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物流最前線/ZOZOの物流戦略

2019年06月10日/物流最前線

6年ぶりの中国進出、EC支援業務は本格的に推進

―― 今回、中国進出や自社EC支援の施策を発表しました。まず、中国進出については。

大蔵 中国展開については、中国政府から法律に基づいたガイドラインが出るなど、ビジネス環境の整備が進み、また、中国における消費者のファッション消費額の変化などの背景を受けて、挑戦することが決まったものです。在庫は国内のZOZOBASEに置き、そこから中国に向けて出荷します。6年前にも中国進出を図りましたが、撤退しています。当時は、中国国内に倉庫を置く形で展開しましたが、今回は在庫を国内のZOZOBASEに置く越境ECという形での進出で、在庫リスク等を抑えています。

―― なぜ、前回はうまくいかなかったと。

大蔵 様々な理由がありますが、その一つとして、ファッション消費力の違いが挙げられます。それから約6年が経ち、現在の中国におけるファッション小売市場は流通総額35兆円を超え、EC化率は日本を抜いて35%を上回っていますし、一人あたりの年間ファッション消費額は当時(2012年)の約4倍(※)に成長し、売上規模も15兆円を超えています。
(※「中国国家統計局」等による統計データをもとにしたZOZO調べ)

―― 中国でのZOZOの知名度は。

大蔵 そうですね、ZOZO自体の知名度については、まだまだこれからだと思っています。しかし、ZOZOグループの提供するサービスは、実際に中国でも、多くの方に使って頂いています。日本のファッションブランドに対する興味関心の高まりも背景にあるのだと思いますが、例えばZOZOテクノロジーズが展開するファッションコーディネートアプリ「WEAR」は、多くの中国のユーザーに使っていただいています。日本発のファッションブランドのタグをつけた投稿も増えてきていますね。

―― 自社EC運営のためのフルフィルメント支援サービスの運営手数料を、10月から無料化します。

大蔵 ZOZOTOWNに出店いただいている企業の中には、ZOZOTOWNでの展開だけでなく、自社ECの強化を進めている企業も多くいらっしゃるのですが、販売チャネルごとに在庫の保管先が異なると一貫した在庫連携が出来ず、欠品による機会損失が生じてしまうという課題がありました。そこで、「Fulfillment by ZOZO」という施策を通してZOZOBASEで在庫を一元管理し、欠品による機会損失を最小化しようという取り組みを進めていきます。この施策は、ZOZOグループのアラタナが担当します。

―― すでに何社かの参加が決まっているようですね。

大蔵 MARK STYLERの「RUNWAY channel」やストライプインターナショナルの「STRIPE CLUB」、ラルフローレンの自社ECサイトなどの参加が決定しています。これらの企業に、ZOZOTOWNと自社ECのログインID連携や、ZOZOTOWNの顧客データ基盤を活用した決済サービスの提供、ZOZOTOWNの売上データ等を活用した支援などを行う予定です。以前は、運営手数料として、売上の15%をいただいていましたが、「Fulfillment by ZOZO」では無料となります。
(※配送料や出荷代行手数料等は別途必要)

季節による物量変化への対応策、つくば拠点も拡大へ

―― 決算説明会では物流拠点拡張計画を発表しています。

大蔵 千葉県と茨城県にある物流施設は基本的に習志野とつくばで基幹センターとして拠点化を図ります。出荷量はそのセンターの在庫量の1.5倍程度を見ていますが、その施設には入荷設備と出荷設備が併設されるため、在庫の保管スペースが十分ではありません。そこで、例えば、基幹となるZOZOBASEの周辺に短期で借りられるサテライト在庫センターを設けるなど、在庫の保管に特化した在庫センターを持つなどして対応しています。アパレル商品の特性上、季節により物量の変動が大きいため、閑散期と繁忙期で出荷能力に差が出てしまいますので、それを調整するためのしくみが必要だと考えています。
千葉県のZOZOBASEも、3つの施設を1つに集約する方向で、基幹センターであるZOZOBASE(プロロジスパーク習志野4)の近くに設置しようと考えていますが、このように、状況に応じて近隣の倉庫を借りることも考えています。

―― さて、大蔵執行役員にとって物流関係のかじ取りは大変だと思いますが、ストレス等はたまりませんか。

大蔵 ストレスは溜めませんね。夜寝ればだいたい解決します。本来の趣味がロボットを作ることですので、ZOZOの自動化に役立つ開発には積極的に関わりたいと思っています。

―― LNEWS読者にメッセージを。

大蔵 「お客様に感動を届ける」ということは、当社がずっと大切にしてきた基本的なスタンスです。物流関係の施策でも、顧客に喜んでもらえる物流を目指したいと思っています。当社が展開する物流は何のための物流なのか考え続けながら、顧客に感動を届け、物流を支えるスタッフが楽しく働ける職場環境を作っていきたいと考えています。

<大蔵峰樹 フルフィルメント本部 執行役員>

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■プロフィール
大蔵峰樹 フルフィルメント本部 執行役員
1997年3月:国立福井工業高等専門学校 電子情報工学科卒業
1998年4月:福井大学工学部入学
2000年5月:福井大学大学院在学中に有限会社シャフトを設立し代表取締役就任
2005年4月:スタートトゥデイ 入社
2010年11月:スタートトゥデイ フルフィルメント本部長 就任
2011年6月:スタートトゥデイ 取締役 就任(フルフィルメント本部、創造開発本部担当)
2011年 :クラウンジュエル 取締役 就任(2018年6月まで)
2012年:スタートトゥデイ 取締役 兼 創造開発本部長 就任
2015年5月:アラタナ取締役 就任
2015年12月:スタートトゥデイ工務店の代表取締役CTO就任
2018年4月:スタートトゥデイテクノロジーズ発足、取締役 就任
2019年5月:ZOZO フルフィルメント本部 執行役員(現任)

*スタートトゥデイは、2018年10月、ZOZOへ社名変更

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