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日本GLPが新しい標準を作る
全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

2023年03月31日/物流最前線

日本GLPで冷蔵設備を用意した主な物件
<GLP ALFALINK相模原1>
20220801glp5 - 物流最前線/日本GLPが新しい標準を作る全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

<GLP ALFALINK流山8>
20220801glp6 - 物流最前線/日本GLPが新しい標準を作る全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

<GLP ALFALINK流山5&6 右側が5で左側が6>
20230331glpr1 520x389 - 物流最前線/日本GLPが新しい標準を作る全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

リスク多い冷凍冷蔵倉庫、標準化へ

――  さて、マルチテナント型での冷凍冷蔵倉庫の難しさとは。

  この5年間、営業活動する中で様々な話を聞いてきましたが、一番多かったのが、立地の問題ですね。食品を扱う企業ほとんどに当てはまりますが、やはり人口の密集地、消費地に近い場所を希望されます。店舗に配送するため、近ければ配送コストが削減でき、それだけ有利です。離れていても、東京なら16号沿線までを希望されます。また、特に冷凍倉庫は集積地があり、再保管や倉庫間連携の関係で、その集積地近くを希望されることが多くあります。加えて肉等の冷凍輸入食材については検疫があり、湾岸周辺が必須となります。しかし、湾岸地域にまとまった土地が出ることはまれですし、私たちも長年色々と探した結果、神戸港周辺の冷凍冷蔵倉庫適地で土地が見つかったことで、今回の「GLP神戸住吉浜」「(仮称)六甲プロジェクト」が、実現しました。今後も冷凍冷蔵倉庫適地といったものは、希少な存在だと思っています。

<伊藤 晋 シニアマネージャー>
20220801glp8 - 物流最前線/日本GLPが新しい標準を作る全館冷凍冷蔵マルチ型物流施設

伊藤  近年、物流適地と呼ばれる立地は売主の立場で見ると「まとめて大きな面積を引き取ってくれる」「良い値段で買い取ってくれる」という観点からデベロッパーへの持ち込みや限定的な入札になることが多いと認識しています。つまり、これは物流会社が良い土地の確保という観点で見た時に非常に困難な局面になりつつあるのだろうと想像しています。そういう意味では物流会社と我々のようなデベロッパーが組む意味は大いにあると思っています。

――  その適地が関西で見つかったことが、今回の「GLP神戸住吉浜」や「(仮称)六甲プロジェクト」の冷凍冷蔵物流施設開発プロジェクトにつながったわけですね。東京や福岡での展開は。

  当然、東京での要望は強いものがあります。常に注視して適地を探しています。また、福岡についても湾岸エリアを検討しましたが、市場規模に対して既存の冷凍倉庫が多いことから現時点では静観している状況です。「GLP神戸住吉浜」「(仮称)六甲プロジェクト」が成功すれば、今後もう少し各地域の内陸の方にも目を向けていこうと思っています。

――  土地については何ともしがたいですね。そのほかには、

  やはりデベロッパーの提示する条件と顧客の希望する条件に差があることですね。常温と違い、冷凍冷蔵倉庫の適地は土地代も高く、さらに、庫内の設備にかける投資も大きくなります。一般的に、常温に比べて2倍の投資が必要になります。かといって、2倍の賃料がそのまま受け入れられることは少なく、そのため、多くのデベロッパーがこれまで手を出しにくく、リスクが大きいと感じていたと思います。特に冷凍倉庫は、常温のマルチテナント型物流施設に後付けでできることはできますが、後付けにした場合、仕様面で完璧ではありません。そのため、当初から冷凍冷蔵物流施設専用の設計が必要という結論に至りました

――  以前からよく聞かれたのが、マルチテナント型の冷凍冷蔵物流施設は、レイアウト等で難しいとのことですが。

  そうですね。庫内のレイアウト、運営の仕方等、それこそ会社の数ほどそれぞれに違いがあります。様々な冷凍冷蔵倉庫を見てきましたが、ほとんどが独自のノウハウで作られています。荷物によって違いがあり、保管型の冷凍倉庫や輸配送を中心とした流通型倉庫の違いも大きくありますし、世に広くでていないノウハウもあると思います。

――  3温度帯での展開については。

  当初は常温も含めた3温度帯も考えていましたが、建物プランを練り込んだ結果、全館冷凍冷蔵に特化することで様々なメリットも生まれ、インパクトの強い物件を提供できると今は考えています。常温倉庫は探せばどこかにはあり、珍しくもない一方で、冷凍冷蔵倉庫は本当に限られており、冷凍冷蔵倉庫の適地であれば挑戦してみようという考えです。

――  電気に関しては、相当の電力を使うのではないですか。

  自然冷媒にすると工事費はかかりますが、電気代は安くなり、省エネになると考えていますし、防熱も当初より専用に設計していますので性能も良いと考えています。また、屋上へ設置した太陽光パネルで発電した電気の館内利用を検討しており、入居企業への還元も考えていますので、環境にも配慮しています。

――  入居企業が契約を終了して出た後は、レイアウト等の変更やメンテナンス、いわゆる原状回復工事等もあり大変なのではないですか。次に入居する企業がすぐに現れる確証もありませんよね。例えば契約年数は長めに設定しているのですか。

  当然、そのような不安はありますが、そのために徹底して最大公約数的なレイアウト設計を施して、対応していきます。さらに、弊社で用意した冷凍冷蔵設備に関する原状回復工事費は無しとしています。ここが大きなリスクですので、他社デベロッパーさんはなかなか踏み込めない部分だと思いますが、最大公約数的な取組がすなわち標準化ということですし、常温のマルチテナント型物流施設も当初同様の考えからスタートし、現在の標準になっているわけですから、このリスクはいずれ解消されると思っています。ですので、5年程度で、常温とほぼ同様の契約期間にしたいと思っています。まずは、冷凍冷蔵マルチ型物流施設の標準モデルを確立していければと考えています。

――  リスクを負うということですね。

伊藤  賃貸で入居するというのは、5年なら5年で退居することもできるというオプションを入居企業側に持ってもらうということだと思っています。一般的に荷主とテナントの契約は短期間であり、物流の重心点も日々変化する中で、一つの土地に数十年コミットしてビジネスを行うという事自体がテナントにとってのリスクではないかと思っています。もちろん、弊社としては長期の契約をさせて頂くに越したことはないと思っていますが、一方で、長期で借りて頂くということは、考え方によってはそのオプションを入居企業に提供できていないことにもなるのかなと思っています。マルチテナント型の利点を最大限顧客に享受して頂くためには契約期間の短期化も必要なのでは?という考えのもと社内で様々な協議をしています。

次>顧客の反応良く自信に

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