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アマゾンロボティクスの全貌
顧客と働く人の満足が効率化を実現

2023年01月20日/物流最前線

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現在の倉庫における革新的な自動化の基盤を作ったと言っても過言ではないアマゾンロボティクス(2015年にKiva Systemsから名称変更)。自走式ロボットのドライブ(AMR)を開発し、商品棚を自動で働く人のいる場所に運ぶシステムだ。これにより、相当な効率化が図られたわけだが、「効率化を図るために導入したというよりは、現場の安全性を高め、顧客のニーズに素早く応えられるということを重視した結果、効率化が実現できたというように考えています」と逆の発想からスタートしたとアマゾンロボティクス全般のテクノロジーを統括する渡辺宏聡オペレーション技術統括本部統括本部長は話す。現在国内およそ20拠点の内、約半数にアマゾンロボティクスを導入しており、今後も拡大していく方針で、アマゾンロボティクスをコアのテクノロジーとして、グローバル全体で取り組んでいくとしている。そして、次なる進化したアマゾンロボティクスの方向性と技術革新について、渡辺本部長に伺った。
取材:12月20日 於:アマゾンジャパン本社

<渡辺宏聡オペレーション技術統括本部統括本部長>
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<アマゾン尼崎FC>
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<アマゾン尼崎FCの食堂の様子>
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<徹底したコロナ対策を施した食事場所>
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コロナ禍で出荷能力超える
チャレンジの連続だった

――  現在の物流環境からお伺いします。Withコロナ時代と呼ばれて久しいですが、アマゾンさんではどうでしたか。

渡辺  新型コロナ禍が始まって、一番ビジネスの環境が変わったのは、やはり顧客の需要が高まったことですね。同時に、現場の働く人たちが新型コロナに感染するリスクにどう対応するのか、まさにチャレンジングな日々となりました。市場の需要に応えるためにも、まず初めに現場の働く人たちを守らなければいけませんので、現場への感染対策を展開する際に、一時的に出荷量が落ちたこともありました。感染対策のために、パーテーションを立てたり、消毒液を用意したり、5Sを活用したソーシャルディスタンスの確保など、次々に感染対策を導入していきました。

――  アマゾン尼崎FC(フルフィルメントセンター)での取り組みを見せていただきましたが、徹底していましたね。特に食堂の様子とかは。

渡辺  そうですね。感染を防ぐためには、どこにパーテーションを設置すればよいのか、床からの高さや上部までの高さはどれくらいか。通路幅はどれくらい必要か等を綿密に調査して、スペックを決め、実際に食堂の図面を引いて展開しました。また、食堂内の通路は進行方向を決め、人が並ぶ場所には床面表示を使ってソーシャルディスタンスが維持できるようにしました。

――  食堂以外の現場などでは。

渡辺  現場の中もそうです。休憩するスペースでも感染しないように椅子の位置を定置化し、すぐに休憩できるようにしました。また、できる限り歩かないでいいように、食べ物とか飲み物を持ち込むことができるようにして、フレキシブルな対応で感染対策を講じていました。作業エリアでは、パーテーションするとともに、作業位置の定位置化など5Sを活用して感染対策をしました。また、ディスタンスアシストと呼ばれるAIを活用したソーシャルディスタンスを維持するテクノロジーを導入するなど、アマゾンらしい対策も実施しました。

――  感染対策と同時に需要増に関してはどのような対策を。

渡辺  コロナになってからの1年半~2年は、需要の成長が著しく、私どもの在庫のキャパシティとか出荷の能力を超えた注文をいただけたので、最初の1年間はそれに対応するチャレンジの連続でしたね。需要が高い中、キャパシティが不足しているという状況で、どのように出荷能力を高めていくのか、顧客の満足度を確認しながら在庫の持ち方と出荷能力のバランスを取ることに最も頭を悩ませました。

――  大変な時期でしたね。しかし、アマゾンロボティクスによる自動化も感染対策と需要増に大きな貢献を果たしたと思いますが、簡単にアマゾンロボティクスの歴史等を教えてください。

渡辺  アマゾンが2012年にKiva Systemsという会社を買収し、2015年にその名称をアマゾンロボティクスに変更しています。当時、自走式のドライブ(AMR)というロボットが商品棚を自動で働く人のいる場所に運ぶシステムとして、注目されていました。買収した翌年には、私も日本への導入を検討するためにボストンに行きまして、現地の技術者とも交流しましたが、すごいアイデンティティのある集団だと感じました。2年くらいで、アマゾンの文化と融合した感じになりましたね。ボストンにはほぼ毎年訪れているため、アマゾンロボティクスの技術の進化や組織の変遷を近くで見てきました。

――  ジェフ・ベゾス氏にもお会いしましたか。

渡辺  ランチミーティングに一緒したこともあり、3回くらい会っています。最初に会ったのが、2010年、グローバルでリーダ―シップが集まるシニアマネジメントミーティングがシアトルであり、150人くらいが集まりました。その時にジェフ・ベゾスが、オペレーションに対する期待値を話したりしました。2回目が東日本大震災の1年後に来日し、大震災に対するメッセージを語ってもらったり、市川塩浜のフルフィルメントセンターの見学などを行いました。アマゾンロボティクスと日本の技術を組み合わせた茨木FCの発案をした後、私から彼にメールを送りました。彼はとても喜んでくれて、日本のエンジニアチームにメッセージをくれました。

――  東日本大震災の時は東北一帯の物流施設が大きな被害を受けました。

渡辺  あれは本当に大変な惨事でした。私はその時、大阪の堺のフルフィルメントセンターのセンター長と西日本を担当していたのですが、東日本3拠点が全部止まったため、西日本2拠点で対応せざるを得なくなったのです。堺のセンターから全国への配送をすることになり、本当に大変な時期でした。しかし、それ以上に大切だったのが、従業員の安否確認ですね。震災後1週間くらい連絡がつかなかった人や体育館の2階まで津波が来て、その津波を乗り越えた方もいました。

――  東日本大震災により、サプライチェーンが破壊され、電気も水道もガスも止まるという未曽有の体験をしたわけですが、物流がインフラの一つだと認識され始めた契機でもありました。

渡辺  そうですね。ロジスティクスとは人間にとって生命線というか、とても大事なことなんだと再認識しました。水や食料を届けるにしても、大手運送業者さんのトラックが道路寸断などで、顧客にたどり着けない。私たちにはまだ当時配送網がありませんでしたから、物流網って本当に生活を支えているインフラだと強く感じましたね。

次>自動化の本来の目的は顧客満足度と従業員の安全

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