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アマゾンロボティクスの全貌
顧客と働く人の満足が効率化を実現

2023年01月20日/物流最前線

自社設計の物流倉庫開発へ
ロボット導入は日本が決める

<Sparrow>
20230116amazon9 - 物流最前線/アマゾンロボティクスの全貌

<Prime Air>

<Robin>

――  今後のアマゾンロボティクスの展開ですが、FC等の物流センターと物流ロボットの開発の2つがありますね。

渡辺  まずはFCですが、今後はアマゾンロボティクスを最大限活用するために、できる限り自社設計の物流センターを導入していきたいですね。2005年の市川FCから2013年の小田原FCまでは、ロボティクスはなかったのですが、自社設計の倉庫を比較的多く立ち上げました。小田原FCの後、巨大な拠点を自社設計で構えるのが良いのか、それとも在庫量、出荷量を推測しつつ、顧客のニーズに沿った形で、細かく調整できる形にした方がよいのか、2015年から2017年まで議論されました。そして、2016年にロボティクスを導入した時に、この技術を将来的に活用するなら、やはり自社設計の拠点を構えるべきだとなりました。それはロボットの能力を最大化できるだけでなく、配送拠点を大型にして品揃えを増やすチャンスもあり、それ以降は自社設計でやっていこうと決めました。2021年あたりからほとんど自社設計となっています。

――  物流ロボットの開発についてはいかがですか。国内外でロボットメーカーが、いろいろ開発を進めていて、AMR等も百花繚乱になっています。

渡辺  本当にたくさん出ていますね。アマゾンロボティクスは我々のコアテクノロジーですので、今後も進化させ活用していこうと思っています。さらに新しい技術も次々と開発しています。例えば「Robin」と呼ばれるロボットアームは梱包された商品をつかんで移動することができます。また、最近発表された「Cardinal」は、ロボットアームが、梱包された商品をつかんで、複数のカートに仕分けをすることができます。さらに「Sparrow」という最新システムを導入しました。この最新のロボットシステムは、アマゾンの物流拠点で初めて、在庫としてある一つ一つの商品を検知、選択、移動できるロボット・ハンドリング・システムです。コンピュータビジョンとAIを活用することで、「Sparrow」は数百万点の商品を認識し、取り扱うことができます。アマゾンの拠点では人とロボットが一緒に作業をしますが、ロボットが人に代わって短調な作業を担当し、人はその他の仕事に従事することができるようになります。これらは2022年11月に発表し、現在米国で試験稼働をしています。

――  物流ドローンも開発していますね。

渡辺  グローバルで「Prime Air」を通じた自律型の電動ドローンシステムの設計・構築もしてきました。このドローンにより、5ポンド以下の商品であれば、注文から配達まで1時間以内に配達することができます。アマゾンが定義するドローン配送の規模は、ボストン、アトランタ、シアトルといった人口の多い地域を含め、今後10年間で年間5億個の商品をドローンで数千万人の顧客に届けることです。同時に、規制当局によって検証された安全レベルを達成し、車で店舗に買い物に行くよりも安全であることも重要なポイント。アマゾンは、新たに発表した次世代デリバリー・ドローン「MK30X」により、そのために重要な一歩を踏み出すことになります。このドローンは現在開発中で、2024年に米国でサービス拡大として導入予定です。

――  非常に楽しみですね。日本にはいつごろから導入予定でしょうか。

渡辺  これまで説明した新技術については私も米国に行って確認していますが、日本に導入するかどうかは別問題です。

――  本社が開発しているものは導入するのでは。

渡辺  グローバル企業ですので、グローバルのソリューションは最大限活用することが原則です。ただし本社から指示されて入れるのではなく、日本で活用するロボティクスについては日本のアマゾンが導入の判断をしています。グローバルで作っているものは見に行って使えるものは導入しますし、グローバルの技術で解決できないことは我々で技術開発をします。日本の顧客や従業員に合ったものでないと日本で導入しても意味がありませんからね。アマゾンの中で、建物の設計からレイアウトまで全部やっているのは、日本だけです。シアトルの本社は米国、ヨーロッパ、その他のリージョンを担当しています。日本は地震が多いために、建物の構造も相当違いますし、コンベヤー等の日本のマテハン機器メーカーさんのレベルも非常に高いということもあり、日本には比較的多くの権限が与えられています。

――  日本としては誇らしいですね。

渡辺  誇らしくもあり、大変でもあります。私たちのチームは新しい技術やオペレーションを求めて、毎年2回程度はアメリカに行っています。そこで開発中のロボティクスのロードマップを見た時に、2年後に日本に導入するために、日本の実情に合わせてこうしてほしいといった要件が生まれます。それをリクエストして組み込まれたものを日本に持ち込むという形ですね。一方、アメリカではセンターの延床面積が巨大なため、比較的機械やロボット類の寸法が大きくなる傾向があり、全ての新規設備が使えるわけではありません。もし日本のFCに導入できないサイズであれば、日本国内で小型化に挑戦します。

――  ドローン実配送がいろいろなところではじまりつつありますね。

渡辺  アメリカとか中国はどんどん研究していますね。国が広いですから、アマゾンもアメリカのカリフォルニアで飛ばします。私も開発現場を実際に見に行って、「これかぁ」と大きいので驚いたことがあります。なぜ見に行ったかというと、将来そのドローンが一つのデリバリーソリューションとして考えられる中で、我々のFCとどう結び付けるのかということがテーマになると思ったからです。どのくらいのサイズ感で、どのくらいの重さで、商品の付け外しや、メンテナンスはどうするのか、FCの屋上にドローンを駐機させるのか等、を考えるためでした。

――  日本でもやはり実運航を考えていると。

渡辺  時が来たらというところですね。離島とか山間部では強力なソリューションになると思いますが、飛ばせとは言われないので、まずは飛ばせるニーズというか、このソリューションが当てはまるユースケースが日本のどこにあるかをさぐることが先決です。どこに住む顧客に対してどんな利便性を提供できるのか、が重要です。施設として持たないといけないので、多額の投資にもなりますからね。人口密度の低いエリアの方が導入するハードルは低いと思います。ニューヨークや東京といった都会で飛ばしてこそ本当のイノベーションと呼ばれるのではないかと思います。

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