クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は9月11日、「物流施設 2025年上半期レポート」を発行した。
それによると、募集賃料は主に建設費の高騰によるコスト増を反映し上昇基調。実際の契約では、テナント誘致を目的としたフリーレント(賃料免除期間)の提供が増加している。特に供給過多のサブマーケットがこの傾向を牽引。結果、実質賃料水準は下落傾向にあり、表面賃料との乖離が拡大している。
一方で、MFLP横浜新子安、MFLPつくばみらい、GLP八千代V、Landport横浜杉田、ESR川西DC2など、満室竣工を迎えた物件や空室を解消した施設も散見され、市場が完全に停滞しているとは言い難く、市場全体で緩やかな需要基調が継続している。テナント企業にとっては、人材確保および定着率の向上が依然として重要課題であり、施設の機能性や利便性が拠点選定における重要な評価軸となっている。
既存物件においては、建設費や維持管理・修繕費の上昇を背景に、賃料改定(増額)に踏み切るケースも見られる。テナント側も、昨今の物価上昇を踏まえ一定の理解を示すものの、物流量の減少による荷動きの鈍化、コスト意識の高まり、および一部サブマーケットにおける高い空室率が影響し、賃料改定に関する合意は個別案件毎に判断されており、全体としては限定的な進展に留まっている。
なお、2025年6月時点での貨物輸送量は、輸送トン数ベースで、前年同月比7.1%減、輸送トンキロベースで0.1%減を記録した。NX総研の荷動き指数は2023年第1四半期以降、9四半期連続で2桁のマイナスを記録。2025年第3四半期の見通しも-11ポイントと、前期からさらに悪化する見通しとなっている。
輸送能力は慢性的な人手不足により制限され、物価上昇による個人消費の冷え込み、建設費高騰に伴う新設住宅着工数や公共工事の減少が重なり、物流需要の回復を阻んでいる。さらに、企業のコスト負担も増しており、産業別売上高に対する物流費は過去12か月で全体的に上昇、特に食料飲料系卸売分野では2023年の5.7%から2024年には9.1%へと増加。食品(要冷・常温)分野では、電気料金・エネルギー価格高騰による倉庫運営費値上げの要請に応えたとの回答もあり、裏を返せば、物流事業者からの価格転嫁が一定程度進んだ結果といえる。
日米間で合意された「トランプ関税」の影響は、特に自動車関連、機械関連、鉄鋼をはじめとして、現時点では未知数となっている。
■レポート
MARKETBEAT日本 物流施設 2025年上半期
物流最前線/総合力を存分に発揮 大和ハウス工業の物流施設開発の肝