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物流最前線/経営者はロジスティクスを知れ 出井伸之CEO

2019年10月09日/物流最前線

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「日本は10年遅れている」。さまざまな質問に対して出井伸之代表が繰り返し述べた言葉だ。ソニーの社長・会長を務め、若い頃には、ソニー中央流通センターで倉庫業務にも携わっている。その時期を「僕にとっては一番勉強になった時期」と話す。ただ、現状については、物流に限らず、日本のあらゆる産業において、IoT化、AI化、ロボット化など企業のデジタル化に対応した変革の動きは「10年遅れている」と指摘する。現在、大企業の変革やベンチャー企業の育成や支援をする会社を立ち上げ、後進の指導に当たっている出井氏に、日本だけでなくアジアの企業の物流・流通・生産から経営に至るまで、幅広く語ってもらった。

BtoBからBtoCへ、物流の転換期

――  現在の物流環境についてはどう認識されていますか。

出井 個人的な感想ですが、毎日会社や自宅に届く宅配物を見ていると、一番エレベーターや階段を使っているのは宅配便業者の方でしょうね。荷物を持って昇ったり降りたり、本当に大変な仕事だなと思っています。

――  宅配便などはよく利用されますか。

出井 通販を利用しているので、宅配便は毎日きますね。僕の場合は私用のものでも会社で受け取るようにしています。家族は家で受け取っています。

――  再配達が問題になっています。

出井 あれは大変ですよね。配達に何度行っても不在じゃ、やってられないよ。ラストワンマイルというよりラスト10mだね。オフィスはまだしも、自宅やアパート、マンションの設計はいまだに昭和初期時代と変わらない郵便受けだし、荷物を受け取る構造じゃないからね。宅配便は人が在宅していることを前提にしたビジネスモデルでしたからね。そこで発生する無駄が人手不足を助長しているんじゃないか。ようやく、最近宅配BOXができてきましたけど、まだほんの一部です。根本から解決しないと解決できない問題でしょうね。

――  宅配便に限らず、物流業界全体で人手不足が深刻になっています。

出井 これまでの物流はまさしく労働集約型の産業そのものですね。考え方を変えると、現在の人手不足は、あまりにも多くの人を使っていたと考えるべきなんじゃないかな。もっと省人的・省力的・先進的なシステム設計に作り直すべき時期に来ていると思いますよ。

――  省人的で先進的なシステム設計とは。

出井 例えば、倉庫についてみると、これまでの倉庫は圧倒的にBtoBの倉庫が多く、Eコマースの伸長とともに、BtoCの倉庫が増えてきていると思います。そうなると、倉庫自体の形もシステムも大幅に変更しなければならない。既存の倉庫を応用して運営するには限界がありますね。GROUNDの宮田社長とヤマト運輸のクロノゲートの見学に行きましたが、驚きました。製品の修理までやっている。倉庫の概念が変わってきたものと実感しました。

――  保管から物流加工も含む付加価値の提供ということですか。

出井 企業というのは、自社のサプライチェーンとデマンドチェーンなものの生産を上げることが重要になります。そのためには、当然、AIなりIT、ロボットなりが必要になります。

――  Eコマース需要はまだまだ伸びますか。

出井 まだまだ伸びるでしょう。1990年後半ごろにアマゾンの倉庫を見学しましたが、当時からITとリアル店舗の良さを融合させた通販システムを構築していました。まだKIVAシステムは稼働していませんが、早い進歩で拡大を続けていました。ネットで注文してすぐに届くというシンプルだけど便利なこのビジネスモデルは、ウォルマートなどの店舗販売と比べても圧倒的に少ない従業員数でしたので、今後量販店や百貨店での買い物からネットでの購入に移行し、弱体化は避けられないと思っていましたが、その通りになっています。消費者が便利な方に傾くのは必然ですからね。

――  リアル店舗とネット販売の融合の動きも活発になってきていますが。

出井 当然でしょう。でも米国等に比べて10年は遅れていますね。でも、誤解しないでくださいね。厳密な意味の10年じゃなく、僕はかなり遅れているということを言いたいのです。

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