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連載 物流の読解術 第14回:共同輸送の種類と特徴-物流共同化を考える(2)-

2024年05月16日/コラム

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共同輸送の特徴

輸送とは、原則として中長距離の幹線輸送(1対1)を指すことが多い。このため、共同輸送も中長距離の輸送が対象となる。
共同輸送は複数の荷主の貨物を積合せることが多いため、基本的に一般貨物運送事業における運行になる。

共同輸送の4つの種類

共同輸送の代表的な例には、4つの種類がある(図1)
第1は、同一方面での積合せによる共同輸送である。これにより、積載率の向上と車両数の削減が期待できる。たとえば、東京から大阪に貨物を運びたい複数の企業(A社とB社)が、それぞれ1社の貨物では満載にならないときに、運送会社が2社の貨物を積合せるような例である。

第2は、輸送途中で積合せ貨物を積込む共同輸送である。第1の共同輸送の変形として、2社の出発地が異なるとき、運行経路の途中で積合せることである。たとえば、大阪に向けて東京を出発するとき満載にならない(C社)としても、運行経路の途中の静岡などで空いたスペースに他社の貨物(D社)を積合せるような例である。

第3は、往復の組合せによる共同輸送である。これにより、同一車両を往復で利用することにより、片荷の解消と積載率の向上を期待できる。たとえば、大阪の百貨店(E社、大阪から東京に送る荷物の多い)と、東京の百貨店(F社、東京から大阪に送る荷物の多い)が提携し、輸送事業者が貨物を往復で確保することで積載率の向上を目指すものである。販売ではライバル(競争相手)であるが、輸送はパートナー(協調仲間)ということになる。なお、似たような例で帰り荷の貨物を探すマッチングシステムがあるが、これは共同の相手と定常的な業務として行っているものではないことから、共同輸送に含めないことが多い。

第4は、車両と貨物は発地から着地まで移動するが、荷主の了解のもとで輸送途中に2社(G社とH社)の運転手が交代するものである。複数の事業者が輸送を引き継いでいく連絡運輸の一種であるが、最近では中継輸送(リレー輸送)と言われることもある。上記の第3の事例の発展形として、時間外労働時間の削減や、運転手が自宅に帰る勤務形態の確保ために考えられたものである。このために、高速道路などでも、中継施設を設けている例がある。

共同輸送で考えておくべきメリットとデメリット

共同輸送には、メリットもあれば、デメリットもある。

メリットには、積載率の向上、貨物車台数の削減などがあり、これにより物流コストの削減にもつながる。もちろん常に満載で出発できるならば、図1における(1)型や(2)型の共同輸送は必要ないし、台数も削減できないはずであるが、常に満載とは限らないからこそ、共同輸送の価値がある。

デメリットとしては、共同配送をするための積合せ作業や迂回などにより、単独での運行よりも時間がかかることがある。このことは、物流の2024年問題と言われている労働時間の制限とともに、輸送距離にも影響を与えることに注意しておく必要がある。

図1 共同輸送の代表例>
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【補論】:数字とグラフで読み解く「物流の課題」
(その2) 共同輸送と労働時間の関係​

中央大学経済学部教授 小杉のぶ子​

物流の2024年問題で、運転手の労働時間の規制が厳しくなっている。このため、共同輸送を導入すると荷役時間が増える分だけ走行可能な時間が減り、輸送距離が短くなる可能性がある。そこで、共同輸送と労働時間の関係を考えてみることにする。

貨物車で貨物を輸送するときの作業には、貨物の積込み(発地での荷役)、貨物車の走行(輸送)と荷おろし(着地での荷役)がある。荷役作業も一人のドライバーが行うとすると、ドライバーの労働時間は、「積込み時間」、「走行時間」、「荷おろし時間」の合計ということになる。

これを式で表すと以下のようになる。
労働時間の合計 = X(積込み時間)+Y(走行時間)+Z(荷おろし時間)
……( 式1 )

共同輸送で、発地から途中1か所で貨物を積込む場合は、新たに立ち寄り時間が発生する。これを式で表すと次のようになる。
労働時間の合計 = X1(積込)+Y1(幹線走行)+W2(立寄往復走行)+X2(積込)+Y2(幹線走行)+ Z1+Z2(荷おろし)
……( 式2 )

ここで、
X1:発地での「積込み時間」
Y1:発地から途中積込み地点付近までの「幹線走行時間」
W2:幹線から途中積込み地点までの「立ち寄り往復走行時間」
X2:途中の積込み地点での「積込み時間」
Y2:途中積込み地点付近の幹線から着地までの「幹線走行時間」
Z1,Z2:2か所で積込んだ貨物の「荷おろし時間」
を表すとする(図2参照)。

図2 輸送途中で積込む共同輸送(図1の(2)型)>
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これをグラフで表すと、図3のようになる。

図3 共同輸送における労働時間と距離の関係(輸送途中で積込む場合)>
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図3からわかるように、共同輸送において、発地から着地までを途中での積込みも含めて一人のドライバーで担当するときには、労働時間に注意が必要である。すなわち、輸送途中に貨物を追加して積込む場合には、立ち寄り場所までの往復の走行時間と積込み時間が加算されることになる。よって、ドライバーの労働時間の制限から走行できる時間も減り、これにともない輸送可能な距離も短くなる。このことは、出発地近辺で共同輸送を行うために別の場所に立ち寄って貨物を積込む場合でも同じである。

もしも、共同輸送で複数箇所に立ち寄って貨物を積込むとなると、上記の X,Y,Z,Wの4つの時間が繰り返されることになる。このため、輸送できる距離もさらに短くなる。すなわち、
労働時間の合計 = X1+Y1+Z1 +(W2+X2+Y2+Z2)+(W3+X3+Y3+Z3)+ ・・・
…… ( 式3 )
と表される。共同輸送を行わない場合には、式3において(   )でくくった部分がすべてなくなるため、式1と同じになる。

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