CBREは8月31日、特別レポート「シティ・ロジスティクス」を発表した。
ますます高まる都市部への物流サービス(シティ・ロジスティクス)に対応する、「都市型倉庫(シティ・ウェアハウス)」の有用性を考察。さらに、首都圏での事例を取り上げ、その実態について検証している。
eコマースやコンビニエンスストアのような小規模店舗の増加、また、配送の小口化・多頻度化に伴う輸送効率の低下を受けて、配送サービスを維持することが困難になってきている。このことは、輸送運賃の上昇を伴って多くの産業に影響を与えている。
解決方法のひとつとして、最終配送先付近に中間配送拠点を設置することで、配送サービス全体の効率性を高めることが検討されている。これら中間配送拠点は、都市部に設置する必要があるため家賃が高額になりがちな一方、小さい面積で目的を果たすことができるため、支払い賃料の総額は抑えることができる。
都市部に立地し、小区画で利用可能な倉庫のことを「都市型倉庫(シティ・ウェアハウス」と呼ぶことができる。いわゆるラストマイル配送の拠点となるような倉庫で、都市型倉庫を活用した物流ネットワーク「シティ・ロジスティクス」の重要性が今後一層高まるとみている。
<埼玉県・千葉県・神奈川県への依頼 面積別件数割合(CBREへの依頼を集計)>
実際に首都圏のテナントニーズを分析すると、都心部では小規模な倉庫に対するニーズが高いことが確認できる。埼玉県・千葉県・神奈川県では1000坪以上の倉庫を希望する割合が最も多く、半数近く(46%)を占めるのに対し、東京都では1000坪以下の倉庫を希望する割合が8割以上(83%)に達した。
<東京都の1000坪未満空室の築年数別割合(2018Q2)>
一方、東京23区の1000坪未満の空室は減少の一途をたどっており、それらの1000坪未満の空室には施設の老朽化が目立つ。2018年Q2時点の1000坪未満の空室のうち、築40年以上と推定されるものが件数ベースで40%以上を占めた。
大型物件が区画を小割りにして貸し出す場合、追加の建築コストや契約管理でより負荷がかかることは考慮しなければならないが、小規模ニーズを取り込むことで高い稼働率を維持することが期待できるため、賃料競争力も高まると考えられる。
都市型倉庫に対するニーズは、東京都心のみならず全国の中核都市に共通するものと考えられる。物流業界では配送サービス全体の効率性を高めることが喫緊の課題。都市型倉庫はその解決策のひとつとなると同時に、新たなビジネスチャンスとなり得るとしている。
■シティ・ロジスティクスレポート
https://www.cbre.co.jp/ja-jp/research-reports/japan-research-archives
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