<寺西雅尚シニアマネージャー>
『10年後に、ドローンがそこら中を飛んでいるような世界は、個人的には来ないと思っている』
<宮田啓友社長>
『エンドユーザーの購買行動に着目しながら物流センターの設計をすべき』
Eコマースの伸長と物流センターの在り方とは
ハーファート 次にEコマースの伸長とテクノロジーとの関係についてですが、米国では現在3つのタイプの物流センターが一般的になっています。
一つは3万坪規模のメガサイズの全米向けの物流センター、二つ目は中規模で3000坪クラスのクロスドッキングの都心部での物流センター、三つ目はさらに小さな倉庫でありアクセスセンターとなる、例えば300坪くらいのサイズです。日本の物流センターも米国と同様な推移を辿るのでしょうか。
寺西 Eコマースが今後発展していくにあたって、Amazon Prime Nowのように、日用品を1時間以内に届けるとか、2時間以内に届けるとか、そういったマーケットは広がっていくと思います。
ただ一方で、その配送拠点として300坪クラスの倉庫が都心部に増えるのかというと正直わかりません。
なぜかと言うと、Amazon・楽天のようなEコマース専門業者がリーダーとなるのか、もう一度スーパーなどが店舗から配送するスタイルにチャレンジするのか、コンビニがそのセンター機能を担うのか、など、各プレーヤーがどこまで仕掛けてくるかによると考えているからです。
ハーファート 300坪の施設というのが日本中で見られるという状況になると思いますか。
マクギャリー その数字は少し小さすぎると思います。店舗がフルフィルメント機能を備え、受注と配送を連動させたデリバリーサービスを提供することは十分考えられます。
しかしロジスティクスの観点からすると、スケールメリットを考慮した最低限の規模というものがあり、300坪では小さすぎるのではないでしょうか。
とは言え、場所によってはメガ・フルフィルメントセンターではなく、4万坪の大型物流施設の中で1500坪~1万坪の床を賃貸して利用するようなEコマース企業も増えています。
今でも大型施設を専用センターとして1棟借りするケースも無いわけではありませんが、1500坪~1万坪のスペースニーズが増加している印象です。
グッドマンは大規模な物流施設の開発を戦略としていますが、最小賃貸面積や契約期間については柔軟性を持たせています。特に床面積については将来の拡張性も重要な要素です。
テナントが賃貸施設の選択をする際、将来の増床ニーズに対応可能な物件かどうかも重視する傾向にあります。新たな場所に移転して新たに人手を確保するのは手間もコストもかかります。
ハーファート 物流施設でも、リージャス(レンタルオフィス世界No.1ブランド)のように、レンタルスペースを提供することはあるのでしょうか。いわば、「サービス・ロジスティックのオペレーター」ですね。
中嶋 物流不動産業界は、実はそのステップを一つ踏み出しています。10数年前は、テナントに一括貸しで、物流企業に対し20年、30年で貸していました。これを小さく時間とスペースを区切ってエンドユーザーに貸す。これが倉庫のビジネスモデルでした。
この十数年でマルチテナント型倉庫というのができ、一つ一つの区画が700坪くらいまで小さく区切って貸せる。これを丁寧にエンドユーザーとコミュニケーションしようとすると、小さな区画単位で比較的短い期間で貸すことも多くなる。これが不動産業界というか、デベロッパーがこの10数年間で取ってきたリスクだと思います。
これをもう1歩踏み込んでやろうとすると、例えばテナントの季節波動を吸収するスペースを設けるとか、あるいは集中分散という10年くらいのサイクルで進んでいく物流業界の動きに対して、大型の施設がどのようにテナントのニーズを満足させていけるかという答えを、フレキシビリティという言葉で解決していかないといけないと思いますね。
技術革新というのは物流だけじゃなくて、テクノロジーの世界でもそうです。集中分散、いつも繰り返しています。この数年間は、集中させて効率化する、というのが大きな流れでしたが、不動産は1回作ると、そこに50年、60年残るので、10年単位の流れに追随していかないといけない。だけど、サイズを変えるわけにはいかないので、やはりフレキシビリティという言葉がキーだと思います。