公正取引委員会は6月24日、令和6年度の荷主と物流事業者との取引に関する調査結果と、優先的地位の濫用状況について発表した。
公取委では、独占禁止法に基づき物流特殊指定の遵守状況や、荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、継続的に調査を実施している。
令和6年度は荷主と物流事業者との取引について、荷主向け3万名(回答率50.5%)、物流事業者向け4万名(同31.5%)に調査を実施。その結果をふまえ、コスト上昇分の取引価格への反映の必要性について協議をすることなく取引価格を据え置く行為等が疑われる事案に関して、荷主100名に対する立入調査を実施した。
また調査結果をふまえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行った荷主646名に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。
<注意喚起文書を送付した荷主の業種別内訳>
注意喚起文書を送付した荷主の上位3業種は、主に農産物、林産物及び水産物の販売事業等を営む「協同組合」、「飲食料品卸売業」、「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」の順だった。
<注意喚起文書を送付した荷主の行為類型別内訳>
また、問題につながるおそれのある行為についての回答を行為類型別にみると、「不当な給付内容の変更及びやり直し」、「代金の支払遅延」、「買いたたき」の順に多かった。
調査によると、物流事業者に対し理由を説明せず、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った(物品賃貸業)事例や、物流事業者に対し理由を一切説明することなく、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った(物品賃貸業)ケースなども明らかとなった。
また、自社が開催する展示会における家具の運送等の委託をする際に製品を購入させたり(家具・装備品製造業)、自社のグループ会社が運営する給油所で運送車両の燃料を購入させる(鉱業、採石業、砂利採取業)ことも、独占禁止法上の問題につながるおそれがある。
荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案の処理状況については、2件の法的措置(橋本総業に対する確約計画の認定)、1件の警告(イトーキに対する警告)、29件の注意を行った。
注意対象となった業種をみると、農産物の販売事業等を営む協同組合(4件)、建築材料、鉱物・金属材料等卸売業(4件)、道路貨物運送業(3件)、物品賃貸業(3件)、生産用機械器具製造業(3件)、倉庫業(2件)、飲食料品卸売業(2件)などとなっている。
また、注意対象となった行為類型では「買いたたき」が57件のうち22件と最も多く、次いで「不当な給付内容の変更及びやり直し」が15件、「不当な経済上の利益の提供要請」及び「代金の減額」が各7件となった。
今後、公取委は今回の調査結果について、関係省庁及び関係団体を通じて周知徹底を図り、違反行為の未然防止に向けた取組を進めていく。
また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律による改正の対象取引に、特定運送委託が追加されることをふまえ、「独占禁止法上の優越的地位の濫用や、中小受託取引適正化法の禁止行為に当たり得る具体的な事案に接した場合、これらの法律に基づき厳正かつ機動的に対処していく」としている。
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