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物流の読解術 第12回:「配送料無料」は、本当ですか?

2024年03月26日/コラム

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物流サービスとしての「配送料無料」問題

テレビを見ていると、「配送料無料」というネット通販の広告宣伝が目に入ってくる。もちろん、筆者を含め「配送料がタダならば、この商品はお買い得」と感じてしまうことは、ごく自然なことと思う。しかし、本当に「お買い得」なのだろうか。

そこで「物流サービスを考える」の最後として、「配送料無料問題」を取り上げることにする。

そして今回は、「数字とグラフで読み解く『物流の課題』」として、補論を数学の先生にお願いすることにする。

「配送料無料」は、公正ですか?

諸外国では、家具や電気製品を店舗で購入すると、「商品価格と配送料は別」であり、自宅までの配送料を別途請求されることが多い。日本では、企業間の取引において「店着価格制(商品の納入価格に配送費を含む制度)」が一般的である。また、消費者が家具や冷蔵庫などを店舗で購入すると、自宅まで配達してくれる。しかし、物流業者に支払う配送費用が0円のはずはないから、「配送料は販売価格に含まれている」と考えるべきだろう。

同じように、ネット通販における「配送料無料」という謳い文句も、実態は「配送料込みの販売価格(販売価格=商品価格+配送料)」ということになる。そう考えてみると、「配送料無料」は公正なのだろうか、「配送料込み」が正しいのではないか、と心配になってしまう。

「配送料均一」は、公平ですか?

ネット通販での「距離にかかわらず『配送料無料』」を、ここでは「配送料込みの販売価格」と仮定して考えてみることにする。

いま、販売価格1万円のうち、商品価格が9000円で、配送料が1000円と仮定する。このとき、商品を東京から発送するとすれば、販売価格に含まれる配送料(1000円)は、東京から東京でも、東京から北海道や沖縄でも同じ(均一)ということになる。

もちろん、全国どこでも均一料金という考え方は、ユニバーサルサービス(社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受けられるサービス)として意義がある。この例として、葉書や手紙の全国均一料金がある。

しかし、「遠距離ほど配送料金が高い」ことに慣れていると、ネット通販の販売価格において、「配送料が均一」とは公平なのだろうか、と考え込んでしまう。

配達と持ち帰りの「差額」は、適正ですか?

最近、家電量販店などで「持ち帰り2000円引き」などの表示を見かけるようになった。これは「配送料込みの販売価格から、持ち帰りの場合には配送料分を差し引く」という意味であり、配送料を明示している点で好感が持てる。しかし、割引額の大小によっては、疑問がわくこともある。

また、フードデリバリーのなかには、「販売価格が2800円だが、持ち帰り半額の商品」もある。商取引である以上、購入者が納得していれば良いとする考え方もあるが、一方では、半額の意味するところが「配達費、1400円」となるならば、金額が適正か否か気になってしまう。

「サービスの正当な評価」と「配送料の表示の是正」

物流のサービスを考えるとき、「適正な価格の設定」は、顧客の信頼を得るために最も重要な項目の一つである。とすれば、曖昧な「配送料無料」を再考し、「有料の業務的サービス(輸配送、保管など)」と「無料の犠牲的サービス(割引、おまけなど)」を区別しておくべきだろう。

「配送料無料」や「持ち帰り半額」という表現は、「犠牲的サービス(割引、おまけ)という『衣』」をまとっているように見えるが、その下には「消費者を誘い込む『鎧』」が隠されているように感じている。

20240325kuser - 物流の読解術 第12回:「配送料無料」は、本当ですか?

【補論】:数字とグラフで読み解く「物流の課題」​
(その1)「配送料無料」と「持ち帰り半額」​

中央大学経済学部教授 小杉のぶ子​

(1) 「配送料無料」による地域格差の問題
一般に輸配送の料金は、貨物の大きさや重さが同じであれば、距離が長いほど高くなる。この原則にしたがうと、たとえば東京からの配送料が東京向けで 800 円、北海道や沖縄向けで 1200 円というような料金差になる。配送料無料は、販売価格に配送料が含まれていると考えれば、全国で同じ料金ということになる。仮に、配送料が全国均一で 1000 円であるとする。この場合、東京の人は配送料を 200 円多く支払い、北海道の人は 200 円少なく支払うことになる。とすれば、「近距離の購入者ほど割高な配送料」であり、「遠距離の購入者ほど割安な配送料」ということになりかねない(表1参照)。なお、これらをグラフで示したものが図 1 である。

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図1 配送料無料(配送料均一)と配送料距離別の販売価格の比較
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(2) 「持ち帰り半額」による差額の問題
ピザのデリバリーなどにおいて、「販売価格1枚2800円の商品が、持ち帰りで半額」という表示がある。これは、「販売価格2800円の内訳が、商品価格1400円と配達費1400円」であることを意味している。このとき、2枚をデリバリーで注文すれば販売価格5600円(商品価格2800円、配達費2800円)、4枚では販売価格11200円(商品価格5600円、配達費5600円)となる。
いま、バイクを使って1回の配達で4枚まで運べるとすれば、注文数4枚までの配達費は1400円としてもよいと思われる。しかし実際は、2枚で配達費2800円、4枚で配達費5600円となっている。
ここで
① 配達費込(すなわち、販売価格 2800円/枚 )の場合
② 配達費別(すなわち、商品価格 1400円/枚 に1回分の配達費 1400円を加えた価格)の場合
③ 持ち帰り(すなわち、商品価格 1400円/枚 のみ)の場合
における支払い額を示したものが表2となる。
なお、店によっては配達の際に別途250円を上乗せしている場合もある。

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上記の ①②③の場合について数式で表すと、最大4枚までの支払額は以下のようになる。

① デリバリー(配達費込):
y=(a+b) x=(1400+1400) x=2800 x
② デリバリー(配達費別):
y=ax+c= 1400 x+1400
③ 持ち帰り:
y=ax= 1400 x

ここで
y:支払い額(円)
x:商品の個数(枚) ( x=1,2,3,4 )
a:1枚あたりの商品単価(円/枚)= 1400円/枚
b:1枚あたりの配達費(円/枚) = 1400円/枚
c:1回あたりの配達費(円/回) = 1400円/回
である。これらの式をグラフに表すと図2のとおりである。

図2 フードデリバリーにおける支払額(配達費込、配達費別、持ち帰り)の比較
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中央大学経済学部教授 小杉のぶ子
お茶の水女子大学理学部数学科卒業。日本銀行での勤務を経て、お茶の水女子大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。
お茶の水女子大学助手、東京海洋大学准教授を経て、2013年より現職。
著書に「経済学部生のための数学 - 高校数学から偏微分まで - 」、「はじめての確率論」がある。

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