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今、物流センターに求められるものは何か/CBRE不動産フォーラム2016

2016年07月21日/物流最前線

<アンディー・ハーファート エグゼクティブディレクター>
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<ポール・マクギャリー CEO>
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『日本が直面している「自動化の遅れ」に如何に対応していくかを検討すべき』

立地・賃料は、テナントのニーズをどう捉えるか

ハーファート 現在、圏央道沿いに物流施設開発が集中していますが、今後2年間に首都圏の物流施設の賃料と空室率はどうなるのでしょうか。

マクギャリー 立地と賃料に魅力がある物件は常に需要があります。ですから、圏央道沿いだけでなく、それ以外のエリアにおいても、新規供給物件の中には懸念される物流施設も散見されます。

現在、物流不動産を含む国内のあらゆるセクターの不動産市場に多額の資本が流入しています。さらに、新規のデベロッパーの参入と当社を含む既存デベロッパーのビジネス拡大により、市場での競争も激化しています。加えて、ここ数年の地価と建設費はかつてないほど高騰しています。

一方、賃料はそれほどの伸びは示していません。リーマンショック後に落ち込んだ賃料は、それ以前の水準まで回復しているものの、今後も大幅な上昇が期待できるような状況ではありません。適正価格の開発用地の供給が非常に限定的であり、建設費の上昇が進んでいるにもかかわらず、賃料の上昇は抑制的です。

デベロッパーが不動産投資を行う際、達成可能な賃料を想定しますが、特定のロケーションでは想定賃料の見込みが高すぎると思われるケースが見受けられます。どれほどのリターンをどれほどの時間枠の中で達成できるか、というのが重要なポイントです。

どのような物件であっても、賃料次第でテナントを確保することができますが、現在多くのテナントが抱える労働力確保の面からすると、必ずしも魅力的ではないロケーションに多くの不動産投資が集中しているケースがあります。

建物の設計は一般的でデザイン面での訴求力に欠けていながら賃料が高めに設定されているケースがあります。そうした物件では空室率が高くなり、その結果オーナーは賃料を下げざるを得なくなります。とは言え、このような傾向が既存物件全般の賃料下落につながると考えているわけではありません。

ハーファート 圏央道エリアの物件の取得について、中嶋さんは懸念がありますか。

中嶋 土地があるから購入するという形は、私たちは過去もこれからもするつもりはありません。当社でアクイジョン(新規顧客獲得)メンバーと社内で話しているのは、良い物件をお値ごろ価格でということです。

そのためには、土地を仕入れるのも適正価格で、建築費もきちんとコントロールしないといけません。マクギャリーさんがお話した「テナントのニーズをどう捉えていくか、クライアント、テナントに対してどのように物件を提供していくか」はやはりとても大事なことです。

不動産で出来ることはそんなに沢山はありませんが、その中でも私たちが出来ることはできる限りやっていきたいと思います。

例えば借りるスペースをフレキシブルに提供する。面積をフレキシブルに可変、あるいは期間を短くする。こういったことは今のテナントのニーズに合致しています。

また最近私どもで2月に竣工した物件は、200パーセントの容積100パーセントちょっとしか使いませんでした。要は容積を余らせて物を作る。そうすることで、テナントが例えばメザニン床を貼ったり、自動ラックを入れた時に面積カウントする部分を吸収出来るような、フレキシブリティを持ったものを開発しています。

大阪の堺で似たような施設を作っていますけど、多分このあと宮田さんや寺西さんから話が出てくると思いますが、機械を施設の中に入れるようになったら、建物はどうあるべきかなど、こうしたニーズに応えていくのが物の供給者として必然になってくるかと思います。

ハーファート 非常に興味深いご指摘がありましたので、後程、取り上げてみたいと思います。今、柔軟性について言及されましたが、いろいろな運営方法や契約条件を提供するとのことですが、寺西さんはこれを検討されているかと思います。ちょっと考えを聞かせていただけますか。

寺西 柔軟性についてですね。今後、GROUNDさんが扱われているようなロボットが物流センターの現場に普及してくると考えていますが、ロボットは倉庫内作業をする上でほぼ人に近い存在になってくると思います。それは、従来の設置型のマテハンとは異なり、移動できるという観点で、です。

例えば、ある物流センターでは今日はあまり物量がないので倉庫内作業をするリソースはあまり要らない。また、別の物流センターでは物量が跳ねていて、いつも以上にリソースが必要になりそうだ。こういったことが発生した時、ロボットであれば移動ができ、リソースをフレキシブルに活用することができます。

先ほど、スペースのフレキシビリティについての話がありましたが、スペースだけではなく、倉庫作業リソースもフレキシブルになる、そういう時代が近づいてきているのではないでしょうか。早く、そうなってほしいと私個人としては思っています。

ハーファート 宮田さんの立場からはいかがですか。

宮田 若干、流通業にフォーカスした話になると思いますが、昨今オムニチャンネルと言われているように、人の購買行動が本当に多様化してきているという点を抜きにして建物のあり方は語れないと考えています。

今までは人がお店に行って商品を買って帰った。そのための商品補充として物流センターからお店にトラックで配送するという極めてシンプルな物の流れだったと思います。

しかし、今はEコマースの発展とともにまさにオムニチャンネルと言われていて、店舗配送もあれば、いわゆる個人宅配ですね、そのきめの細かいオペレーションを強いられるという、物流センターの要件は非常に複雑化してきています。特にこの2、3年というのは高度化してきていると思います。それを考えると、やはり従来型で紋切り型の建物ではやはり満たされないわけです。

特にわれわれが提供するバトラーというロボットは専用ラックですが、2m60㎝までしかありませんので、その上は空間になってしまいます。その中でもスピードを重視し、こうしたロボットを使わないといけないと考えた時に、ウェアハウスの建物というのはどういうふうに設計されるべきか、ユーザー視点からもう一度考えて、購買動向を考えた上で物流センターのあり方、建物のあり方を考えていくべきだろうと思います。

ハーファート 会場の皆さんに「2年後、首都圏物流施設の賃料はどうなると思うか」でライブ投票をお願いしました。投票では「現状と同じくらい」が53%、「現状より高い」が38%、「現状より低い」9%という結果でした。概ね楽観的な見方が多いようですが、中嶋さん、投資家としてはポジティブな結果でしょうか。

中嶋 皆さんの期待感が逆に反映されていると思いましたが、物流の賃料はたぶん供給によって下がっていくプレッシャーと、あともう一つはエンドユーザーの払っている賃料とマスター賃料のギャップ、ここが縮んでいくことの相殺がこれから進んでいくと思います。

ですから、物流施設レベルの賃料が下がっていくのと、エンドユーザーがもう少し実は高い賃料を払っていることの差が縮まることによって、なんとなく今と同じくらいの賃料感に収まっていくというのは合理的かなという気もします。

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