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物流最前線/経営者はロジスティクスを知れ 出井伸之CEO

2019年10月09日/物流最前線

<GROUNDの資本業務提携会見に出席した出井伸之ファウンダー&CEO>

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<挨拶する出井伸之ファウンダー&CEO>

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日本は冬、希望の持てる春に

――  物流機器等の販売を手がけるGROUNDに創業当初から支援を続けています。物流業務に興味を持たれたのは。

出井 僕がロジスティクスに興味を持ったのは一人でソニーフランス法人を立ち上げたのち、帰国したら、いきなりソニーの中央流通センターで物流業務を担当することになり、ちょうどコンピューターを物流業務に役立てようとするころで、とてもエキサイティングな面白い時代になったと思いましたね。

――  倉庫業務の現場を担当されたことがあったのですか。

出井 物流だけでなく、僕はあらゆる現場を経験していますよ。陽のあたる場所を歩んできたみたいに思われているけど。でも、この中央流通センターの1年半は僕にとっては、最も濃密な期間で、最も勉強になった時でした。倉庫の中にいると、どの商品が売れたか一目瞭然ですし、何が品薄になったとか、在庫が溜まっているとか、自社の製品に愛着がわき、心が製品に通ってくるのです。

――  倉庫での経験がその後の経営にも生かされたと。

出井 倉庫は、経営者が今、何をやらなければいけないかが見えてくる場所です。製造メーカーにとって、モノを生産してから、消費者にわたるまでをトータルに俯瞰することが大切ですし、それを短くすることも大切。管理とか財務部門は金の流れは見ていても、モノの流れは見ていませんからね。多く作ると在庫になるし、少なければ消費者に迷惑をかける。サプライチェーンもデマンドチェーンも正しく理解している経営者は本当に少ないと思いますよ。

――  そういった中で、クオンタムリープを立ち上げ、若いベンチャー企業を育てようとしています。

出井 現在、日本はピンチだと思っています。季節に例えるなら冬。しかし、冬の間に多くの種を準備しておき、春に花咲かせるようにしたいのです。ビジネスにおいてベンチャー企業はいわば子供、ベンチャーを多く誕生させ、長老のように経験や実績のある大企業が、ともに成長し新しい事業を生み出し、変革を起こす、これが春なのです。ソニーが育ってきたのは戦後成長期でしたが、季節に例えれば当時は春でした。ソニーだけでなく、日本の多くのメーカーが希望を持ってチャレンジする季節でした。そして成功し夏を迎えました。10月にフランスと日本のベンチャー企業を集めて、今後どのように共創していけるかの会議をパリで行います。両方とも冬の国、ですからね。

――  GROUNDの支援もその一つですね。

出井 GROUNDの宮田社長は優秀ですから、こちらもあまり手がかからないですね。同じビジョンを共有していれば、発展するベンチャーは手がかかりません。逆に、手がかかりすぎるベンチャーはなかなかうまくいかないことが多いですね。

――  最後に日本の物流について。

出井 以前の阪神・淡路大地震で物流のハブ機能を他の国に持って行かれ、そのままですね。日本の物流力は弱まっていると思います。先ほども申しましたが、物流を分断して考えることが多く、日本はまだまだ部分最適から抜け出していません。未来の物流を考える場合、それは、もっと総合的なロジスティクスでなければなりません。例えば、倉庫は単なる建物で、モノの流れの一つの場面に過ぎません。それが船になろうが、地下室になろうが建物でなくても良いわけです。倉庫がプラットフォーマーの真ん中にあることで、より効率的な運営ができるものと思います。一方で、メーカーの社長でロジスティクスを分かっている人がほとんどいないのは残念です。

<出井 伸之ファウンダー&CEO>

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クオンタムリープ
ファウンダー&CEO
出井 伸之

■プロフィール
1937年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1960年ソニーに入社。
1962年スイスのジュネーブに留学。帰国後、二度のスイス赴任ののち、1968年フランスに赴任、ソニーフランス設立に従事。
1979年オーディオ事業本部長、1988年ホームビデオ事業本部長を経て1989年取締役就任。広告宣伝本部長、クリエイティブ・コミュニケーション部門長を経て、1994年に常務取締役に就任。
翌年の1995年4月 代表取締役社長に就任。会長兼CEO、取締役 代表執行役 会長兼グループCEOを歴任。
1995年の代表取締役社長就任後、『Re-Generation(リ・ジェネレーション)』『Digital Dream Kids(デジタル・ドリーム・キッズ)』といった新たな全社方針と戦略を表したキーワードでグループを束ね、采配を振るう。
10年に渡ってトップを務め、エレクトロニクス、ゲーム、音楽、映画、保険、金融等の事業領域を持つグローバル企業へと成長したソニーを変革する。
2005年6月会長兼グループCEO退任後、2006年9月クオンタムリープを設立、代表取締役に就任。

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