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日本GLPが新しい標準を作る
全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

2023年03月31日/物流最前線

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マルチテナント型物流施設開発を今日までけん引してきたデベロッパーの代表的な1社である日本GLP。そして今、長らく困難と言われた全館冷凍冷蔵マルチテナント型物流施設(以下、「冷凍冷蔵マルチ型物流施設」)の開発が日本GLPによって可能なまでに至った。しかし、冷凍冷蔵マルチ型物流施設の開発には幾多の越えねばならない壁が立ちふさがっていた。その壁を乗り越えたのは、業界の標準となるような基準を確立することで、新たな賃貸市場を作り社会に貢献したいという熱い思いからだった。同社営業開発部の駒俊志グループリーダーは「冷凍冷蔵物流施設の必要性を強く意識し、どうすれば汎用的で標準的な冷凍冷蔵マルチ型物流施設が作れるか、まさに試行錯誤の連続でした」と語る。その駒リーダーを含めた3人に「GLP神戸住吉浜」をはじめとする日本GLPの冷凍冷蔵マルチ型物流施設開発のコンセプトと共に、一つ一つの課題に真摯に立ち向かい、どのような解決策を用意したのか、取材した。
取材:2022年4月1日 補筆:2023年3月 於:日本GLP本社

<GLP神戸住吉浜>
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<GLP保有物件 冷凍冷蔵面積の進展>
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<駒 俊志 グループリーダー>
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EC食品需要急増で冷凍冷蔵倉庫逼迫

――  久しく冷凍冷蔵マルチ型物流施設の実現は困難ではないかと言われていましたが、どうして挑戦に至ったのでしょうか。

  実際に動き始めたのは、社内に食品専門の営業グループが発足し、その後他部門も巻き込んだ社内横断チームが発足してからですね。当時から冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大を続けていましたし、常温倉庫の次には必ず冷凍冷蔵倉庫の需要がくることは、衆目一致した見解でした。そこで、冷凍冷蔵倉庫の市況を丹念に調べましたが、常温倉庫とは違って確かに難しい問題が見出されました。また、従来型の冷凍冷蔵倉庫の開発だけでも大変なのに、それをマルチテナント型での開発となると、より一層様々な課題が浮かび上がりました。そして、常温の物流施設なら順調に開発が進むのにわざわざ難しい冷凍冷蔵物流施設の開発に力を注ぐ必要はないのではという意見が、業界内や社内にもありましたね。
そこで、当初は実績を積むために、まず冷蔵の物流施設を中心に、常温のマルチテナント型物流施設の1階で、弊社負担での設備投資(冷凍冷蔵設備の原状回復工事義務無し、顧客側での初期投資無し、設備管理費無し)を企画し、実現しました。冷蔵庫については、今や弊社内では一般的な提案内容となっており、昨年も契約済案件が複数あります。ただ、冷凍倉庫は冷蔵倉庫以上に難易度が高く、試行錯誤の連続でした。

――  具体的に冷凍冷蔵マルチ型物流施設の開発を始めるわけですが、現在までの冷凍冷蔵における実績は。

  2022年12月までの日本GLPの冷凍冷蔵物流施設事例による実績では、物件数が24棟、そのうち3温度帯総面積が約65万m2、内冷凍冷蔵物流施設が約22万m2となっています。GLPで設備を用意した物件は、GLP ALFALINK相模原1、GLP ALFALINK流山8、GLP ALFALINK流山5等、8物件にのぼります。専門営業チームができるまでは、冷凍冷蔵面積で年平均8.4%の伸びでしたが、専門営業チームができて以降は、年平均14.7%伸長と、より加速させることができています。

――  課題山積の冷凍冷蔵マルチ型物流施設の開発にこだわった理由とは。

  まず、元々冷凍食品の市場は伸びていて、冷凍冷蔵倉庫がひっ迫しているという状況が継続的にあり、加えてコロナ禍の影響により、自宅で食事をする機会が増えたことで、小売店舗及びECでの冷凍食品の取扱いがさらに伸張をみせていることが背景にあります。冷凍食品には大きく2種類あり、業務用と家庭用があります。業務用はその名のとおり、レストラン等の外食や、ホテル等の冠婚葬祭で使われる食材のことを指していて、家庭用とは皆さんがご家庭で食べるいわゆる冷凍食品です。この業務用と家庭用の生産金額がコロナの影響等もあり、2020年を境に逆転したわけです。共働き夫婦では、お弁当をほとんど手間暇かからない冷凍食品で済ませることもあると聞いています。さらに、お年寄り向けの宅配食等も増え続けており、これにより、お年寄り、若者、子育て世帯といった層に冷凍食品の需要が増加している傾向をつかんだことで、開発を決断したわけです

――  冷凍食品は一昔前とは違い、本当においしくなりましたし、需要が増すのはわかりますね。

  私も某大手企業のミールキットを購入していますが、週末にまとめて届けられ、それをレシピに基づいて調理するだけでとても手軽ですし、美味しいので重宝しています。

伊藤  最近では家庭内での冷凍食品の割合が増え、セカンド冷蔵庫の需要も増しているそうです。冷凍食品も本当においしくなりましたし、オリンピックでも有名になった餃子やラーメン、うどん等、外食と比べてもそん色ない味わいです。さらに、コロナで飲みに行けないことが続いたことから、冷凍食品をつまみにして自宅で一杯、という用途も増えたようです。コロナ禍に入ってから、業務用の荷動きが少し鈍ったことにより、庫腹に少し余裕が出てきたという話も聞いていますが、最近は出歩く人も増加傾向にあり、外食、中食、フードコートに加えて冠婚葬祭需要も今後徐々に増加すると見込んでおり、コロナ前のひっ迫状況に向けて徐々に戻っていくとみています。2022年後半からは海外からのコンテナで入ってくる量も増えており、関東の冷凍倉庫はまたひっ迫し始めたと認識しています。
また、小売店舗の売り場に目を移してみると、売れ行きは当然のことながら、品出しを行う店員さんの人手不足や作業効率向上のために冷凍食品の売り場面積を2倍程度に増やす企業が出てきているのも注目すべき点の1つです。

草原  ふるさと納税での地方からの返礼品に生鮮食品も増加していますので、これも大きな変化だと思います。地方からは圧倒的に海産物等、地域の特産物が冷凍で送られてくることが圧倒的に多いですからね。

――  そこで、専門営業チームとして冷凍冷蔵マルチ型物流施設の開発に乗り出したわけですが、現在想定している顧客は。

  冷蔵倉庫は比較的賃借される企業が多い一方、冷凍倉庫ではそうではありません。冷凍倉庫を中心に事業を営んでいる企業のシェアは、上位10社で全体の約35%を占めており、ほとんどが自社開発された倉庫を運営されています。話をしていると、やはり大手企業は自社で開発する資金力もあり、こだわりもあるようでした。当然業界上位企業とも組みたく、現在・将来共に継続して取り組みたいと思っていますが、一方で私たちは冷凍冷蔵倉庫の裾野を広げるため、冷凍・冷蔵どちらも対応できるマルチテナント型を開発したいと考えていましたので、まずは中堅中小規模の企業や新たに冷凍冷蔵物流へ参入したい企業に営業の焦点を定めることにしました。

――  東京湾岸や大阪湾岸には、古い冷凍冷蔵倉庫が数多くありますが、その建て替え需要が始まっていると聞きます。

  当然、私たちも興味を持っていますし、実際、冷凍冷蔵倉庫を立て替えたいという要望は多くの企業から聞きました。しかし、温度管理が必要な商品を保管している冷凍倉庫を建て替えるには、「既存商品の逃がし先」が必要となるため、大手企業以外は、建て替えるにしても代替地がないことや、莫大な費用がかかることがネックになっており、なかなか実現できていないようです。将来的には、一緒に取り組みたいのですが、今は汎用性のある冷凍冷蔵マルチ型物流施設そのものや、その利便性を広めていく試みに挑戦したいと思っています。

伊藤  これまでの冷凍倉庫ビジネスは自社開発を行い、超長期で投資回収するビジネスモデルであったため、賃貸物件をメインに検討する段階には至っていません。これは、ある種、皆さんが自宅を購入するか、借りるのかの判断に近いのかなと思っています。一方で、近年は金融機関からも「日本GLPは賃貸型冷凍・冷蔵物流施設を作らないのか」、というご相談を頂く機会も増え、物流会社の財務効率向上に向けたディスカッションを行う機会も増えてきています。現在弊社としては賃貸型冷凍・冷蔵物流施設の提案に加えて、いくつか財務効率改善のソリューションや将来的な協業案を提案したりしています。

――  2030年にはフロン規制がありますが、その対策等は。

  今回の私どもの施設はすべて自然冷媒にしているので問題ありませんが、古い倉庫の場合は2030年になっても、様々な理由でフロンを継続使用せざるを得ない場合もあると聞いています。一方で荷主サイドからは、ESGやSDGsが注目されているこの時代にそのような考えは受け入れにくいという声があるとも聞いています。

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