物流テクノロジー企業がスクラム
荷主の課題解決へ突き進む

2021年11月25日 
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近年、物流不動産市場では開発事業者の新規参入が相次ぎ、テナントの獲得競争がより一層厳しくなっている。各社は他社との差別化を図るべく、テナント企業による庫内作業の自動化等を支援するサービスの提供を強化している。そのような中、高機能型物流施設「Landport」シリーズを手がける野村不動産が今年4月にスタートした取り組みが、荷主企業や物流会社の課題解決を目指して複数の企業が共同で自動化ソリューションを開発する企業間共創プログラム「Techrum(テクラム)」だ。テクラムはオープンコンソーシアムで、参画企業による連携先や販路に制限を設けない。ソリューションは競合他社のテナント企業にも提供する。その狙いは、どのような手法で物流課題を解決へと導くのか。テクラムを主導する物流事業部 事業企画課の網 晃一課長に話を伺った。
取材:10月27日 於:習志野PoC Hub(Landport習志野内)

<Landport習志野>
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<PoC Hub1>
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<物流事業部 事業企画課 網 晃一 課長>
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<テクラム紹介ムービー>

物流自動化を妨げる「3つの問題点」

――  4月から新たな取り組みとしてテクラムをスタートしました、その概要は。

  テクラムは、機器メーカーやソフトウェアメーカーなどのパートナー企業が「荷主の課題を解決する」という共通の目的をもって連携し、企業の垣根を越えたコンソーシアムによって物流の課題解決を目指す取り組みです。荷主企業の課題抽出から自動化ソリューションの提供までを野村不動産とパートナー企業各社が連携して支援することで、単独企業では解決が難しいような課題の解決を目指しています。

――  この取り組みの特徴は。

  あえて縛りが少ない開かれた取り組みとすることで、幅広いパートナー企業の参画を促すとともに、開発したソリューションの販路にも制限を設けない、つまりは「Landport」シリーズの入居を問わずさまざまな荷主企業や物流会社の課題解決を目指している点も特徴の一つとなっています。また、「Landport習志野」内に自動化ソリューションの効果検証拠点「PoC(Proof of Concept、概念実証) Hub」を開設しており、ここでパートナー企業同士がコミュニケーションを取り合ってソリューションを開発したり、効果検証を行うことができるようになっています。

<Techrum概要図>
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――  ネーミングの由来は。

  テクラムという名称は「Technology(テクノロジー)」と「Scrum(スクラム)」を組み合わせた造語で、さまざまな企業がスクラムを組み、荷主企業の望むテクノロジーを活用した物流の実現に向けて一直線に突き進むという意味を込めました。「スクラム」には、ラグビーのスクラム以外にもシステムの「スクラム開発」の意味合いも含まれています。

――  どのような経緯で開始されたのでしょうか。

  当社では、数年前から「カテゴリーマルチ」という形でハード面での差別化を図っています。従来はBTS型かマルチテナント型の二択だった状態でしたが、カテゴリーマルチでは業界やオペレーションごとに施設の仕様をある程度定めることで、よりテナント企業に適した物流施設を提供してきました。しかしながら、物流不動産の競合他社がソフト面での差別化に乗り出す中、やはりハード面だけでは差別化が難しく、カテゴリーマルチを深化させる一つの要素として自動化ソリューションの提供を検討し始めたのがきっかけです。

――  野村不動産として自動化ソリューションの検討を開始したのはいつ頃ですか。

  今から2年半前の2019年4月です。そこから1年間は当社も物流の自動化について手探りの状態でしたので、まずはどんな機械があるのかを調査したり、売り切りやRaaS(Robotics as a Service)などソリューションをどのような形で提供していこうかといった内容について協議していました。

――  当初は現在のテクラムのような形は構想していなかったのですね。なぜ今のようになったのでしょうか。

  自動化ソリューションの提供についてさまざまな検討や検証を進めていく中で、そもそも自動化が進み難い業界の構造的な問題が見えてきたからです。

――  見えてきた問題とは。

  まず、初期段階で気が付いた点としては、多種多様な自動化機器の中から荷主企業がどの機器が自社に合ったものかを選択することが難しいということです。また、機械を選定したとしても、高額の投資を伴うため入り口のハードルが極めて高く、導入に二の足を踏んでしまう。そうなると、投資コストとの兼ね合いから「まだ人手でもやっていける」ということになり、人手不足の課題感は認識しているものの、自動化に踏み切ることができないのです。

――  機械をレンタルしたり、最近ではRaaSといった手法もありますが。

  そうですね。確かにこの問題については当社が購入した機械を荷主へ貸し出すスキームなどで解決できるのではと考えましたが、当社も不動産業が専門ですので物流の機器については知識が浅く、どの機器を選べば良いのかが分かりませんでした。そこで、もう少し業界全体を見渡して、自動化ソリューションの提供方法としての望ましいあり方や課題などを客観的に見ていこうということで、見直しを行った結果、次なる問題が浮き彫りになりました。

――  視点を変えるとさまざまな問題が見えてくるのですね。次に見つかった問題とは。

  荷主企業の物流を構成するさまざまな関係者によって生じる構造的な問題です。例えば、荷主企業は物流機能の大半を3PLなどの物流会社へ委託しており、物流の自動化投資についての検討も3PLに任せる形になっています。一方で、3PLは荷主企業からの発注に基づいて業務を行っているため、荷主が投資の意思決定をしないと自動化ができません。とはいえ、3PLもコストを抑えるというコンペの中で仕事を請け負っていますので、荷主に自動化の提案をしづらい。3PL自らが投資をするにしても、荷主との契約期間や物流施設の賃貸借期間といった期間的な制約があり、回収に10~15年を費やすような大規模な投資はできません。

このように、荷主企業と物流会社の構造だけを見てもお互いに投資ができない関係に縛られており、誰も積極的に投資を行えない状況が生まれているのです。さらに、この荷主企業と3PLの関係は次の問題にもつながっています。

――  その問題とは。

  自動化のテクノロジーを提供する企業が、荷主企業との直接的な接点を獲得しづらいという問題です。荷主の物流は3PLがコントロールしているため、テクノロジー企業が自社のソリューションを提案する相手は荷主ではなく3PLになります。前段でも触れましたが、3PLは荷主の自動化投資に関して意思決定をしづらいため、テクノロジー企業がどんなに有力なソリューションを持っていってもなかなか採用が進みません。

また、荷主企業との接点としては物流機器の展示会がありますが、例えばAGVが5社ぐらい並んでいたとしても、荷主企業がその違いを理解するのは難しく、「何か新しいものが沢山あるな」という感覚と、「何か良いものがあるのではないか」といった期待感はあるものの、それが自社の解決策にまで繋がっていかないのです。

テクノロジー企業にとっては、そういった展示会ぐらいしか荷主企業との接点がないという業界構造がある上に、そういった場所に出展してもなかなか最終的な導入に至る顧客接点を得られなかったり、その後の営業プロセスが上手く進まず、結果として導入につながらない。機器が導入されなければ、実現場で性能や効果を検証することもできず、製品の改善や開発が困難になってしまします。と、以上が自動化ソリューションの提供について検討を進める中で判明した問題点です。

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