより発注になりました。導入前は、正確に貨物のサイズを測定していなかったことで、運賃を過少請求していたのが原因のようです。その会社のアニュアルレポートを見ると、ボックス当たりの単価が右肩上がりで増加していっていることからも効果が分かります。
―― 不正確な測定による過少請求は日本でも起こりそうな事例ですね。
村田 とある日本の運送会社が実態を掘り下げる目的でリサーチをされた際に、サイズが不正確に測られていたことで、荷物の運送料が過少請求になっている事実が判明したそうです。その額が1日当たり数百万円ということが分かり、当社寸法測定器の購入に至りました。
こういう事例をより多くの企業に知っていただくことで、「適正な運賃や保管料を請求しているか否か」を再認識して、経営改善に前向きに取り組んでいただきたいと思います。そうすれば、運転手やそのご家族の方々の幸せにつながりますし、もっと言うと日本の物流問題の解決に貢献できるのではないかと考えています。
ある展示会に出展した時、「世の中にこういう製品がないから、自社で作ろうとしていました」とおっしゃる方や、「会議の場で、『開発を進める前にもう一度だけ展示会に行って、あるかどうか確認してきます』と言って、今日ここに来て初めて存在を知りました」という方もいらっしゃいましたので、われわれがもっと積極的に皆さんに知っていただく努力をしなければと考えています。
輸出時の申告トラブル防止や
荷物破損時のリスク回避にも
―― 正確な計測によって収益性の改善にとどまらず、会社の信頼度を高めることにもつながるというのは、今後の企業の「生き残り」にも寄与しそうですね。
村田 「TLD870」では、オプションのカメラにより測定した際の写真もデータで残るので、どの荷物をいつ測ったか、そして荷姿はどういったものか、後から瞬時にデータを参照できます。輸送中の荷物に万が一ダメージがあった場合でも、きちんとトレースができるので、輸出時のバンニングなどの際に、「壊れている」「へこんでいる」などと言われても証拠を示すことができます。
荷主はフォワーダーに対して、「輸出するから必ず正確な実寸法を示してください」とおっしゃるので、フォワーダーは「TLD870」で得たデータを全部提供することで、カスタマーサービスの一つ、営業の武器の一つにつなげています。
輸出貨物を扱う顧客から聞いたのは、実際の梱包サイズが申告梱包サイズと違うと税関から指摘されるという話。「この申告は違う貨物では」と言われてしまうので、やはり信用問題に関わる課題ですね。データ化すれば、そういったことは絶対に起こりませんから。
―― 最後に日本の物流関係者にメッセージを。
村田 私は常々、「データなくして物流改革は難しい」と提言しています。主観や慣習に頼った計測を脱し、まずは今、見落とされているデータを正しく採り、客観的に検証する。そこから真の改革を始めることができるからです。現場の皆さんがその一歩を踏み出すきっかけになれるよう、これからもメトラー・トレドという存在、そして私たちのソリューションを一人でも多くの方に届けていきたいと考えています。
<「正確なデータは物流改革のカギ」と口をそろえる阪井克来ビジネスディベロップマネージャー(左)と村田部長(右)>
■「TLD870」製品ページはこちら(リンク)
■「TLD870」スペックなどの詳細はこちら(リンク)
メトラー・トレド/「TLD970 オンラインイベント」でのデモンストレーションのダイジェスト版動画を公開




