CBREは10月16日、首都圏LMT(大型マルチテナント型物流施設)の中での、千葉県エリアの市場分析「首都圏LMT市場分析ー千葉県の強みを紐解くー」を発表した。
それによると、千葉県の空室率は首都圏の中では際立って低いことを明らかとしている。首都圏全体の空室率は、2020年Q4の0.5%を底として、上昇基調が続いており、直近2025年Q2は10.9%と高止まりをしている。
空室率の低さ3つの要因
これに対して、千葉県の空室率は直近のピークが4.7%(2022年Q1)で、2025年Q2は3.8%と低い水準を維持している。要因として、ここ数年間の千葉県でのLMTの新規供給が比較的少なかったこと、新規供給物件の立地条件が良かったこと、そして相対的に低い賃料水準を挙げている。
首都圏では、2021年から2023年にかけて、LMTの新規供給が3年連続で過去最高を記録し、空室率が大きく上昇することになった。首都圏全体で53%に達した。一方、千葉県は31%と、埼玉県の40%、神奈川県の65%を下回った。新規供給量の少なさが、競争力を支えたとしている。
<2022年Q1~2025年Q2のLMT新規供給率(対2021年Q4の貸室総面積)>
<2022年Q1~2025年Q2の新規供給のうち、都心から30㎞圏内の割合>
また、千葉県エリアでは、都心近郊で新規供給の量が多かったことも要因としている。具体的には、東京駅から30㎞圏内(都心まで約1時間)で竣工した物件の割合を見ると、千葉県は67%となり、埼玉県の42%や神奈川県の21%を大きく上回った。ここ数年の千葉県での新規供給は配送効率の良い、都心近郊の立地が多くを占めており、この点がテナント誘致において有利に作用したと考えられる。
さらに、相対的に割安な賃料水準も大きな要因としている。2022年Q1時点の賃料を比較すると、千葉県の賃料は東京都を43%、神奈川県を13%下回っていた。低い空室率を背景に、千葉県の賃料は2025年Q2までの3年間で約2%上昇したが、依然として東京都、神奈川県との間には、2022年Q1時点と同程度の差が維持されている。
地域特性やインフラ面の充実も
新規供給物件が立地や賃料水準といった条件でテナントに選ばれたことに加え、拡張意欲が旺盛なアパレル企業が集積していることも、千葉県での需給バランスの安定的な維持に寄与したとも考えられる。
<荷物の業種分類(2024年までに竣工済みLMT)面積ベース>
千葉県のLMTに保管されている荷物のうち、「アパレル」の割合は31%と、他の都県と比較して圧倒的に多い。その理由としてアパレル商材は、値札の貼り付けや検品などの物流作業で多くの人手を必要とする特性がある。東京都の商業地への配送アクセスに加え、労働力の確保という観点から、2000年代初頭にはアパレル企業の物流センターが千葉県湾岸エリアに集積。
その後は内陸部にもアパレルの集積地が拡大したが、近年、アウトドアを含むスポーツ系アパレルが都心での新規出店を加速しており、これが千葉県の物流施設需要をけん引したとみられる。
地域特性とインフラの強みもある。千葉県のLMT市場は、日本最大の空港の貨物需要を見込み、成田空港周辺ではインフラ整備が進められている。また、圏央道では、2027年3月までに圏央成田ICを含む区間が開通予定だ。一般幹線道路でも、国道464号(北千葉道路)(成田市~松戸市)が全面開通すれば、成田から都心部への配送時間短縮が期待される。
CBREでは、千葉県のLMT賃貸市場は、今後も安定した需給バランスで推移すると予想。これまでの分析で確認された都心部までの距離の近さ、整備されたインフラ基盤、労働力の確保のしやすさやテナント業種から、今後も底堅いとしている。千葉県のLMT市場は、立地特性を見極めた開発によって新たな需要の創出が期待できる市場であるとしている。
CBRE/圏央道エリアでは賃料下落するものの、首都圏3エリアでは上昇