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アマゾンロボティクスの全貌
顧客と働く人の満足が効率化を実現

2023年01月20日/物流最前線

自動化の本来の目的は
顧客満足度と従業員の安全

<渡辺統括本部長>
20230116amazon6 - 物流最前線/アマゾンロボティクスの全貌

<アマゾン尼崎FCのステーションの様子>
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<Hドライブ>
20230116amazon8 - 物流最前線/アマゾンロボティクスの全貌

――  それでは本題に移って、アマゾンロボティクスについて先ほど簡単に説明してもらいましたが、より具体的にお願いします。

渡辺  アマゾンロボティクスは一言で言うと、ドライブというロボットを使った自動倉庫のシステムです。具体的には床面を動くドライブロボットと、黄色いポットと呼ぶ棚の部分、そして人が働くステーションと3つのパーツからなるシステムで構成されています。アマゾンがKiva Systemsを買収後、ドライブは2回ほど進化して能力は高まっていますが、ドライブが棚をステーションまで運ぶという基本的な設計であったり、技術的なコンセプトは変わりません。ドライブは当初Fドライブでしたが、Gドライブになり、現在はHドライブに進化しています。アマゾンが買収後に技術的に特に大きく進化したのは、人が作業をするステーション周辺であり、多くのテクノロジーが活用されて働きやすくなりました。

――  日本に導入しているのはこのHドライブということですね。

渡辺  2016年に初めてアマゾンロボティクスを導入した川崎FCのみGドライブですが2018年に立ち上げた茨木FC以降は、全てHドライブになります。また、まだ日本には導入していませんが、Hドライブにベルトコンベアを付けて、パッケージを搬送できるペガサスと呼ばれるドライブも開発されています。

――  日本では何か所のFCに導入されていますか。

渡辺  2016年に川崎FCに初めて導入した後、毎年1~2拠点に導入を続けており、現在は約半数の拠点に導入しています。日本には現在FCが20拠点以上ありますが、アマゾンのFCが持つ在庫の体積の半分以上がアマゾンロボティクスの棚に入っています。

――  大型センターから導入しているからですか。

渡辺  そうですね。アマゾンロボティクスの効率にはFCの延床面積の大きさが影響しますので、効率を高めるためにFCのサイズを大型化しています。2016年に初めてアマゾンロボティクスを導入した川崎FCは、自社設計のセンターではなかったため効率を上げることが難しかったのです。またアマゾンロボティクスのシステムとしての効率を高めるには、床面積だけではなく、ロボットの走行しやすい柱のピッチにするとか、建物の形状を最適化したレイアウトがとても重要になります。2018年に立ち上げた茨木FCは初めて自社設計の建物にアマゾンロボティクスを導入しましたが、単位面積あたりにより多くのロボットが稼働でき、より多くの商品を在庫することができました。そして2021年以降はほとんどのセンターを自社設計のセンターで立ち上げています。

――  効率化による省人化等、効果面を数字でとらえていますか。

渡辺  当然、数値的な面は見ています。FCは非常に大きな投資ですが、設備投資額だけでなくそのオペレーションに必要なコストも全て見積もった上で、FC全体のコスト構造と効率は確認して投資の意思決定をしています。ここでは、基本的に省人化ありきでシステムを構築しているわけではありません。顧客の満足度を高め、働く人たちの安全、働きやすさといった面を高めることにより、結果的に効率化や省人化に繋がっていくシステムとなるようにFCを設計しています。

――  倉庫内での事故といったものは、減少したということですか。

渡辺  倉庫内での事故が発生するリスクは確実に減っていますね。人が運搬するカートや人が歩くオペレーションでは、カートどうしがぶつかったり、人が歩いていて、転んだり滑ったりのリスクがあります。アマゾンロボティクスのステーションでの作業は人が歩行する必要がなく、センター内で人が歩く距離が長くなればなるほど、そのようなリスクによって事故が発生する確率は増えます。センター内での事故のリスクが減ったと言えるでしょう。とても大きな進歩だと思っています。

――  働く人たちの安全が第一という考え方ですね。

渡辺  そういうことです。以前から重い物の搬送はコンベアを利用するなど、人による作業を最小化してきましたが、例えば少し重い商品を上部の棚に棚入れしようとすると、エルゴノミクス上あまり良くない体勢が生まれたりします。アマゾンロボティクスは、これが防止できるシステムになっていて、入れてはいけない高さの棚をプロジェクターで赤く照らし、無意識に起きる不安全な姿勢をシステムが防止してくれます。事故が発生するリスクを未然に防止する機能をアマゾンロボティクスは装備し、作業の安全を担保するシステムとなっています。

――  企業による自動化の追求では、よく効率性とか生産性とか省人化効果等の数字で表すことが多いと思うのですが。

渡辺  発想が逆だと思いますね。むしろ安全で働きやすい職場を作る、負荷がない職場を作ることによって、結果としてストレスなく働けるので、事故も減り、その結果として効率が上がるものだと思っています。効率を上げるテクノロジーというものは、働いている人々の大変さを取り除いていくものです。情報が足りないとか、記憶しなければいけないことを極力減らし、情報を整理整頓して伝えることで、判断に迷っている人々のサポートをする。例えば、5秒ぐらい悩んでいる人々の判断を1秒で即判断できるようにすれば、それが効率化になります。ですので、効率化を求めるというよりも、働く人たちが情報不足で迷うような問題を解決して、結果として働きやすい職場を作り、それが効率化につながっていくという順番ではないかと思います。

――  働く人たちに対してアマゾンさんの考え方は徹底していますね。

渡辺  それがまずわが社の大前提ですからね。効率だけを追求しようとすれば、安全上のリスクをとったオペレーションで短期的な効率化は得られますが、中長期的には維持できませんし、何よりそれで顧客に喜んでもらえるようなサービスの提供はできないものだと思います。現場で働く人たちが、安全安心で従事しているからこそ、毎日同じ品質で商品をお届けできますので、顧客の満足度を高めるためにはまず従業員の満足度を高めることが必要です。働く人たちの満足度とは何かというと、最低限として安全な職場であるということ。そして、ストレスがなく、毎日来て楽しい職場、明日もまた来たいと思う職場環境を作ることです。それによって、ロボティクスの手順書を守ってもらえますし、それが顧客への配送品質にもつながっていくものと思います。この順番は間違いないと確信しています。確かに、効率性はコストに繋がりますので、非常に重要な要素ではあります。まずは、オペレーション全体として、安全があり、顧客と働く人たちの満足度があり、その中で生産性を高めることで、コストを下げて、それをまた顧客に還元していくというオペレーションを続けていきたいと思います。

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