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国際ロボット展/注目の物流ロボットを動画で一挙紹介

2023年11月30日/IT・機器

世界最大規模のロボット専門展「2023国際ロボット展(iREX2023)」(主催:日本ロボット工業会、日刊工業新聞社)が東京ビッグサイトで11月29日~12月2日にかけて開催されている。

<開催初日の会場内>
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25回目となる今回の出展数は654社・団体、3508小間と、2022年3月の前回開催(615社・団体 3227小間)を上回り過去最大規模での開催となり、4日間で14万人超の来場が見込まれている。

従来からの自動車や半導体などの業界向けに加え、物流や食品、医薬など幅広い業種に向けた製品が出展されており、特に物流向けの機器・ロボットは新たに専用の出展ゾーンが設けられ、荷役や搬送等のロボットが数多く展示されていた。同記事では、そのなかでも注目のロボットを選定し、ジャンル別に紹介する。

デバンニング

貨物コンテナやトラックからの荷下ろし作業を担うデバンニングロボットは、Mujin(ムジン)と川崎重工業の2社が出展していた。荷下ろし業務は2024年問題や、倉庫作業の人手不足を背景に自動化への期待が高く、両社のロボットの周囲には人だかりができていた。

<Mujin「Truck Bot(トラックボット)」>

Mujinの「Truck Bot(トラックボット)」は、今回が国内初公開。ロボットコントローラー「Mujinコントローラ」によって知能化されたロボットは、1時間あたりに1000ケースという高速処理で混載貨物の荷下ろしを実現している。独自に開発した可動・伸縮性コンベヤと連携する特殊ハンドは、最大で22kgまでの貨物を取り扱うことができる。

米国で先行販売しており、大手小売りや物流企業による採用が決まっている。日本市場への投入時期は調整中で、企業へのヒアリングの結果をもとに日本市場に適した仕様にカスタマイズしたロボットとして販売する計画だ。

<川崎重工「Vambo(バンボ)」>

川崎重工の「Vambo(バンボ)」は、中型汎用ロボット「RS080N」に無人搬送車(AGV)を組み合わせたパッケージ商品で、自走でコンテナ内へ進入し、大小様々な荷物の荷下ろしを行う。1時間あたりの処理能力は600ケース、最大30kgまでの荷物を扱う事が可能だ。

同ロボットは、2022年3月に発売されており、西濃運輸などの物流センターで実稼働済み。同社の富加物流センター(岐阜県富加町)では、同ロボットによって荷下ろし作業の人員を3分の1に削減している。

なお、荷積みを担うバンニングロボットについては、Mujin、川崎重工ともに開発を検討中(川崎重工は今回の展示でバンニングも披露しているが、技術的課題から製品化には至っていない)。人手不足解消のために早期の製品化が望まれる。

ピッキング

コンテナや箱の中から個別に商品を取り出すピースピッキングのロボットは、対象物が限定されるFA向けが多数を占める。その中でも、大きさや形状が異なる製品を扱う物流現場で使用できそうなものとして、オカムラとパナソニックホールディングスのロボットを紹介する。

<オカムラ「RightPick(ライトピック)」>

オカムラの「RightPick(ライトピック)」は、米RightHand Robotics(ライドハンド ロボティクス)社の製品で、真空吸着と3本の指(グリッパー)で構成されるハンドによって、アームが高速で動作しても安定的に対象物を把持することができる。

ピッキング対象物や把持部位を指定する作業が不要で、AIが3Dビジョンの画像からピッキング対象物を自動で認識・判断し、ピッキングの最適な動作を決定する。AIは機械学習によって定期的にバージョンアップし、能力が向上している。

同ロボットはPALTACの「RDC埼玉」(埼玉県杉戸町)で採用されており、自動倉庫から出庫された商品のピッキングを担っている。

<パナソニックHDが開発中のピッキングロボット>

パナソニックホールディングスは、開発中のピッキング用ハンドを参考出展している。

同ハンドは、指先に対象物の力覚を検知するセンサーと、無限循環ベルトが搭載されており、指先で摘まんだ対象物をベルトの回転によって引き上げる仕組みによって対象物を把持する。この機構によって、柔らかい果物等も潰さず持ち上げることができ、狭い間隔で箱詰めされた商品を摘まみ上げたり、ハンドの中で対象物を回転させ、向きを揃えて箱詰めするといった動作も可能になる。

製品化の時期は未定だが、同社では技術開発と実証実験を進め、2年後をめどに製品化を目指す模様だ。

パレタイズ・デパレタイズ

パレットへの荷積み(パレタイズ)と荷下ろし(デパレタイズ)を行うロボットは、FA機器メーカーをはじめ多数の企業が手がけており、今回の展示物のなかでも数多くのロボットが散見された。その中でも、今回はMujin、オカムラ、オークラ輸送機、OnRobot(オンロボット)の4社を紹介する。

<Mujin「多機能ハンド混載デパレタイズロボット(段ボール)」>

<多機能ハンド混載デパレタイズロボット(オリコン)」>

Mujinのロボットは、独自開発の多機能ハンドによって、段ボールとオリコンの両方をハンド交換無しで把持でき、大きさの異なる混載ケースや、2つのケースを同時に把持するマルチピックにも対応している。品種数を問わず、かつ2ケースを同時に扱えるのは、同社の強みである知能ロボットだからこそ可能なことだ。

展示されていたのは複数台のAGVと連携したシステムで、パレットに積まれた段ボールやオリコン、混載ケースをAGVがデパレタイズロボットのもとへ搬送し、同ロボットがコンベヤへ荷物を降ろすデモンストレーションが行われた。

<オカムラ「ORV×パレタイズロボット」>

<オークラ輸送機「OKURUN×ロボットパレタイザAi6F」>

オカムラとオークラ輸送機のブースでは、それぞれカゴ車やカートラックにパレタイズロボットで段ボールを積み付け、AGVによって台車を牽引して搬送するソリューションが展示されていた。両社ともに、倉庫内での荷役を自動化し、省人化や省力化を実現することで、人手不足の解消に寄与する。

<OnRobot「D:PLOY(デプロイ)」で動作するパレタイズロボット>

デンマークのロボットハンドメーカーであるOnRobotは、今年1月に発表したクラウド型ロボット制御プラットフォーム「D:PLOY(デプロイ)」を用いた各種産業ロボットのデモンストレーションを披露している。

同システムは、ユニバーサルロボット、オムロン、ファナック、DOOSAN、デンソー等のアームロボットに対応。ロボットに繋ぎ込むだけでプログラミングを全く必要とせずにロボットの動作を生成し、取り扱い対象の形状やサイズ、重量等、簡単な情報をタブレットに打ち込むだけでロボットを運用することが可能だ。

ロボット展に来場していた同社のエンリコ・クログ・アイベルセンCEOも「若干のプログラミングを必要とするロボット制御システムは幾つか存在するが、完全なプログラムレスのシステムはD:PLOYが世界で唯一」と、システムの特長を強調する。日本市場での販売は住友商事マシネックスなど数社のパートナー企業が代行しており、強みである運用難易度の低さを訴求できれば普及が加速するだろう。

GTP

ピッキング作業者の元までロボットが荷物を運ぶ「GTP(Goods To Person)」ロボットは、RENATUS ROBOTICS(レナトス ロボティクス)と椿本チエインの2社を紹介する。

<RENATUS ROBOTICSの自動倉庫システム「RENATUS(レナトス)」>

東大発ロボットベンチャーのRENATUS ROBOTICSは、今回がロボット展への初出展。西部電機のブース内に自動倉庫システム「RENATUS(レナトス)」のデモ機を展示している。

RENATUSは、縦横へ移動する高速シャトルと、独自のアルゴリズムを組み合わせた自動倉庫システム。リアルタイムでの順立て出庫によってピッキング・集約・梱包を1人の作業者で完結できるため、作業人員の削減が可能なほか、荷合わせ工程の搬送コンベヤが不要になるため、保管効率の向上や投資コストの低減にも寄与する。

同システムの第1号は、イー・ロジットの「埼玉草加FC」(埼玉県草加市)で2024年4月以降に稼働予定。以降は、同社の別倉庫への導入や、代理販売などを進めていく方針だ。

<椿本チエイン「T-AstroX(アストロクス)×オートランバンガード」>

椿本チエインは、10月1日に発売した3次元マテハンシステム「T-AstroX(アストロクス)」と、天井空間を走行するモノレール式搬送システム「オートランバンガード」を組み合わせた工場内搬送システムを展示。高所棚による保管と天井を走行する搬送システムによって、建屋の上部空間を有効活用した搬送のデモンストレーションを披露している。

2社のほかでは、オカムラがGTPシステムの代表格ともいえる「AutoStore(オートストア)」を展示。近年、GTPシステムの新規参入が増える中、高密度保管による保管効率の高さと、多くの導入実績による信頼性を武器に、現在も採用数を伸ばしているようだ。

今回のロボット展では、機器・ロボットゾーン以外のFA機器メーカー等のブースでも、物流関連のロボットを出展している様子が散見され、ロボットメーカー各社が物流ロボットに注力している様子が伺えた。また、物流現場でのロボット活用が進展し、自動化の範囲が拡大していることを受けて、デバンニングロボットなど新たな領域の自動化を実現する機器の登場や、従来までのロボット単体ではなく、複数のロボットを連携させたソリューションの出展が増えていたことも印象的だった。

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