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連載 物流の読解術 第4回 東京海洋大学名誉教授 苦瀬 博仁

2023年07月03日/コラム

20230606rensai04 - 連載 物流の読解術 第4回 東京海洋大学名誉教授 苦瀬 博仁

人と比較した、物流の特殊性と柔軟性

我々人間は、「物」になった経験が無いので、「物流」を考えるときでも、ついつい人間の行動を基準に考えてしまう。

そこで、前回(第3回)は「物は赤ちゃんと同じ」という視点で物流機能から考えてみたが、今回は、さらに一歩進めて「人と物の比較」という視点から、特殊性と柔軟性を考えてみたい。

物(商品、物資)の7つの特殊性

物(商品、物資)は、人と比較して、7つの特殊性を挙げることができる。
単位の不定性(1)とは、「商品や物資の測定単位が複雑で多様なこと」である。この測定単位には、重量、体積、個数、ダース、箱などがある。

品目の多様性(2)とは、「物流で扱う品目の多さと複雑さ」である。コンビニでは約3000品目あるとされているため、品目ごとに扱う物流は非常に複雑になる。人は、強いて言えば、大人料金と子供料金、普通車とグリーン車などの違いだろうか。

移動中の変化(3)とは、「物流の過程で商品の内容が変化すること」である。1箱1ダースが、5本と7本に分けられることもある。

移動の方法(4)とは、「人の移動とは異なり、商品や物資は自らの意志で移動できないために、積みおろしなどで人手が必要なこと」である。まさに、赤ちゃんと同じということになる。

移動目的の多様性(5)とは、「商取引経路と物流経路が対応しないこと」である。たとえば、通販会社に注文しても商品は倉庫から配送される。このため、人と異なり、多少遠回りしても少し長く保管しても、気にならない。

移動サイクルの多様性(6)とは、「商品や物資は一方通行であり、しかも輸送や保管の時間や期間が、時、日、週、月など様々なこと」である。人は、朝自宅を出発して夜帰宅するように、原則として1日1回転であり規則性がある。

移動量の変化(7)とは、「商品や物資によって特定の季節や取引上重要な日(五・十日、月末など)にピークが集中すること」である。

物(商品、物資)の4つの柔軟性

一方で、人に比較すれば、物(商品、物資)には柔軟性があって扱いやすい面もある。

時間の柔軟性(1)とは、「品目によっては事前に輸送して保管しておくことで、時間の変更が可能なこと」である。

空間の柔軟性(2)とは、「配送経路を変更して遠回りすることも可能であり、保管場所を変更することできること」である。

数量の柔軟性(3)とは、「注文のあった商品の数量を削減できなくても、貨物車への積載方法を工夫することで貨物車台数の削減が可能なこと」である。

手段の柔軟性(4)とは、「配送車の代わりに台車や自転車を用いたり、長距離トラックの代わりに鉄道やフェリーを利用するように、時と場合によって交通手段を変更できること」である。

物流改善に活かしたい特殊性と柔軟性

特殊性にとらわれてしまうと、物(所品、物資)の扱いは難しい。しかし、柔軟性を利用すれば、様々な課題も解決可能かもしれない。

大事なことは、物の特殊性を理解しながら、物の柔軟性を利用することに尽きるように思う。

人と比較した「物の特殊性」

(通勤通学、帰宅、観光等) (日用品、食材、衣類等)
1、単位の不定性 人、台のみ トン、個、m3、台など多様
2、品目の多様性 大人、子供、高齢者など コンビニでも3000品目
3、移動中の変化 移動中に変化しない 移動中に小分けや組合せ
4、移動の方法 自ら乗り降りし、移動する 荷役が必要(赤ちゃんと同じ)
5、目的の多様性 目的と行動が一致 商取引で発生、目的と不一致
6、移動サイクル 朝に家を出て、夜に家に帰る 物は一方通行、時間も多様
7、移動量の変化 曜日や時間で変化 季節や週の変動が大きい

人に比較した「物の柔軟性」

(通勤通学、帰宅、観光等) (日用品、食材、衣類等)
1、時間の柔軟性 通勤時間の大幅変更は困難 事前の輸送保管で時間変更可能
2、空間の柔軟性 行先に最短経路で移動 輸送経路や保管場所の変更可能
3、数量の柔軟性 人数の変更は困難 台数や距離の削減は可能
4、手段の柔軟性 交通手段の選択可能 鉄道、自転車、台車との組合せ可

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