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日本GLPが新しい標準を作る
全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

2023年03月31日/物流最前線

顧客の反応良く自信に

<日本GLPが冷凍冷蔵専用のBTS型として竣工した初めての物件GLP常総II>
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<GLP常総IIの内観>
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――  今回の取り組みについて顧客からの評価はいかがでしたか。

  先ほど伊藤が申したように、例えば10年で契約しても、入居企業側での投資が無く、また冷凍冷蔵設備の原状回復工事義務が無い物流施設というのは、大変評価されましたね。加えて、時代に則した設備を小規模区画から借りることができる等、常温で実現できている内容を冷凍冷蔵物流施設でもできるという点は評価されていると感じております。

<草原 洵也 シニアマネージャー>
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草原  常温のマルチテナント型物件の一部に冷凍冷蔵設備を入れる場合、建築工事との兼合いからかなり早い段階から提案をして結論を出して頂く必要があったり、後付けになると余計に費用が発生したりすることがありました。しかし、今回の取り組みはすでに冷凍冷蔵物流施設が前提となっているので、費用も最小限に済みますし入居企業にご検討頂く際の制約やハードルが低くなっているので非常に反応は良いです。

――  冷凍冷蔵倉庫業界と常温倉庫業界との違いを一つ一つ解決してきたわけですね。

  初めての試みですから、まだまだだと思いますし、今後も何があるか分かりませんが、顧客の要望の勘所をとらえて、対応していくつもりです。それによって一歩でも標準化された利便性の高い冷凍冷蔵マルチ型物流施設実現に近づけていきたいと思っています。

<GLPによる全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設 コンセプト>
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2パターン展開の冷凍冷蔵倉庫

――  さて、これまで説明頂きましたが、冷凍冷蔵マルチ型物流施設のコンセプトをまとめると。

  日本GLPの新たな物件として冷凍冷蔵マルチ型物流施設を開発推進していく上で、3つのコンセプトを掲げています。1つは、柔軟性です。これまでも話に出てきた契約期間を常温同等にするとか、小規模区画にすること、可変温度帯にすること、階数を極力抑えること。小規模区画にすることは、やはり中堅中小企業を含めた様々な企業に利用してもらいたく、小分けにして最小約1000坪から利用できるようにしています。

――  可変温度帯とは。

  これは、冷凍から冷蔵までマイナス25℃から10℃まで自由に使えるようにしています。入居企業によって、冷凍と冷蔵の割合がわからないので、可変温度帯にしています。また、冷凍倉庫は4層ボックスが多いのですが、2層使いにしてバースの比率を高めたり、荷物の出入りがしやすいように工夫したりし、流通系企業にも利用してもらえるようにしています。

――  2つめのコンセプトが環境配慮・省エネですね。

  時代の要請から、これは外せません。自然冷媒、太陽光発電の館内還元、全館LED照明化と環境対策もきちんと行っていく予定です。そして、3つめが投資低減ですね。これが柔軟性と同じく大きく入居企業に響く点だと思います。初期投資無し、冷凍冷蔵設備の原状回復工事義務無し、設備管理費無しです。この3つのコンセプトで、まさに冷凍冷蔵マルチ型物流施設の汎用型を目指しているということが大きなコンセプトですね。

<(仮称)六甲プロジェクト>
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――  GLP神戸住吉浜と(仮称)六甲プロジェクトについて。

  GLP神戸住吉浜は、これらのコンセプトをすべて取り込んでおり、「流通型」の冷凍冷蔵物流施設ニーズを満たすことが可能です。一方で「保管型」の冷凍冷蔵物流施設ニーズもありますので、こちらにも対応していく考えです。(仮称)六甲プロジェクトについては従来型の4層BOX冷凍物流施設を想定していますが、この形の倉庫も今後大規模化して冷凍冷蔵マルチ型物流施設の一つのバリエーションにしたいと考えています。この(仮称)六甲プロジェクトは汎用性の高い保管型の冷凍物流施設として、GLPが建物・設備や仕様を企画し開発をサポートするもので、この汎用性の高さを評価いただき、GLP設定の仕様のままで藤原運輸さんに1棟全体を利用いただくことになりました。GLP神戸住吉浜については、興味を持たれている企業の希望面積がすでに賃貸面積以上になっています。GLP神戸住吉浜は2024年11月の竣工、仮称)六甲プロジェクトは2024年3月の竣工予定です。今後首都圏でも、この2パターンの形で開発していきたいと思っています。

――  最後になりますが、新たな市場を作る覚悟でプロジェクトに取り組まれたわけですが、これまでの感想と抱負をお願いします。

  常温物流施設の開発は現在80~90社が競合しており、仕様やレイアウトもかなり標準化が進んでいます。今や常温物流施設はどの会社でもある意味簡単にできる所まで来ていますから、冷凍冷蔵物流施設でも将来同様の形になるよう弊社が開発を加速し、拡大していきたいと考えています。そのために、冷凍冷蔵マルチ型物流施設のスタンダード、つまり標準になるようなものを作りたいという思いでこれまでやってきました。新しい賃貸市場、新しい物件というものができれば、とても有意義で、食品業界・物流業界、ひいては社会に貢献できることに喜び・面白味を感じています。

伊藤  特に冷凍冷蔵倉庫は常温よりもオペレーショナルアセットの色が濃いという特徴もあることから、私はよりオペレーションに踏み込んだことを新規事業で担当しています。荷主企業の目線で考えると、誰がオペレーションをするかで価値も変わってくると思っていますし、お話を伺っていると保管温度等でもかなり品質が変わってくるようです。顧客と様々なパートナーシップを組むことにより、より快適で利便性の高いコールドチェーン網の構築にどのように貢献できるかを日々考えています。本日お話したように、現在の冷凍冷蔵のバリューチェーン、サプライチェーンに困っている人たちがいるわけですから、単に借りて頂くこととは別次元のスキームを提示することで、冷凍冷蔵倉庫に携わっている人たちのお役に立ちたいと思っていますし、すでにそのようなご提案をいくつもし、興味を持ってくださっている物流会社が出てきていることも事実です。また、このような活動を通じて冷凍冷蔵のバリューチェーンで働かれている方々が正当な対価を受け取れるスキームにしていきたいと思っています。

草原  入社して7年目、冷凍冷蔵物流施設に携わって5年目になります。これまで、入居企業にお借り頂くことを前提に冷凍冷蔵物流施設を実装した物件はありましたが、入居企業が決まっていない状況で物件を建てるマルチ物件として冷凍冷蔵物流施設を開発することに感慨深いものがあります。また、冷凍冷蔵物流施設開発の意義として、フードロスの問題の解決にも繋がると考えています。限りある資源を有効活用できる物流施設開発に携わる喜びを感じています。

――  ありがとうございます。ところでこの新たな物件に何か新しいネーミングを考えていますか。

  会社として考えている最中で、まだ決まっていません。キーワードを設定し、それを中心としたネーミングにしたいですね

<左から伊藤 晋 シニアマネージャー、駒 俊志 グループリーダー、草原 洵也 シニアマネージャー>
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■プロフィール
日本GLP
営業開発部 チームリーダー
駒 俊志(こま としゆき)
2006年4月 大手不動産会社の関連会社入社
2012年9月 日本GLPへ入社
2017年4月 食品グループ発足、リーダーとなる。
2021年1月 ドライチームのグループリーダーも兼任

日本GLP
営業開発部 シニアマネージャー
草原 洵也(くさはら じゅんや)
2006年4月 大手証券会社入社
2012年3月 大手3PL会社へ入社
2015年10月 日本GLPへ入社
2017年4月 食品グループに配属

日本GLP
営業開発部 シニアマネージャー
伊藤 晋(いとう すすむ)
2006年4月 大手コンサルティングファーム入社
2011年4月 大手総合商社へ入社
2012年7月 政府系投資ファンドへ入社
2017年11月 日本GLPへ入社
2022年1月 新規事業、M&Aチームを経て営業企画グループへ配属

■物件概要
2023年3月23日発表
名称:GLP神戸住吉浜
住所:兵庫県神戸市東灘区住吉浜町19-24
アクセス:住吉浜ICより約1.3km、魚崎ICより約2.5km
六甲アイランド線 南魚崎より約1.5km
敷地面積:2万1195m2(6411.49坪)
延床面積:4万4827m2(1万3560.17坪)
構造・階数:鉄骨造/耐火構造 地上5階 1、3階アクセス(ランプ)
収容能力:5万2660t(C&F級:5万2660t)
天井高:有効高5.5m
床荷重:1.5t/m2
温度帯:-25℃から10℃(荷捌きスペースは5℃)
備考:自然冷媒採用、最小賃貸面積約1200坪~
竣工:2024年11月予定

2022年10月17日発表
名称:(仮称)六甲プロジェクト
住所:兵庫県神戸市東灘区向洋町東3丁目6-2
アクセス:六甲アイランド北ICより約1.1km
六甲アイランド線 六甲アイランド北口駅より約1.1km
敷地面積:約5000.0m2(約1512.50坪)
延床面積:約1万100m2(約3055.25坪)
構造・階数:耐震鉄骨鉄筋コンクリート造 地上4階 1階バース
天井高:1階5.5m、2-4階6.0m
床荷重:2.0t/m2
温度帯:-25℃(荷捌きスペースは5℃)
備考:自然冷媒採用
竣工:2024年3月予定

2022年4月6日発表
名称:GLP常総II
所在地:茨城県常総市三坂新田町2004
敷地面積:4万1158.16m2(約1万2450坪)
延床面積:3万6793.26m2(約1万1129坪)
構造:地上2階建て、耐震S造
着工:2021年2月
竣工:2022年3月
認証取得:CASBEE

(取材・執筆:山内公雄 photo:立花 慎一朗)

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