CBREは4月16日、「コールドストレージ(冷凍冷蔵倉庫)の今」と題したレポートを発表した。
レポートでは、コールドストレージ開発の難易度は高いものの、不足感が年々強まるなかで、開発に取り組むデベロッパーが増えてきた。今後は企業の間で賃貸型コールドストレージの利用が少しずつ浸透するだろう、と分析している。
コールドストレージの主な荷物である冷凍食品の消費量は、2000年以降は年平均+1.1%のペースで拡大している。日本冷凍食品協会の資料によると、パンデミック下の2020年、2021年は、家庭用冷凍食品は伸びた一方で外食産業の低迷で業務用が大幅に減少したため、国内全体の消費量は減少した。しかし、2022年の消費量は298万トンと、パンデミック前(2019年)の実績(295万トン)を上回り、過去最高を更新した。
コールドストレージの必要性について、主な用途の食材に大きな成長は期待できないものの、コールドストレージの供給は必要と考えている。その理由は、絶対量の不足、老朽化、そして機械化ニーズの高まりである、としている。
コールドストレージの収容能力は現状で不足している。収容可能なスペースに対する貨物量を示す庫腹占有率をみると、主要都市では100%に近づいており、収容能力に余裕がないことが分かる。特に、横浜では104.1%と逼迫度が最も高く、次いで東京が99.1%、神戸が94.8%と続く。庫腹占有率が高いこれらの都市には国内有数の国際貿易港があり、大型コンテナ船で日本に到着する輸入食材の多くを扱っている。これらの貿易港には検疫所があるため、港の近くに大容量の保管倉庫が必要となる。
国際的な価格変動や政情不安等による物流の停滞など、近年は保管量の増加を促すような事情も多く、コールドストレージの利用増につながっているとみられる。
上位10都道府県のコールドストレージの容積を築年数別にみると、老朽化した施設が相当量あることが分かる。築40年以上の物件は東京都ではコールドストレージの全容積の45%を占め、兵庫県では同43%、千葉県では同48%と、いずれも高い比率となっている。全都道府県の中で最もコールドストレージの容積が大きい神奈川県でも、築40年以上の物件の比率こそ11%と他県に比べて低いものの、築30年~40年は33%と10都道府県の中でもっとも多く、老朽化と無縁ではない。これら都道府県で老朽化施設の建替えが進んでいないのは、庫腹占有率が上がってきたことで荷物の移管先が限られていることも理由の一つ。
冷凍冷蔵設備の耐用年数は25年程度であることから、築年数を経過したこれらの施設は、何らかの設備交換を経た上で使い続けられているケースが多いと考えられる。しかし、設備に支障はなくとも、建物が適切に更新されないことには、耐震性能やBCPの観点から問題となる可能性がある。
<主なマルチテナント型コールドストレージ(~2026年までの開発予定を含む)>
コールドストレージの更新需要はある。しかし、利用者である物流企業にとっては、単価や利益率が低い食品を扱う設備の新設や建替えの投資負担は相対的に重い。そのため、これまでは自社施設やBTS型専用センターが圧倒的多数であったコールドストレージ市場でも、施設を賃借する事例がみられるようになった。2022年から2023年にかけて竣工した4棟のコールドストレージはいずれもテナントが確定済みだ。
テナント未決定の状態で開発がスタートしたマルチテナント型のコールドストレージとしては、2018年の竣工物件が最初の一棟である。その後、2022年以降に開発は本格的に増え始め、首都圏と近畿圏を合わせると、2026年までにマルチテナント型のコールドストレージは20棟が数えられるまで拡大する見通しである。計画のある立地をみると、湾岸部が多数を占めている。湾岸部はもともとコールドストレージが集積しており、既存施設の代替や増床のニーズを捉えやすく、比較的大容量の施設が求められるだろう。一方内陸部は、最終消費地に近いことから高い配送効率を目指したニーズが中心であろう。そのため、一荷主当たりの必要容量は比較的小さいことが想定される。
このようにコールドストレージの開発が増えてきた背景には、建築費の高騰の影響もある。物流施設の運用利回りが圧縮されるなかで、コールドストレージは通常の物流施設(いわゆるドライストレージ)に比べて高めの賃料が期待できるとして、デベロッパーや投資家の関心が高まった。マルチテナント型のコールドストレージ開発に参画する企業は2026年竣工物件まで含めると10社を超える見通しだ。
コールドストレージにおいて汎用型といえるスペックは各社とも模索中であるが、テナントに好まれる機能はいくつかある。一つは、近年の技術革新によって可能になった可変温度帯仕様(-25˚C~+10˚C)である。冷凍冷蔵食品の保管温度帯は7つの階級に分かれており、賃貸型コールドストレージ利用が進まない理由の一つだったが、区画ごとに異なる温度設定とすることで希望の温度帯の組み合わせに近づけられる。
また、荷主企業や商品が入れ替わっても温度設定を変更できるため、長期契約も締結しやすい。二つ目は、賃借面積の柔軟性が高い物件だ。具体的にはスロープやランプウェイを装備した物件は、区画面積が比較的小さくできるため、テナントの希望面積に合わせやすく、将来の増床ニーズにも対応しやすい。三つ目に、自然冷媒を使用した冷凍冷蔵設備が挙げられる。地球温暖化対策としてフロン類の冷媒からアンモニアや二酸化炭素、炭化水素といった自然冷媒を使用した製品に置き換わっている。自然冷媒は環境負荷が少ないだけでなくエネルギー効率が良いため、電力使用量は年間で20~35%程度削減できるといわれている。設備費用は賃料に転嫁されるものの、ランニングコストを低減できることはテナントに好感されている。
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