物流最前線/プロロジス山田会長に聞く 倉庫を「物流施設」に変えた25年、次の一手は

2026年03月24日/物流最前線

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1999年に日本法人を設立してから四半世紀。外資系デベロッパーとして日本市場に参入し、「賃貸物流不動産」という歴史そのものを創ってきたのがプロロジスだ。いまや大型マルチテナント型物流施設はよく見る風景となったが、創業当初は理解を得られない状況だったという。その後、BTS型や冷凍冷蔵、都市型、HAZMAT(危険物)倉庫と次々と新機軸を打ち出す日本法人トップの山田御酒会長 兼 CEOに、この25年間の軌跡と挑戦、次世代物流施設への指針、物流最適化への一手を聞いた。 取材:2月20日 於:プロロジス 日本法人本社

「倉庫を借りる」という発想が
なかった時代から、供給過多へ

――  25年間を振り返って、最初に思い浮かぶのはどんな光景ですか。

山田  2000年代初頭、日本では物流会社が自社倉庫を所有するのが一般的でした。私たちが提案した“賃貸型の物流施設”は、正直に言ってほとんど理解されなかった。物流は本業でも、不動産の保有は本業ではない。欧米では当たり前の、資産を持たずにオペレーションに集中するという考え方自体が認知されていなかったのです。

当時、物流業界での不動産は、「運送業」「倉庫業」とは分断された構造で、「ロジスティクス」「サプライチェーン」という包括的な概念も今ほど浸透していない。そうした中で、我々は一貫して“物流は社会インフラであり、物流施設は、専門不動産が支えるべき分野だ”と訴え続けてきました。

――  山田会長がプロロジスに入社した経緯は?

山田  入社前は建設業のフジタにいて、プロロジスの営業を手伝っていました。日本では物流施設を賃貸するという発想がまだ珍しく、外資として土地取得も簡単ではなかったので、フジタが間に入って仲介することもありました。実はフジタの米国法人時代に、物流施設を開発し企業に貸し、不動産資産を証券化して日本の投資家に販売するビジネスも経験していて、その縁もあって2002年にプロロジスに入社しました。

――  米国で開発経験があったと。日本への参入当初、競争環境はどうでしたか。

山田  「プロロジス」という社名もほぼ知られていない中で、外資系同士で比べられることは多かったですが、我々が本当に意識していたのは国内の総合大手デベロッパーです。三井不動産や三菱地所のような大手が本格参入しなければ、この分野は社会に認知されないし、本流にならないと思っていました。

――  本当に、その通りになりましたね。

山田  国内大手総合デベロッパーはその後、徐々に物流施設事業に参入してきましたが、本格化した大きな理由の1つは、コロナ禍の2020年~2022年の2年半、オフィスや商業施設の需要が停滞する一方、ECが急拡大したこと。我々が手掛けた大型の効率的な物流施設が脚光を浴び、国内総合デベロッパーが、一気に物流不動産業界に入ってきたのです。

――  こうした市場環境の変化をどう捉えていますか。

山田  供給量は2023年をピークに年間750万m2まで拡大し、その影響で今も空室率が首都圏で約10%、これはちょっと異常な数字です。参入当時と比べて分母が全く違うし、施設面積も拡張していて、その10%が空いているわけですから。その後も24年、25年と600万m2程度の供給が続いています。

建設コストもここ2年くらい、体感で3~4割上がった印象です。普通のドライの倉庫を作っても、なかなか事業採算が合わない。何より建設現場にも人が集まりにくいので、以前は1年程度で完成していた案件が、いまは1年半から2年かかっている。いま、物流不動産を提供するデベロッパーとして非常に厳しい状況になっています。

<25年間を振り返る山田会長兼CEO>
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――  供給過多と建築コスト高騰、二重苦への打開策は。

山田  5年ほど前から都市型物流施設「プロロジスアーバン」や冷凍冷蔵、HAZMAT(危険物)倉庫を展開してきました。物流施設の大量供給の波が来る前に、差別化領域も開拓してきたことは結果的に大きかったと思います。

一方で、引き続き老朽化した物流施設の更新需要や、小型で散逸していた倉庫の集約需要は間違いなくある。それらを含めて年間400万m2くらいの需要がコンスタントに見込め、そのくらいの供給量であれば需給バランスは非常に良いと考えています。

<東京都内に開発中の都市型物流施設「プロロジスアーバン東京板橋1」>
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<2026年2月に完成した「プロロジスパーク古河7」のHAZMAT倉庫(右手前10棟)>
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技術革新が生んだ“日本型”モデル
倉庫から次世代型「物流施設」へ

――  25年間の歴史の中で、技術的にも多くの挑戦がありましたね。

山田  「プロロジス」の知名度を上げるには、まず実績をきちんと評価していただける企業に営業する、ゼロからのスタートでした。転機になったのは、東京都が売り出した坪100万円、容積率300%の土地。正直、「こんな高い土地を買ってどうするんだ」と思いましたよ。でも容積率をフルに使えば7階建てにできると分かった。じゃあ、その可能性に賭けてみようと。2003年にマルチテナント型の「プロロジスパーク東京」を竣工しました。

――  多層構造の物流施設は当時、世界にも前例がなかったのですか?

山田  香港などには一部ありましたが、欧米にはなかったです。日本で地価の高い都市近郊で大型施設を成立させるには、容積率を最大限活用する必要がある。苦戦したのはどうやってトラックを上階に上げるか。

知恵を絞って誕生したのが、トラックが自走で上層階へアクセスできるランプウェイ方式。最初は片側だけでしたが、傾斜角度や安全対策、事故時のバックアップまで徹底的に検討し、入出庫動線を分離することで安全性と効率を両立させた「ダブルランプ構造」が生まれました。

<ダブルランプ構造の物流施設事例「プロロジスパーク京田辺」>
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――  そうした設計思想は、現在の国内物流施設の標準モデルのようになっていますね。

山田  そうですね。就労環境の改善も重視しています。都心の一等地にあるオフィスビルのようなロビーやカフェテリア、女性用設備を充実し、かつて「暗くてきつい」と言われた倉庫のイメージを刷新し、人材確保を後押ししています。

――  近年、注目されるデータセンター開発についての考えは。

山田  データセンターについては、慎重にみている。米国では結構作っているが利用企業が確定している案件に限っており、長期保有は前提としていません。電力確保に時間がかかり初期投資も大きい。地域合意の形成も必要です。会社ごとに考えがあると思いますが、我々が25年かけて築いた強みは、物流不動産に特化していることだと思っています。

  • <開放的な共有スペース>
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  • <広々としたオフィスや会議室>
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■物流施設のイメージ向上へ
プロロジスでは基本的に「倉庫」という言葉は使わない。「物流施設」と呼んでいるという。名は体を表すというが、プロロジスが提案した大型物流施設は画期的で、従来の倉庫イメージを変えた。平屋建ての専用施設が中心の米国と違い、日本では複数の企業が入居するマルチテナント型で多層階構造が中心となる。働く人の環境を整えれば雇用確保につながる。「自分がここで働くなら、何があったらうれしいか」、山田会長はそんな視点で、“日本型”物流施設をアップデートしていった。

東日本大震災が変えた使命感
社会インフラとしての機能強化

プロロジスは、近年増加する自然災害を背景に、物流施設を開発地の自治体に災害時の避難場所として提供するなど地域との共生にも取り組む。その代表的なプロジェクトの1つが、先ごろ福島県郡山市で動き出した広域防災拠点「福島郡山LLタウン」開発だ。物流施設+防災機能として、太陽光発電パネルや蓄電池や非常用発電機を備え、「止まらない物流」を支える施設へと機能強化を進めている。

<広域防災拠点「福島郡山LLタウン」全景イメージ>
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――  災害大国の日本では、地方自治体と契約し避難場所に指定されるケースが非常に増えてきました。

山田  そうですね。建物自体が免震構造になっているものも多いので地震の時も安全で、駐車スペースも豊富にある。トイレも使えますし水や食べ物も備蓄しています。物流面だけでなく地域の役に立ちたいんです。

兵庫県の「プロロジスパーク猪名川1・2」はその最たるもの。山間部に土地を開発し37.7万m2の物流施設と防災広場、ドクターヘリの発着場も作りました。年に一度、自衛隊や消防、警察が集まり、入居企業や地域の皆さんも参加され大規模な防災訓練を行っています。その様子を行政や各方面から視察に来られ、本当にありがたいことです。

<「プロロジスパーク猪名川 」にはヘリポートも設置>
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――  それにしても、2011年の東日本大震災は大きなインパクトがありましたね。

山田  そうですね、私も仙台港周辺の被災状況を目の当たりにし、物流施設が社会インフラであることを痛感しました。

――  福島県の広域物流施設はフクダ&パートナーズとの共同プロジェクトですが、どのような経緯があったのですか。

山田  福田哲也社長とは同じフジタ出身で、長年の付き合いで約40年前、フジタ時代に米国で会っているんです。その後、仙台支店で仕事をしていたという共通項もあり、仙台はお互い思い入れのある場所。震災時もすぐに現地へ飛んで行きましたが、まさに、この世の果てのような世界でした。

――  そこから発展したのが、BCP機能を強化した防災対応の物流施設ですね。

山田  現に先日、岩沼市(宮城県)で津波アラートが鳴ったときも、ご近所の方が車で避難されたと聞いています。結果的には大事には至りませんでしたが、防災拠点として地域に認知されていると感じます。

――  物流施設に求められる役割にも変化が生じました。ところで、東京湾岸沿いには古い倉庫群がありますが、これについてはどうお考えですか。

山田  我々は不動産事業者として不動産協会の物流事業委員会にも加盟しており、その中でも大きなテーマとして挙がっています。プロロジスとしてはぜひやりたいし、我が社だけでなく委員会に携わっている27社の大手不動産会社は皆、そうでしょう。ただ日本では利権関係が複雑で民間だけで合意形成するのは難しい。モデルケースとして1地域、1棟からでも、国が旗を振ってくれるなら、我々は喜んで知恵と資金を提供するつもりです。

賃貸不動産から踏み込む
物流最適化へ、次の一手は

<山田会長兼CEO>
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――  2024年問題をはじめドライバー不足など社会課題解決へ、物流施設が果たす役割についてどう考えていますか。

山田  年に1回は必ずお客様の社長と直接お会いするんですが、今年は皆さん同じことを聞かれますね。「ロボットや機械をやってくれないのか」と。ただ、私はこう申し上げています。人手不足問題の本質は「無駄をなくすこと」だと。その一番の解決策が共同配送です。

例えば大手飲料メーカーは製造では競争していますが、配送先はほぼ同じ。それなのに別々で運んでいては積載率が低いのは当然です。物流で競争しているわけではないなら、同じ施設に入って荷合わせができるような、しくみや場を提供したいと考えています。

――  物流施設側がそこまで踏み込むのですか。

山田  「自動倉庫を入れてくれないか」「ロボットを導入できないか」という声は非常に多い。そこでロボットや自動化設備を施設側で導入し、その分を家賃に少しずつ上乗せして回収する。企業が一括で大規模な投資するのは難しいですが、賃料に含めるなら現実的です。トラック台数やCO2削減にもつながるWin-Winな仕組みだと思います。

既に、千葉県八千代市の物流施設ではデバンニングロボットを導入しており好評です。欧州の物流施設では自動化が進んでおり、今後倉庫の中で人が過酷な作業をするのではなく、オペレーターやエンジニアが遠隔で管理する時代がくるとみています。

――  今後の国内開発について、あらためて方針を。

山田  第1に付加価値を付ける、賃料に見合う形を作ることです。冷凍冷蔵、HAZMAT(危険物)、都市型などの開発ですね。2つ目は既存施設の機能更新。1981年以降の新耐震基準の建物なら構造体を活かして改修でき、ゼロから開発すれば4年かかるものが、1年半で済む可能性があります。そして最も重要なのは共同配送や自動化を前提とした「ハブ型物流施設」開発。首都圏や近畿圏、中部圏に複数整備すれば、物流効率は格段に向上します。

――  共同配送が本格化する中、さらなる挑戦ですね。

山田  人手不足が続く以上、やらざるを得ません。単純に人件費が上がっていく中で、お金さえあれば人を集められるという状況ではなくなってくると、省人化技術は使わざるを得ない。企業文化や慣習が壁になっていましたが、実際にもう動き始めています。単にスペースを貸すだけではなく、効率を設計するような機能を担うこと。これが、これからの物流施設の考え方だと思います。

――  今後の25年をどう描きますか。

山田  我々は25年間、広く物流業界の役に立ちたいというスタンスで、ずっとやってきたつもりです。社会環境が変化していく中で、物流施設としてさらに一歩も二歩も踏み込んで、自動化や省人化の提案をし、物流を支える存在であり続けたい。

取材・執筆 吉坂照美、山内公雄

■山田御酒 代表取締役会長 兼CEO プロフィール
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2002年プロロジスに入社。2005年からマネージング・ディレクター兼日本共同代表、2009年よりプレジデント兼CEO、2011年6月のAMBプロパティーコーポーレーションとの経営統合に伴い代表取締役社長となり、同社の経営全体を指揮している。2022年3月に代表取締役会長 兼 CEOに就任。

プロロジス入社以前は、株式会社フジタに勤務。1983年から米国カリフォルニア州にて、不動産開発に従事。1988年からは米国における不動産投資信託(REIT)の組成に携わり、不動産の証券化、資産運用、資産管理に豊富な経験を持つ。1991年からは英国の不動産投資に従事した。1976年早稲田大学商学部卒。

■プロロジス オフィシャルサイト
https://www.prologis.co.jp/

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