物流最前線/ZMP 谷口 恒社長(トップインタビュー)

台車は年間100万台の出荷、自動化で作業効率は格段に上がる

―― 「CarriRo」の開発はどのような経緯で。

谷口 きっかけは、会社のすぐ横の道で宅配業者の方が2台の台車を押しており、かなり急な坂だったもので苦労されている場面を見たことから閃いたものです。この台車を自動化できれば、作業者も楽になるし、効率性も上がると思いました。調べてみると、手押し台車は年間100万台も生産されており、単純に100万人の方が利用されている。その1%でも自動化できれば1万人の作業が楽になり、効率性も上がると考えました。人手不足のおり、インフラを変えずに、すぐに使えるという手軽さをコンセプトに、2014年から開発したわけです。

―― 開発にあたって社内の反応は。

谷口 実際、戸惑った様子でした。もともと、2足歩行ロボットの開発で集まってきた技術者ですから、「今更なんで台車」、という気持ちだったと思います。初めてのことですから、やはり不安もあり保守的にもなります。販売ルートもわかりませんし、物流業界自体もほとんど理解していませんでしたからね。

―― それまで、台車の自動化といったものはなかったのですか。

谷口 アシスト台車は数社が若干開発していましたが、いずれも台車の上に大きな鉛のバッテリーとモーターを積んでおり、まさにバッテリーとモーターを運ぶような台車でした。そこで、バッテリーとモーターを極力小さくし、見かけ上は一般の台車の形状と同じくらいにした台車の開発を目指しました。まさに、ソニーがウォークマンやパスポートサイズのハンディカムの開発をやったような感じでしたね。

―― 開発は順調でしたか。

谷口 見かけ上は台車と同様の形状ですから、小型化するのは大変です。その後、珍しく物流ロボットを開発したいという物流関係にいた人物が入社することになり、責任者として担当してもらいました。物流のロボットをやりたいというのは以前には考えられなかったですね。開発は1からスタートです。当初はできっこないという意見も多かったのですが、どうにかバッテリーとモーターとコンピューターを台車の中に入れ込むことができました。

―― 開発のポイントで留意した点は。

谷口 やはり安全面です。例えば、バッテリーですが、ニュースでも度々報道されたようにリチウムイオン電池は衝撃に弱く、燃えやすいという特徴があります。台車は大切な荷物を扱うものですし、倉庫内とか工場内での使用が前提ですから、燃えやすいでは話になりません。そこで、採用したのが、日産リーフで使われていたリチウムイオン電池でした。これは、衝撃に強く、衝突しても燃えない、爆発しないというもので、パッケージとして購入し、採用しました。モーターも日本製のものを採用し、内部基盤の設計はZMPが行いました。

―― 移動方式は。

谷口 床に貼ったランドマークを認識して移動します。倉庫等ではこの方式の方が自由度があり、ランドマークの意味付けをタブレットを用いて変えるだけでレイアウト変更後でもすぐに対応できます。一方、ティーチングで空間を覚えこませるのは、結構時間もかかり、レイアウト変更時の対応もすぐにはできません。

―― デザイン面でも新しい発想です。

谷口 台車の色は、一般的には緑やグレーですが、コーポレートカラーの赤を採用しました。赤にすると目立ちますし、職場を明るくすることにも繋がります。台車の部分には、丸いデザインをあしらっていますが、これは東京藝術大学の長浜教授と一緒にデザインしたものです。目となるステレオカメラの光ビーコンの部分は人の動きを感知する部分ですので、生き物の目のようなデザインを施しました。

<ZMP 谷口 恒 社長>
20181022zmp6 500x334 - 物流最前線/ZMP 谷口 恒社長(トップインタビュー)

<「CarriRo Delivery」>
20181022zmp7 500x334 - 物流最前線/ZMP 谷口 恒社長(トップインタビュー)

<「CarriRo Delivery」>
20181022zmp8 500x333 - 物流最前線/ZMP 谷口 恒社長(トップインタビュー)

再配達はオンデマンドで解決すべき、宅配ロボットは新しいサービスの種になる

―― 宅配ロボット「Cariro Delivery」の開発の経緯は。

谷口 ECの爆発的な伸長で宅配便のラストワンマイルが大きな話題になりました。そこで再配達問題がクローズアップされ、さまざまな解決策が示されていますが、人手不足を考えると、ラストワンマイルはロボットが対応するのが一番適していると思います。なぜなら、人間はオンデマンド(ユーザーの要求があった際に、その要求に即時対応する)に対応できませんが、ロボットは得意とする分野です。ユーザーにしても、再配達通知を何枚も受け取るのはいやですし、時間帯指定も拘束されている感が強いものです。さらに、駅頭での宅配ボックスでは、ちょっと面倒ですし、そこから荷物を持って帰らないといけませんからね。そこで、宅配ロボットの「CarriRo Delivery」を開発したわけです。

―― この7月19日に宅配ロボット「CarriRo Delivery」の量産前モデルを発表しました。

谷口 このモデルで日本初となる宅配ロボットによるデリバリーサービスの実証実験を、ローソン、慶應義塾大学SFC研究所の協力を得て開始します。ユーザーは注文から受取りまでを専用アプリを用いて行い、「CarriRo Delivery」が自律走行で届ける実運用に近いサービス検証となります。

―― この実証実験は大学構内で行うのですか。

谷口 そうです。公道等では規制があり、まずは大学内や商業施設内、空港施設内等限られた空間で実証実験を行っています。慶應義塾大学湘南藤沢校舎には約4000人の学生・教職員がいますので、アプリをダウンロードしてもらい、サービスを利用してもらいます。ローソンが大学内に倉庫を作り、「Cariro Delivery」が運ぶもので、デリバリーから決済を含めてサービス提供します。「CarriRo Delivery」は10台投入し、学内に一定の受け取りポイントを設定し、利用してもらいます。

―― 大学内で実証実験をする理由は。

谷口 大学内の売店や食堂といったものは、学生が年3か月ほど休みますので、運営事業者は営業上なかなか大変で、撤退する事業者も珍しくありません。特に地方の大学は、周りに商店街等がない上に、校内面積は広い場合が少なくありません。コンビニのない大学もありますので、フードデリバリーなら、2畳ほどの倉庫と「CarriRo Delivery」があれば十分やっていけます。

―― 階段等での対応や盗難、子供等への対応は。

谷口 階段にロボットが対応するには、現在のところコストがかかりすぎますので、階段のないルートを選択します。スロープを登る方が、圧倒的に低コストで運営できます。子供はロボットが止まっていると、触ったり上に乗ってくる子もいますが、動いていると寄って来ません。遠隔監視で360度モニタリングしていますし、注意喚起の放送も随時行うことが可能です。盗難も、同様に遠隔監視と注意喚起しており、さらに重さが100Kgもありますので、あまり心配していません。

―― 実証実験はいつから。

谷口 来年の1月から行います。この試みはいずれ多くの新サービスを生み出す種になるものと考えています。例えばパソコンやスマホが登場した当時は考えつかないような新しいサービスが次々に生まれてきましたが、それと同様にロボットの新しい使い方、新しいサービスのアイデアが続々と生まれてくるものと思います。

<谷口社長>
20181022zmp9 500x334 - 物流最前線/ZMP 谷口 恒社長(トップインタビュー)

次>> 「CarriRo」を使った新アイデア、自動化はもう後戻りできない

<前へ 次へ> 1 2 3

この記事をシェアする

最新ニュース

物流用語集