
ZOZOが3月期決算を終え、数々の新機軸を打ち出している。
「ZOZOバイト改革」、フルフィルメントサービスの提供、そして国内在庫での中国展開だ。いずれもZOZOの物流分野に直結する重要な要素となる。ZOZO自体、これまで驚異的な成長を続けてきたが、少子高齢化による労働力不足、自動化の波、宅配クライシス等、新たな課題に直面してきている。
この変化に物流面でどう応えていくのか。その解答の一つが今回打ち出した新機軸ともいえる。物流の責任者として、ZOZOの執行役員を務め、グループ会社であるアラタナとZOZOテクノロジーズの取締役も務める大蔵峰樹氏に、今後の展望と展開を聞いた。
<大蔵峰樹執行役員>

<アルバイト募集のキャッチ>

アルバイトは直接雇用、コミュニケーションを重視
―― このところZOZOでは新機軸をいくつか打ち出しています。中でも、物流センター「ZOZOBASE」で働くアルバイトを対象に実施する「ZOZOバイト改革」については大きな話題を呼んでいます。
大蔵 そうですね。ありがたいことに、発表の翌日には2000名を超える応募をいただきました。すべての方を採用するわけではなく、今後面接を通じて採用を進めていきます。また、今秋つくば市に「つくば1-B」の竣工も控えているので、タイミングを見て追加募集を行う可能性もあると思います。
―― 従業員不足があらゆる業界で深刻ですが、御社でも。
大蔵 困っていたというよりは、今後商品取扱高が拡大していくことを見込んでいるので、今後も少しでも早く、より正確に商品をお届けするためにも、安定した体制を整えることは重要な課題でした。
―― 派遣スタッフについては
大蔵 これまでももちろん、ZOZOBASEで働くスタッフについては、アルバイトだけで構成されていたわけではありません。アパレル業界は商品取扱高の季節変動が激しいという特徴があるので、繁忙期には派遣スタッフを増やして対応していました。取扱高の拡大に伴い、派遣スタッフにも頼らせてもらっていましたが、今回の「ZOZOバイト改革」は、直雇用のアルバイトを増やすための施策でもあります。
―― なぜ、この時期に。いつ頃から考えていたのでしょうか?
大蔵 ZOZOBASEは、正社員だけでなく、多くのアルバイトや派遣スタッフに支えられていますので、以前から働き方や時給などの制度面については検討し、改善を重ねてきました。当社では「楽しく働く」ことを大切にしていますが、今回の「ZOZOバイト改革」の施策もこれを意識しながら検討を重ねて生まれた施策です。今回は特に、世の中の働き方改革や課題意識の高まりとも相まって、より注目していただけたのかもしれません。
―― 大幅な時給アップですが、コスト的には。
大蔵 そうですね。もちろん単純にアルバイトを確保するために時給を上げればよいという考えではありません。時給のアップ額についても、作業の効率化等、さまざまなシミュレーションを経たうえで導き出した答えです。現行の時給1000円を週3日以下の人には1100円と1割増、週4日以上の人には1300円と3割増に引き上げ、さらに、パフォーマンスに応じたボーナス制度も用意しました。金額だけ見るとコストアップですが、派遣スタッフとアルバイトの勤続期間と作業クオリティの関係性などのデータをもとに検討し、これまでとイーブンのコストでより高いパフォーマンスが得られることを期待した時給設計になっています。
―― 派遣スタッフは減らしていくと。
大蔵 これまでも、派遣スタッフには大変お世話になってきましたが、比率は減っていくと思います。アルバイトだと直接雇用になりますので、単発での派遣勤務よりも継続的な勤務が期待できることから、業務においてもコミュニケーションがより取りやすくなると考えています。
―― 2000人の募集が2日というスピードについては。
大蔵 人事部からは、今回は特に、よりモチベーションの高い方が多く集まっている印象があると聞いています。性別、年齢、国別問わず、さまざまな方からの応募がありました。SNSやメディアで取り上げていただいたことで、多くの方に知っていただけたと思っています。それをきっかけに、時給の引き上げを魅力的に感じてくださった方や、ファッションが好きな方など、多くの方に応募していだいたようです。
―― 周辺の物流施設や商業施設などへの影響があるのでは。
大蔵 なんとも言えませんが、多少の影響はあるかもしれませんね。
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