全国のトラック運送事業者など、政官民でこれからの運送業を考える有志でつくる日昇会は8月26日、都内の参議院議員会館で第5回勉強会を開いた。
トラック事業適正化関連法(トラック新法)が6月に成立したことを受け業界の期待は大きく、今後の動向をにらみ議論しようと約60人が参加した。
トラック新法は、「5年ごとの許可更新制導入」「国が定める適正原価を下回る運賃の制限」「2次下請けまでの制限」「白トラック(無許可運送)の規制強化」「ドライバーの労働条件改善の義務化」を要点とする改正貨物自動車運送事業法と、規定を担保する体制整備法の2法から成る。
今回は、かねて新法を構想し立法を強く要望してきた全日本トラック協会の坂本克己 最高顧問が、特別講演に登壇。
「白トラックやダンピングの規制など、なんとかしなければと働き掛けてきた。人間の血液と同じで、トラックが止まったら経済はおしまい。何よりエッセンシャルワーカーであるトラックドライバーの幸福追求のため、法改正で労働環境の適正化が入ったことが大きい」などと語り、参加者らを激励した。
また開催にあたり、業界を代表し事務局の岩田享也 八大社長は「われわれ事業者がこうなってほしいと願うことが盛り込まれた仕組みはできた。仏(法律)に魂を入れるため、未来志向の提案をしていきたい」と語った。
勉強会に参加した事業者らの整理によると、主な意見は、「適正な競争環境の構築」「業界全体のデジタル化」「荷主の意識改革」に関わる。
特に適正原価の設定に関しては、「車格と輸送距離の形式だけでなく、個建運賃、重量と輸送距離での運賃など、多様な形式も必要」「キックバックや無償サービスで実質的な運賃の押し下げが図られる可能性もある。抜け道行為を取り締まることも検討してほしい」といった意見があった。
長距離輸送を巡り、「個建運賃で契約しており積載率100%なら一定水準に達するが、閑散期は積載率が低くても1車チャーターで走らざるを得ず低運賃での受託が続いてしまっている」と実情を訴える声も上がった。
このほか「許可更新制の実行力を担保するためにも業界全体のDXを合わせて進めるべき」「荷主側に物流を正しく理解している人材が不足している。物流統括管理者の設置とサポート体制を充実させてほしい」「2024年問題は解消したという認識が浸透してしまうことを危惧している」などの意見が相次いだ。
業界の意見にコメントする形で、国土交通省は「適正原価、許可更新制など特に関心の高いところがよく分かった。コンプライアンスを守ってもらいつつ現場に悪影響しないよう、しっかり検討したい」、経済産業省は「荷主の意識改革が必要。物流統括管理者の取り組み事例など紹介していきたい」などと回答。
また「働き方改革を進める上で2024年問題はまだ終わっていないとPRを続ける」(厚生労働省)、「1次産品の長距離輸送など事情をつかみ効率化を進めたい」(農林水産省)、「業務効率化に向け申請手続きのデジタル化を支援したい」(デジタル庁)などのコメントもあった。
これらを踏まえ、朝日健太郎 参議院議員は「頑張っている人が評価される業界になるように、一方では荷主の声もよく聞きながら、良い形で新法を運用していきたい」と総括した。
なお、日昇会は2023年8月発足。勉強会は年2回(2月と8月)開催している。