日本郵船は10月24日、自動車専用船「MONOCEROS LEADER(モノセロス リーダー)」に搭載した最新の情報統合型船橋(ブリッジ)と、同船の内部を公開した。
<MONOCEROS LEADER>
<船内の自動車積載スペース>
<エンジンルーム>
<船内共用部>
<船長室>
MONOCEROS LEADERは10月22日に引渡しを受けた新造船で、24日午前に川崎港へ就航。最大7100台の自動車を積載可能で、2日間の停泊後、国内数港を周って自動車を積み込み海外の仕向け地へ出航する。
<ブリッジ外観>
<ブリッジ内部>
搭載されている情報統合型船橋は、海難事故の原因のうち半数を占めるヒューマンエラーの低減や、航海士の業務効率向上を図るために日本郵船が開発した。船橋や航海計器のデザインと配置を人間工学に基づいて最適化しているほか、機器のIoT面を強化し、航海の安全と効率の向上を図っている。
<着座式コンソール>
コンソール(操作卓)は、周囲の状況把握に集中しやすいよう着座式になっている。航海計器や操船機器類を一般的な船橋の3分の2程度の範囲に集約配置したことで、航海士が情報収集のために船橋内を移動する手間を省いた。
<操船機器類>
コンソールには、衝突を避けるための避航操船を着座状態で容易に行えるよう、ジョイスティック式オートパイロットを採用。緊急時の手動操舵用ミニホイール(舵輪)も設置し、安全に配慮している。
<J-Marine NeCST>
<操作画面>
船舶運航支援装置「J-Marine NeCST」は、子会社のMTIや日本無線と共同で開発。航海士と水先人が船橋内で行う情報共有を効率化し、多くの船舶が行き交う海域で航海士の当直人数を増やした際にも、容易に情報共有できるようにした。画面に直接情報を書き込めるなど、紙の海図と同様の操作感で使用できる。
<大型化した窓>
また、船橋全体についても窓の大型化や、死角になる窓間部分を最小化するなど最適化を図っており、着座位置から十分な視界を確保できる設計とした。
<ウイング>
<ウイング用コンソール>
船橋から左右に張り出すウイング部分は全天候型とし、窓の大型化によって視認性を向上。遠隔操作スタンドやマルチファンクション・ディスプレイなどで構成するコンソールを設置したことで、ウイングに居ながら出入港や離着桟時などの操船作業を可能にした。
<MONOCEROS LEADERのD’Lima船長>
情報統合型船橋について、MONOCEROS LEADERのPavan Peter D’Lima船長は、「ブリッジの1か所で操縦を完結できるため、操作性はとても素晴らしい。ウイングにもモニターやコンソールが設置されているため、オペレーションも効率化できる。操縦席からの視界が広く設計されており見通しが良く、衝突や座礁といった事故リスクの低減も図れる」と使用した感想を述べた。
日本郵船では情報統合型船橋について、コンテナ船や自動車専用船、原油タンカーへの搭載が決定しているほか、他の船種についても順次搭載を検討していく方針。将来的には自動運航船の実現も視野に入れ、情報統合型船橋をさらに進化させていく予定だ。
■MONOCEROS LEADERの要目
全長:199.98m
船幅:35.8m
喫水:10.427m
船速:20ノット
最大積載台数:7100台
日本郵船/川崎港で小学生の外航船見学に協力、国際物流に関心を