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アマゾンロボティクスの全貌
顧客と働く人の満足が効率化を実現

2023年01月20日/物流最前線

ロボット導入の目的は何か
バランスのよい判断が必要

<アマゾンFCのバーチャルツアー>

――  今後ロボットによる物流センターの自動化を推し進める事業者が増加すると思いますが、ロボットを選択し導入するにあたって何が重要ですか。

渡辺  繰り返しになりますが、アマゾンの事業は、顧客の満足度を高めることが目的であって、ロボットや自動化の設備は、それを実現するために活用していきます。顧客の満足度を高めるための品揃えと、利便性を高めるための入出荷量と配送スピードを前提とし、それを実現するためのソリューションを複数の選択肢から選びます。特に、物流では入荷量と出荷量、そして商品のサイズが変動します。また毎年梱包の形態も進化させていますので、それらを考慮した設計が必要になります。多少のリスクはとりますが、それらの要求事項を満たせなければ、自動化設備の能力が発揮できなくなります。何を目的に機械やロボットを導入するのか、様々な観点で設備に必要な能力を定義し、バランスよく判断していく事が求められると思います。

――  肝の部分ですね。

渡辺  とても重要な部分です。一方、顧客の満足度からスタートするのではなく、プロダクトからソリューションを生み出すことも大切な視点です。目の前に活用できる設備やロボットがある場合、それらの能力を活かす最大限に活用するために商品の置き方や物の流し方を見直すことによって、新たなソリューションとなる可能性があります。ここで注意しないといけないのは、プロダクトアウトにならないこと。技術者は新規設備を開発することや導入することに夢中になる傾向があり、顧客満足度を高めるという本来の目的を忘れてしまうことがあります。こうなると本末転倒ですね。技術の活用のためには、技術の持つ付加価値を顧客の満足度の向上にどうつなげていくのか、両方の視点ですり合わせをすることがとても大切になります。

――  ところで最近、冷凍冷蔵倉庫の需要が活発ですが、アマゾンさんでも生鮮食品を取り扱う機会が増えていますね。

渡辺  アマゾンフレッシュという生鮮食料品を品揃えするFCを2022年11月に葛西に立ち上げたところです。2017年に川崎に初めて生鮮食料品を扱い始め、葛西が2拠点目となります。商品を保管するうえで、冷凍・冷蔵はじめ3温度帯があり、それを調整しながら運営しています。

――  東に2拠点、次は西ですね。

渡辺  そうですね。顧客のニーズがあればそういうことになると思います。ライフさんとも提携していますので、ライフさんからも生鮮食料品の配送は可能です。

――  さて、テクノロジーの進化に合わせて業務を変化させていく技術者としては大変だと思いますが、渡辺本部長の仕事においてのモットーとは。

渡辺  この仕事では、だいたい2年先に自分を置いて、2年先の自分から現在の自分の仕事を見るように心がけています。2年後の自分が、「アッやらなきゃよかった」と思わない仕事を選んでいるつもりです。テクノロジーは大体うまくいけば2年後くらいに大きく花開くものです。「今ベータテストをやり始めました」と言いだしてから約2年後ですね。2年後に完成した後の姿が想像できるので、この設備ができたらここに入れ込む、そのために建物の設計はこうしておく、その設備が入ったらこのように物を流す、と想像しながら仕事を進めていきます。逆に言えば、今できたFCは2年前にほぼ完成しています。一方で、まったく何か新しいことを始めようとしたら、3年先に自分を置くようにしています。3年先は何もなくても新しいものを生み出せる時間間隔なので、ここで新たなイノベーションを創造できるのです。2年先は、今あるものから選択する感覚ですが、3年先ともなると何もないところからのスタートなので、その分根本的な部分から考えていけます。顧客は3年先何を求めているのか、今ある技術でできることは何か、逆に今ある技術でできないことは何か、そして、それをできるようにするにはどういう技術が必要か、といった具合に組み立てていきます。そういう時間軸といったものを大切にして仕事をしています。

――  理詰めでの思考で、まさに技術者そのものですね。渡辺統括本部長のストレス解消法とは。

渡辺  ストレス解消法はいくつかあります。まずはしっかりと睡眠をとることです。常に頭をリフレッシュしておかないと気持ちもポジティブになりませんしね。もう一つは趣味としてスキーをやっています。冬場は毎週スキーに行っていますね。夏場はジムに通って体を鍛えています。頭と体のバランスの良いケアを高校卒業以来ずっと続けています。

――  最後になりますが、アマゾンロボティクスからLNEWS読者にメッセージを。

渡辺  やはり物流というのは顧客の満足度に直接つながる大切な仕事だと思っています。アマゾンと私たちはそこにプライドを持って仕事をしていますし、より良い物流ネットワークを作っていきたいと思っています。日本のサプライヤーさん、物流事業者さんと一緒に物流を進化していけたらこれに勝るものはありませんね。

取材・執筆 山内 公雄

<渡辺統括本部長>
20230116amazon10 - 物流最前線/アマゾンロボティクスの全貌

プロフィール
アマゾンジャパン合同会社
オペレーション技術統括本部 統括本部長
渡辺 宏聡

2009年にアマゾンジャパンに入社し、日本で3番目に開設した堺フルフィルメントセンターのサイトリードとして、グローバル初の商品仕分けシステムを立ち上げ、高度に自動化されたセンターの運営方法を確立。その後フルフィルメントセンターオペレーションズの統括本部長として多数の拠点開設に携わっている。
技術開発担当となった後、グローバルのエンジニアリングチームと連携し、プライムパントリー(日用品をまとめて販売)、プライムナウ(都市部の1時間配送サービス)、アマゾンフレッシュ(生鮮食料品)のフルフィルメントプロセスの設計と導入を行いグローバルのサービス拡大に貢献。また2016年8月には、日本初となるAmazon Roboticsを活用した川崎FCを設計して立ち上げ、日本で第三世代となるフルフィルメントプロセスを確立した。その他にも、複数のセンターを設計して立ち上げた。また、現在は商品発送時のパッケージや梱包機械の設計にも携わり、サステナビリティの取り組みにも携わっている
アマゾンジャパン入社以前は、大手繊維メーカーにてガスバリア性包装材料の研究、製品開発、生産技術、生産管理、メンテナンス業務を経験。その間アメリカロードアイランド州にある海外工場にて6年間勤務。2006年に大手総合電機メーカーに転職し、エンジニアリングプラスチックの製造部のオペレーションマネージャーとして5工場のオペレーションを管理運営した。
信州大学大学院工学系研究科にて電気電子工学の修士号を取得。

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