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今、物流センターに求められるものは何か/CBRE不動産フォーラム2016

2016年07月21日/物流最前線

<中嶋康雄CEO>
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『物流施設開発の今後はフレキシビリティーがキーとなる』

物流での自動化、ドローン、ロボットの在り方とは

ハーファート 次に人手不足がこの業界において1番大きい問題ということで、配送を担う人たちが足りなくなっています。また人件費が上がっているということですが、寺西さん、クライアントはどの程度、人手不足の際に自動化、ドローン、ロボットに頼ろうとしているのでしょうか。

寺西 物流でのドローンの活用については、ヤマトさんなどの宅配事業者の営業所から個人宅へ届けるといったラストワンマイルでの活用がメインのテーマと理解しています。

私たちのクライアントという意味では、宅配事業者以外の企業の方はあまり気にしていないと思います。EC事業者などでも、宅配事業者へラストワンマイルはお任せしているので、「使えるようになると面白いよね」、とか「コスト下がるといいよね」などはあると思いますが、彼らがドローンを活用して何かを行おうとしているケースは、まだほとんど聞きません。

ハーファート 人手不足ということで、ロボットの活用等が、継続的に重要性を増していくのでしょうか。将来的に完全に自動化されたロボットにより、配送センターが運営されるということは出てくるでしょうか。

宮田 完全にロボット化というのはあまり現実的ではないと思います。重要なのはロボットが出来る作業はロボットがやればいいわけで、人がやらなければいけない作業を人がやるという、すみ分けが非常に大事だと思っています。

日本において、今の生産労働人口は8000万人、生産労働人口が15歳から64歳、要するに働ける年齢層になりますけど、これは実は1997年が1番多くて、8700万人と、この20年間で700万人減っています。さらにこれから15年後、2030年に向けてこれが6700万人、つまり1300万人減るわけですね。1300万人の人口というのは、まさに東京都の人口が1325万人ですので、ほぼイコール。これだけの労働者が日本からいなくなるということをまずしっかりと認識すべきだと思います。

徐々に徐々に減り、いわばゆでガエル(熱いお湯にカエルを入れると驚いて飛び跳ねる。しかし、常温から徐々に熱していくと、熱湯になった時にはもはや跳躍する力を失っている)のように、気付いてみたら人がいないということに恐らくこれから先はなっていくのだろうなと思います。

一方で、特に欧米、私はフランスの物流会社の運営を一時期やっていましたけど、例えばフランスの場合は移民政策をとっているので、オペレーションの7割は実は東ヨーロッパから人が流入し、皆作業に従事することでなんとか成り立っているわけです。

しかし、日本の場合、政策的に移民はなかなか受け入れないということを考えると、何らかの形で機械化、自動化、少人化、ロボット化せざるを得ないという状況に立たされているのだと思います。それに対して、先を予見して、どれだけ先行投資出来るのかというのがまさに今求められている状況だと思っています。

これは物流現場で判断する問題ではなく、経営判断だと考えています。今の日本はそういう状況にあるということだと思います。

ハーファート 自動化は部分自動化であれ、ずいぶんお金のかかることだと思います。かなりの資本投資も必要でしょう。テナントにとっても金銭的に負担だと思います。中嶋さんいかがでしょうか。オーナー側が一部コストを負担することもありますか。

中嶋 自動化には興味があり、2年くらい前から研究を進めています。まず建物側でやるべきことは、建物のフレキシビリティ、あとは容積のフレキシビリティ、こういったものを解決したい。

容積を全部使わずに建物を建てる、こんなことをやっています。中の設備に関しても、要は汎用性を担保していくことにより、オペレーティングリースをかけられたり、あるいはオーナー側で一部持つことが出来るようになったり、こうした可能性は十分あると思います。これまで不動産業界や大家が取ってきたリスクをもう一歩先に進めてくということですね。

ハーファート 実際のデザインや建物の構造の観点から、自動化がもっと増えていくということですが、それがデザインのレイアウトや建物の設備に影響があるでしょうか。

マクギャリー 影響はあると思います。日本にとって自動化は大きなビジネスチャンスです。グッドマンが開発する国内の物流施設と海外の物流施設での庫内オペレーションの自動化を比較すると、日本は他の先進国にかなり遅れをとっています。

しかしロボット工学やテクノロジーの分野では、日本はリーダー的な存在です。ですから重要なのはシニアレベルのリーダーシップ、つまり施設のテナント企業、オーナー企業、ロボットメーカーなどが一致団結して、日本が直面している「自動化の遅れ」という問題に如何に対応していくかを検討すべきでしょう。これはロジスティクスだけでなく、労働力確保の問題を抱える介護・看護などの分野でも考えるべき課題ではないでしょうか。

自動化を促進することによって、人はもっと意味のある作業に注力することができます。海外からの移民受け入れに積極的でない日本のような国では、そうした取り組みを進めていく必要があります。

自動化のニーズに対応して建物のデザインを変化させていくことはもちろん可能ですが、自動化の促進を実現するにはリーダーシップが不可欠です。政府や行政の支援と規制の整備も必要です。関係者が連携してプランを作り実行していく、そうしてこの大きな課題に対応して前進することが重要です。このような流れは海外の方がずっと進んでいます。これは、ビジネスチャンスです。

ハーファート 技術ではなく人という観点から、千葉ニュータウンの施設は非常に魅力的なカフェも設けて環境的にも整備されているということでしたけど、これは不可欠な要素となっているのでしょうか。

マクギャリー 不可欠とは言いませんが、有効な差別化ポイントではあります。事実、当社がここ数年間新たに開発した物流施設では、デザイン性とアメニティを重視してきました。

たとえば最近竣工した千葉ニュータウンの施設を例にとりますと、千葉ニュータウンは決して伝統的な物流エリアというわけではないにも関わらず、建物自体の差別化されたデザイン性によりテナントの支持を得ました。竣工6週間以内に、約4万坪の大型施設が100%リースアップできたのです。

他にも選択肢がありながら、敢えて当社の施設を選ばれたテナントにその理由を伺ったところ、「ロケーション、賃料、建物のスペックなどは常に重要な指標として考慮してきたが、建物の美観や快適性を重視したことはなかった。しかし実際に施設を見て他の物件と比較してみると、労働力確保が深刻な課題となっている現在、快適な職場環境の重要性を認識し、グッドマンの施設を選択した」というコメントをいただきました。

今後はこれらの要素がますます重要になるでしょう。デベロッパーはこれまでのやり方を踏襲するのではなく、さらなる革新性が求められる時代です。

しかしデザイン性の向上により増加する建築コストを賃料に反映できるわけではありません。それはデベロッパーの負担となるわけで、当然利益が圧迫されます。

しかし供給過多で競争が激化する市場においては、テナントにとってメリットのある差別化を追求していくことが大切です。港の近くにある昔ながらの美観に欠ける倉庫ではなく、オフィスビルや商業施設レベルの洗練されたデザイン性を物流施設に取り入れるのがグッドマンの戦略です。

ハーファート アメニティを充実させることによって、賃料を増やせるのか、または、アメニティを充実させることによって、テナントの誘致が有利になりますか。

マクギャリー デザイン性の向上やアメニティの充実によりアップした投資額を賃料に反映することはしていません。グッドマングループは開発物件の長期保有を戦略としているので、長期的な目線で投資を回収できれば良いと考えています。よって賃料にプレミアムをのせることはしません。

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