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東大/複数の輸送ネットワークの統合によって生じる相乗効果を分析

2024年11月06日/IT・機器

東京大学先端科学技術研究センター寄付研究部門先端物流科学の江崎貴裕特任講師、井村直人特任研究員、西成活裕教授らによる研究グループは、物流などの輸配送ネットワークが複数組み合わされた時の相乗効果が生じる条件について分析した。

<図1.輸送ネットワークの相乗効果を定量化するための数値実験概要>
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一つのネットワークから相違度の異なる二つのネットワークを作成し、それらを重ねることでネットワークごとの潜在的な相乗効果の生まれやすさを定量化する手法(図1)を開発し、それにより特に「コア・周辺構造」を有するネットワークでは相乗効果が生まれにくいことを明らかにした。

また、そのようなネットワークでも異なるコア構造をもつネットワーク同士で統合を行うと一定の相乗効果が見込めることもわかった。この研究成果は、今後物流ネットワークに限らずさまざまな輸送ネットワーク同士の連携を考える際の基準として役立つことが期待される。

物流や公共交通システムなどの輸送ネットワークでは、需要と供給の波動によってネットワークの一部が過剰に使用される一方で、他の部分は未活用のままになることがよくある。また、災害などにより一部のネットワークが分断されることも少なくない。

このような分断されたネットワークを別の異なるネットワークと統合すると、それぞれのネットワークの中では孤立していた部分へのアクセスが可能になり、未利用の配送リソースを有効活用することができる。例えば物流の分野では、事業者間の共同配送により配送を最適化する取り組みが進んでいるが、これもネットワーク統合による相乗効果を示す事例の一つ。しかし、「どういったネットワーク同士で統合を行うと高い相乗効果が得られるのか」については、理論的な知見が存在していなかった。

<図2.ネットワーク種別の統合ネットワークにおける最大流の変化>
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どのような条件下でネットワークの統合が輸送効率を向上させるかを明らかにするために、新たな分析手法と数値実験を用いて、ネットワーク構造が相乗効果に与える影響を調査した。その結果、ノード(ネットワークを構成する結節点のこと)の重要度が比較的均一なネットワークでは大きな統合効果が得られる一方で、中心と周辺が明確に分かれた「コア・周辺構造」を持つネットワークでは、統合による効果が小さいことがわかった(図2)。

この研究は今後の交通システムやインフラ計画において、持続可能で効率的なネットワーク構築の指針に対して示唆を与える。例えば、物流においては複数の輸送モード(空路と海路など)を統合することで、輸送効率を高められることが期待される。今後は、実際の交通データを用いたさらなる検証と、現実の制約条件を考慮した最適化手法の開発が目標となる。

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