共同配送センターの立地地点の特徴
前回(第18回)は、「共同配送センターと着地の位置が決まっているとき」に、「発地の位置の違いによる走行距離の変化」を考えてみた。
今回(第19回)では、新たに共同配送センターを設ける場合を想定して、「発地と着地の位置が決まっているとき」に、「共同配送センターの位置の違いによる走行距離の変化」について考えてみる。
百貨店やスーパーへの商品の配送などの場合、発地となる商品仕入先の工場や倉庫の分布と、着地となる店舗の位置が決まっており、しかも商品の品揃えと店舗別の仕分けという点で、共同配送センターを設置して利用せざるを得ないことが多い。
共同配送センターでは、都心に近いほど地価や賃貸費用も高いが輸送費は低くなり、逆に郊外に行くほど地価や賃貸費用は安いが輸送費がかかることが多い。このため、配送先の集中している都心から離れて、地価も安く労働力も確保できる郊外に立地することが多い。
よって、郊外に立地した共同配送センターを利用することにより、総走行距離が増加することは多い。
共同配送センターの立地地点と総走行距離の関係(図1を参照)
共同配送センターが、都市の中心部から離れた郊外に立地することは仕方のない面がある。また、品揃えや到着台数の削減のために共同配送センターを利用せざるを得ないことは多い。だからこそ、直送に比較して、共同配送による総走行距離(複数の発地から着地までの走行距離の合計)の増減について、実態を考えておく必要があるだろう。
そこで今回(第19回)の補論では、複数の発地が平面的に分布して着地(配送先)に届けるような場合を例として、東西南北の4か所の発地から、郊外の共同配送センターに寄って着地(配送先)に向かう場合を考えてみることにする。

【補論】:数字とグラフで読み解く「物流の課題」
(その6) 共同配送センターの位置と総走行距離
中央大学経済学部教授 小杉のぶ子
発着地と共同配送センターの位置
都市内における共同配送において、平面的に分布している発地を出発し、共同配送センターに寄ってから着地(配送先)に向かう場合は、着地での到着台数が減っても、共同配送センターの立地により総走行距離は大きく増加することになる。
そこで、発着地と共同配送センターが以下の3つの条件を満たすときに、直送の場合と比べて、総走行距離がどの程度増加するかについて計算してみる(図2参照)。
(条件1)発地は4か所とし、着地(配送先)は1か所とする。
(条件2)発地は、着地(配送先)を中心とする半径20kmの円周上に東西南北の位置にあるとする。
(条件3)共同配送センターは、着地(配送先)を中心とする20kmの円周上で、南東方向(北方向を0度としたとき時計回りで135度の方向)にあるとする。
直送の総走行距離の算出(図2の左の破線を参照)
条件2より、各発地は着地を中心とする半径20kmの円周上に位置することから、直送の場合、4か所の発地からの総走行距離は80km(=20km×4)となる。
共同配送の総走行距離の算出(図2の左の実線・二重線を参照)
4つの発地から着地(配送先)までの総走行距離は、(1)「各発地から共同配送センターまでの距離」と(2)「共同配送センターから着地(配送先)までの距離」の合計になる。
(1) 各発地から共同配送センターまでの距離
発地と共同配送センターの間の距離については、三角関数の余弦定理(三角形の2辺の長さとその間の角の大きさが分かっている場合に、残りの辺の長さを求める公式)を用いることで、算出できる。
たとえば、発地1から共同配送センターまでの距離は、「発地1から着地までの距離(20km)」と「共同配送センターから着地までの距離(20km)」と「これら2直線のつくる角の大きさ(135度)」をもとに、余弦定理を用いて求めることができる。発地2、発地3、発地4についても同様の計算を行い、各発地から共同配送センターまでの走行距離を求めることができる。4か所の発地から共同配送センターまでの距離を合計すると、約104.5kmとなる。
(2) 共同配送センターから着地までの距離
条件3より、共同配送センターは円周上に位置することから、共同配送センターから着地までの走行距離は20kmとなる。このため、共同配送センターから着地まで、4か所の発地からの貨物を1台の車両で輸送できるとすれば、この区間の走行距離は20kmとなる。
上記の(1)、(2)で求めた走行距離を合計すると、発地から着地までの総走行距離が求まり、その値は約124.5kmとなる。これは、直送する場合(80km)の1.56倍である。
共同配送センターの位置による総走行距離の変化(図2の右を参照)
次に、共同配送センターが着地(配送先)から南東方向10kmと30kmにある場合について考える。ここで、共同配送センターから着地までは、4か所からの貨物を1台の車両で輸送できると仮定する。上記と同様の方法で計算すると、発地から着地までの総走行距離は、共同配送センターと着地間の距離が10kmの場合は約95.4km(直送の1.19倍)、30kmの場合は約165.2km(直送の2.07倍)となった。これをグラフで表したものが、図3の実線となる。
共同配送センターからの配送車両による総走行距離の変化(図3、表1を参照)
共同配送センターから着地(配送先)まで貨物を輸送する際に、1台の車両で運びきれない場合には、台数を増やすことになる。このとき、車両が1台増えるごとに、共同配送センターから着地までの距離の分だけ走行距離も増加すると考えられる。
具体的には、共同配送センターが着地から20kmの位置にあるとしたとき、1台で輸送できるとすればこの区間の走行距離は20kmであるが、2台で輸送するならば40km、4台ならば80kmとなる。この値を、4つの発地から共同配送センターまでの距離の合計値に加えて計算した結果が、表1における共同配送の総走行距離であり、それらをグラフで表したものが図3の破線である。
<図3 平面型共同配送での共同配送センターの位置と総走行距離>
連載 物流の読解術 第18回:発地の位置と平面型共同配送-物流共同化を考える(6)-