共同配送における「直線型配送」と「平面型配送」
前回(17回)では、共同配送のうち「直線型配送」として、輸送途中で荷揃えや小分けが不要の場合について、「直送」するか「共同配送として輸送を委託」するか、を考えてみた。
「平面型配送」での共同配送では、東西南北など各方面から一か所に共同配送を行う例も多い。たとえば、デパートやスーパーなど大規模商業施設で導入している共同配送では、各方面に存在する複数の納入業者が、共同配送センターに納品して品揃えなどをしてから、配送先(着地)に届けている。
共同配送によって期待される効果
共同配送によって期待される効果には、積載率の向上、到着台数の削減、総走行距離の短縮などが挙げられている。しかし、品揃えなどが必要であれば走行距離は多少長くなっても共同配送センターを経由することもあるように、共同配送では多くのトレードオフが存在するので、一概に一つの指標だけで共同配送の優劣を決めることは避けるべきである。
共同配送の代表的な効果として、総走行距離の削減が取り上げられることが多い。しかし、貨物車の総走行距離は三者(発地、共同配送センター、着地)の位置関係により、大きく変わることになる。
このため今回(第18回)は、「共同配送センターと着地の位置が決まっているとき」に、「発地の位置の違いによる走行距離の変化」を考えてみることにする。
また次回(第19回)では、新たに共同配送センターを設ける場合を想定して、「発地と着地の位置が決まっているとき」に、「共同配送センターの位置の違いによる走行距離の変化」について考えてみる。
平面型共同配送での発地の位置と走行距離
平面型の共同配送では、発地の位置が重要な場合が多い。
たとえば視覚的にも理解できるが、「図1の共同配送(理想形)」では、発地と着地の中間に共同配送センターがあるので、前回(第17回)で示した「直線型共同配送」に近い形であり極めて効率的である。
一方で、「図1の共同配送(実態)」において発地が着地に近い場合は、共同配送センターに行くことで遠回りすることになる。もちろん、共同配送センターでの流通加工や品揃えなどの役割があるときには、単に走行距離が長いからといって非効率と決めつけることはできないが、走行距離が増加することは多い。
このように平面型共同配送は、売り場単位に商品を揃えることができ、着地での搬送も効率的になる。ただし、直送に比べれば、共同配送センターでの荷役回数は増えて、発地の位置によっては、総走行距離も増える場合もある。
総走行距離による直送と共同配送の比較の重要性
共同配送の効果を考えるとき、着地(配送先)での到着台数の削減や、貨物車の車両数の削減などを始め、「共同配送センター→着地」に着目することが多い。もちろん、共同配送センターからこの部分に限れば、効果があることも多い。
しかし、共同配送による環境負荷削減への効果を明らかにするのであれば、「発地→共同配送センター→着地」を通じて総走行距離の変化を検討すべきだろう。
そこで今回(18回)の補論では、共同配送センターと着地(配送先)の位置が変わらないと考えて、発地の位置の違いによる「直送(発地→着地)と共同配送(発地→共同配送センター→着地)の総走行距離」を比較してみる。
【補論】:数字とグラフで読み解く「物流の課題」
(その5) 発地の位置と共同配送の走行距離
中央大学経済学部教授 小杉のぶ子
発着地と共同配送センターの位置の設定
共同配送における貨物車の走行距離は、貨物の発着地と共同配送センターの位置によって変わる。ここでは問題を単純化して、着地と共同配送センターの位置を固定し、4か所の発地(A~D)が図2の右(共同配送)のような場合を考える。
これら4か所の発地の特徴をそれぞれみていくと、Aは、共同配送センターが発地と着地の間にある場合である。Bは、発地と着地から共同配送センターまでの距離が等しい場合である。Cは、発着地間と共同配送センターから着地までの距離が等しい場合である。Dは、共同配送センターが着地の反対側にある場合である。
この4つの発地(A~D)について、直送と共同配送の走行距離を比較する。
<図2 発地別(A~D)の直送と共同配送の走行距離の比較
(着地と共同配送センターの位置は固定)>
直送の場合の、4か所の発地(A~D)からの走行距離
直送(発地→着地)の場合、Aからの走行距離は20km、Bからは、Cからは10km、Dからは10kmとなる(図2の左を参照)。
共同配送の場合の、4か所の発地(A~D)からの走行距離
共同配送の場合は、走行距離を「発地→共同配送センター」と「共同配送センター→着地」に分けて考える。
「発地→共同配送センター」の走行距離は、発地がAのとき10km、発地がBのとき10km、発地がCのとき、発地がDのとき20kmとなる(図2の右を参照)。
「共同配送センター→着地」の走行距離は、貨物車台数の削減度合いによって変化する。すなわち、発地A~Dから共同配送センターまで4台の貨物車で運んでいた貨物を1台の車両にまとめることができるのであれば、共同配送センターから着地までの総走行距離は10kmとなる。1台の車両では貨物を積みきれずに2台の車両で運ぶのであれば20km、4台分の貨物をそのまま4台の車両で運ぶのであれば40kmとなる。
この結果、共同配送による総走行距離は、64km~94kmとなり、直送の場合の総走行距離と比べると1.19~1.74倍となる((図3、表1を参照)。
連載 物流の読解術 第17回:直線型配送における共同配送-物流共同化を考える(5)-